誰も知らないエンディング
王都から離れた湖畔沿いの別邸。ゆらめくランタンに照らされた、物憂げな愛しい女性の顔。
「……今日は、デービット様がいらっしゃいました」
ぼそりとつぶやく揺れた声。それはまるで彼女の心を映し出しているようだった。
「デービット様は頻繁にこちらにいらしてますが……メアリーさんはどうなさっているのでしょうか……?」
「上手くやってるんじゃないかな。あまり、詳しい話は聞いていなくてね」
俺の言葉にリリアちゃんはすっと目を伏せた。
……多分、嘘だってバレてるんだろう。
当然だ。毎週のようにここに通い、リリアちゃんを俺から取り戻すんだと言って帰っていく。あの二人の間に問題がないと思え、というほうが無理な話だ。
「最近、ミカの姿をみませんが……ミカは、どうしているのでしょう」
「あいつはあいつで上手くやってるよ。最年少で近衛騎士団の副団長になった」
ミカはあの後、何かを振り切るようにひたすらに剣に打ち込んだ。それに加えて……上に立つために、昔なら考えられないような策まで使い始めた。
あの、真面目なミカが。
『ただ強いだけじゃあいつを守れなかった。あいつを守るためなら……手に入れるためなら、俺は何だってする』
あの目は、本気だった。今でも夢に見るほど、明確な敵意が滲んだあの視線。
まさか、あんな顔を向けられる日が来るなんて。
自分の行動が原因であることはわかっている。だが、それでも……。
俺は俯いて、ゆっくりと細く息を吐く。
無意識に震える手に、そっと、温かな手が触れた。
「ラファエル様……私はあの時本当に、罪を逃れて良かったのでしょうか……」
不安げに瞳を揺らすリリアちゃん。俺はいつも通りの軽薄な笑みを浮かべ、彼女をそっと抱き寄せた。
「もちろん。君がいるから、俺も……あの二人も壊れずにいられるんだ。君がいないとどうなるのかは、リリアちゃんもよくわかってるだろう?」
もしリリアちゃんが本当にあの場で断罪されていたら、きっとより悲惨な結末が待っていただろう。
もっと早く動けていれば結末は違ったかもしれない。それでも、あの場での最善はこれしかなかったのだから。
俺は自らに言い聞かせるように、心の中でそう呟いた。
俺は揺れる気持ちを落ち着かせるように、リリアちゃんの首筋にそっと唇を近付ける。
どくどくと脈打つ感覚が、俺の心を満たしていった。
「だから……君は、生きているべきなんだ」
普段ならば言わない、強い言葉。彼女を縛り付ける、その言葉。
リリアちゃんはぴくりと体を震わせて……どこか諦めたような笑みを浮かべる。
「そう……ですね。私は、生きていないと……」
その声には、昔のようなあの明るさも、気丈さも、もはや残ってはいなかった。
あの時の彼女は、きっともう戻ってこない。
それでも俺は……彼女に縋らずには、いられないんだ。
これで前日譚は終了です! ご覧いただきありがとうございました。本編である
あと7日で断罪とかマジですか? ーヤンデレ幼馴染と走る断罪回避RTAー
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