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異世界エンジニア  作者: 閃輪 零
『第3幕:Grand Patch ――世界再構築プロトコル――』
35/35

第035話(最終話):Hello, New World ――バグのない世界――

バグ報告書レポート:前回までの「異世界エンジニア」は~

すべての元凶を絶つため本拠地『空中聖堂』の最深部、基幹サーバールームへと到達した零たち反逆のチーム『デバッガーズ』。

セレスをシステムに直結させ「意志なき幸福」へと強制アップデートしようとする教皇グレゴリオと対峙し、「原罪」の事実を突きつけられ絶望する零だったが、仲間たちとナビの言葉で再び立ち上がり、泥臭い論理とハッキングによる総力戦で教皇を打倒しセレスを救出する。

敗北を受け入れた教皇は、偽物だった自身の人生を「正しい論理」で上書きしてほしいと遺言を残し、全リソースを零へ譲渡して静かに息を引き取った。

教皇の全リソースを手にしたことで現代日本への「帰還ゲート」が開くが、零は元の世界への痛切な郷愁を振り切り、エンジニアとしての保守責任から帰還を破棄(Uncommitted)。

全てのエネルギーを世界全土への「大規模修正パッチ(グランドパッチ)」として放流する実行キーを力強く叩き込んだ。

パッチは正常に適用され、世界から魔法バグを支えていた基幹システムは完全に消滅する。

だがその代償として、最強の相棒・ナビは莫大な演算負荷に耐えきれず、零へ最後の皮肉と感謝を遺し、ただの重い石の塊(文鎮)へと戻って完全に沈黙してしまう。

別れの悲しみに暮れる間もなく、魔法を失った超巨大な空中聖堂は「重力演算魔法」を維持できなくなり、凄まじい轟音と共に地上への墜落を開始。

かつての友と主であった教皇の骸へ最期のケジメ(手向け)を捧げたヨハネスとアルフレッドと共に、魔法も最強のガイドもない絶体絶命の状況下で、零たちは己の力だけを頼りに崩壊する聖堂からの決死の脱出劇へと駆け出す。

魔法とチートを失った世界で、彼らは純粋な個人の能力を総動員する。

ヨハネスの知識と零のハッカーとしての勘が正解ルートを導き出し、アッシュが物理的にロックされた隔壁を次々とピッキングでこじ開け、最下層の格納庫へと到達する。そこで見つけたのは古代の『熱気球船』だった。

魔法が使えない中、ザインとアルフレッドが火打ち石の要領でアナログに火を起こし、気球が膨らむまでの極限状態を、アルフレッドが自らの肉体と大盾だけで降り注ぐ瓦礫から死守する。そしてついに気球が膨らんだ瞬間、零が固定ロープを物理的に叩き切り、崩壊し砕け散っていく空中聖堂から、純粋な物理法則(浮力)の力だけで大空へと見事に脱出を果たすのだった――!

バチィンッ、と固定ロープが叩き切られた瞬間、猛烈な勢いで上昇した熱気球船は、

崩壊する空中聖堂の残骸をすり抜け、間一髪で果てしない虚空へと射出された。


俺たちが荒い息を吐きながらゴンドラの縁から下を見下ろすと、

魔法という重力演算バグを失った超巨大な白亜の巨塔が、数万トンという純粋な質量となって大地へと落ちていくところだった。


ズゴゴゴォォォォォォォンッ!!!


