運命の朝食 その4
僕はすぐに視線をそらした。
目が合ったら大変だ。
「………」
口の中にロールパンとレタスが噛み砕かれず残っている。
周りをそっと見渡すと、わざわざ僕の近くに座らなくてもゆったり座れるスペースは十分にあった。
気にするな。
考えすぎだ。
どこに座ろうと個人の自由だ。
僕は口の中の物を咀嚼しながら自分に言い聞かせた。
幸いにもサラダとロールパンはあと二口程度で食べ終わる。
早く仕事へ行こう。
こんなにも早く仕事に行きたい気持ちは初めてだった。
すぐ近くに居る女性が怖かった。
思ってもみない恐怖だった。
自分がどう思われているのか、なんて、ありえない妄想が少しと極度の緊張で恐怖が錬成されたようだ。
僕はロールパンの残りの欠片を口に放り込み、サラダをフォークで掻き込んだ。
飲み物は道すがらの自動販売機で買おう。
固い決意と同時に嚥下したのがいけなかった。
とうとうロールパンとサラダが僕の喉で渋滞してしまった。
拳でトントンと胸を叩いてみる。
だめだ。
下がらない。
息はできるが詰まった痛みで背中が丸くなる。
くっそー。
今日は何なのだ。
今さら規則正しい食生活をしようとしたからか?
周りに、そして何よりも女性にばれないよう胸を拳で叩き続ける。
しかし、一向に下がる気配はない。
……どうしたものか。
人間、四十年以上生きていても途方に暮れることは無くならいのだ。
もう、詰まったままコンビニを出て、自動販売機へ急ぐしかないようだ。
自動販売機へ行き着くまで、自分は果たして生きていられるのだろうか。
「あの、これ飲んでください。まだ口つけてませんから」
僕の目の前にアイスコーヒーのカップが差し出された。