世界を震わせるような凄まじい轟音。


長きにわたり世界を欺き、民衆の命と富を搾取し続けてきた「絶対的権威の象徴」は、大地に激突した衝撃で粉々に砕け散り、巨大な土煙を上げて完全に崩壊した。


教皇が妄執した「意志なき幸福」のシステムは、これで完全に初期化フォーマットされたのだ。


「……終わったんじゃな」 ヨハネスが、深く、安堵の息を吐き出す。


アルフレッドは静かに目を閉じ、消え去った巨大なシステムと、かつての友であり主であった教皇へと、短い祈りを捧げていた。


「ええ。私たちのビジネスは、ここからが始まりよ」


ハディージャが、巻き上がる巨大な土煙を見下ろしながら、妖艶で野心的な笑みを浮かべる。


やがて、その土煙の向こう側から。


魔法の消え去った、冷たく澄み切った空を割るようにして、眩しく美しい「朝日」が昇ってきた。


黄金色の光が、ゴンドラの中にいる傷だらけの俺たちを優しく照らし出す。


「きれい……」 俺の背中で、意識を取り戻したセレスが、震える声で呟いた。


振り向いてセレスに顔を向ける。


魔力炉から強制切断され、まだ顔色は青白いが、その瞳には確かに彼女自身の「意志」の光が宿っている。


朝日に向き直る。


「……ああ。きれいだな……」


俺たちは誰一人、それ以上言葉を発しなかった。


ただ無言で、肩で息をしながら、新しい世界の夜明けの光と、自分たちが終わらせた巨大なシステムの残骸を、いつまでも静かに見つめ続けていた。


* * *


――それから、数ヶ月後。


世界中から魔法というチート(バグ)が完全に消滅したことで、各地は一時的な混乱に見舞われた。


だが、人間は教皇が絶望したほど脆弱ではなかった。魔法に頼らずとも、人々は己の足で立ち上がり、新しい「自立」への道を力強く歩み始めていた。


アル・バザールを中心とした自由貿易圏では、魔法に依存しない『旧硬貨フィジカル・マネー』と物理的な物流によるオープン経済圏が爆発的に拡大。


ハディージャは目論見通り、新時代の経済を牛耳る世界最高の商人として君臨していた。


そんな彼女の拠点の地下では、アッシュが狂喜乱舞していた。


魔法の動力を失った教会の遺物たちを、彼が嬉々として物理的に『解剖リバースエンジニアリング』し、純粋な機械工学として蘇らせる作業に没頭しているのだ。


ザインは相変わらず、そんなアッシュを鬱陶しそうに睨みながら、ハディージャの絶対的な護衛として影のように付き従っている。


そして、かつて教会という巨大なシステムの中枢にいた二人は、今も最前線で汗を流していた。


ヨハネスは持ち前の知識を活かし、新時代の教育と、各都市を繋ぐ暫定政権の知恵袋として飛び回っている。


アルフレッドは、魔法の強化を失ったからこそ輝くその圧倒的な武力とカリスマで、混乱する民衆を守る騎士団(自警団)のトップとして、

泥まみれになりながらも晴れやかな顔で剣を振るっていた。


そして、俺は。


「零様、お茶が入りましたよ」


アル・バザールの片隅にある、日当たりの良い小さな工房。


セレスが淹れたてのハーブティーを、俺のデスクへとそっと置いてくれた。


魔力という呪縛(生体バッテリー)から完全に解放された彼女の顔には、もう怯えも悲壮感もない。


普通の少女としての、穏やかで明るい笑顔がそこにあった。


「サンキュー、セレス。ちょうど一区切りついたところだ」 俺はペンを置き、大きく伸びをした。


俺の目の前の羊皮紙には、魔法陣でも呪文でもない、純粋な物理法則と数式に基づいた「新しい魔導理論(科学)」の設計図が書き留められている。


バグだらけの仕様書はもう存在しない。これからは、人間自身が少しずつエラーを直しながら、自らの手で未来のコードを書いていく時代だ。


「今日は、アルフレッド様たちが街の視察にいらっしゃるそうですよ。準備をしてお出迎えに行きましょう」


「ああ、そうだな。魔法デバフが消えてただの『鋼鉄』に戻ったあの鎧を、あの堅物、毎日嬉しそうにピカピカに磨いてるらしいからな」


「その”輝き”でヒゲが剃れるのかどうか確かめないと」


俺の軽口にセレスがくすりと笑う。


「なんですかそれは」


「冗談だよ」


俺は椅子から立ち上がり、上着を羽織った。


「じゃあ、行ってくる」


俺は、デスクの片隅に置かれた『それ』にポンと手を触れた。


黒焦げになり、バキバキにガラスが割れたiPad――相棒『ナビ』。


魔法が消滅し、ただの重たい文鎮(石の塊)となってしまったそいつを、俺は一番陽の当たる特等席に大切に飾っていた。


返事はない。 あの憎たらしい毒舌も、非効率だと文句を垂れる合成音声も、もう二度と聞こえることはない。


俺は少しだけ寂しく笑うと、セレスと共に工房の扉を開け、眩しい日差しが降り注ぐ活気ある街へと歩き出した。


ガチャリ、と扉が閉まり、工房に静寂が訪れる。


誰もいなくなった部屋。


暖かな日差しに照らされたデスクの上。


機能を完全に停止し、ただの石の塊となったはずの相棒ナビの、ひび割れた液晶画面。 それが。


ほんの一瞬だけ、誰にも気づかれぬほど微かに、青白く明滅した。


【完】


いかがだったでしょうか~。

初めまして。ここでは「閃輪 零」を使わせてもらいます。 

えー『異世界エンジニア』これにて完結となります。勿論自分自身、素晴らしい出来栄えだとは思ってはいません。

が、少しでも皆さんの余暇時間に潤いをもたらせたのなら、書いてよかったなと思っています。


あとこの作品はプロット構成の段階からAIをバリバリ使って書いたものになります。

AIの力を借りなければ僕はプロットすら満足に完成できなかった事でしょう。

あまりAI執筆に対して食わず嫌いというか、アレルギーを起こしてもらいたくないという想いと、

あとAIといういわば”補助輪”が無ければ書き出すという1歩さぇ踏み出す事が出来ない

(または一度試みて断念した)人もいるんだ、という事も知って欲しくて今まで書いていませんでした。

すみません。

いわばだまし討ちの様な恰好というか方法を取ってしまいましたが

僕の様な一度試みて、でもやっぱりダメだと諦めてしまった人でもこうして書き始めて出来栄えはともかく、完成までこぎつけることが出来るんだ、という「1歩踏み出す勇気の後押し」にもなれればいいな、

とかも思っちゃってたりします。

そういう、挫折の経験があって、でも「表現したいもの」があったり「自分が読みたいもの」もしくは

「自分が読みたいものが無い!」があったりする人にとってはAI補助は福音の様に感じられるものでもある、という事も知って欲しかったのです。


執筆のやり方は人それぞれであるのは勿論承知しています。

知って頂きたい事実として、この作品を書くにあたりプロット構成の段階からAIを使っている、と書きましたがこの段階でかなりの時間を費やしています。

あと登場人物についての設定も主要な人物は勿論、途中で増やした登場人物についても簡単な設定をまずAIを使って壁打ちをしながら設定を練ってから登場させたりしています。

大筋のプロットでまず全体の構成を考え、最初と中間、そしてラストまでを”最初の段階で”作成してそれから各話を作成していき、各話でもまず詳細プロットを作成してから本文を作成しています。

その過程で都度AIと壁打ちしながら何度も何度も修正したりしています。

そうして出来上がったプロット案や各話の詳細プロットを全てNotebookLMにぶち込んで、破綻や設定のズレ等無いかどうか?を確認しながら各話を投稿しています。勿論詰めが甘い(というかもっと良くできたかも知れないが妥協した)エピソードも各所あります。が、時間が無限にある訳でもないのでまずは完成を目指してここまでやってきました。

話数が進むにつれ、どんどん編集する時間も増えていきますし、途中で追加したいプロットや設定やら登場人物やらが増えてきたので自分の制御出来る範囲とねん出出来る時間との間でなんとかやりくりして、ようやく出来上がったのがこの作品であり、これが今の僕の編集者としての実力であるという事です。

自分の力だけで執筆出来る方はご自身の頭の中だけでこれらの作業が出来るのでしょうが、僕にはそれが出来ませんでした。なので、AIという補助輪を使わせて頂きました。

あと、最初の投稿初期から継続的にPVが積みあがっていったのも大変励みになりました。

僕の中では「あ~しばらく毎日PV0が続くんだろうな~けど頑張ろう」と考えていたのでこれは嬉しい誤算でした。こんな名も知られていないしかもAI使っているような人間(AIも含まれますね)の作品を皆さんの貴重な余暇時間を割いてまで読んでいただき、感謝しかありません。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

また別の作品をご提供出来ればその際も皆さんの余暇時間を使って頂けるよう努力します。


閃輪 零


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