イタズラ
「初めてじゃないです?
ちゃんと悪意ある殺人の被害者っていうのは。」
そう何回もあってたまるか!
あのクソガキ…とは思うけど、正直気持ちはわかるからそんなに腹は立ててないんだよねぇ。
「ラルフちゃんのせいじゃないのに。」
それだよ!
一番理不尽なところは。
リナリーンと龍神がハジけたからこんな事になってるのに、なんでそのヘイトを僕に向けられなきゃならないんだ。
なんなら僕は今もどうにかして結婚式をなかったことに出来ないか考えているのに。
「龍の願いは龍族にとって重いものですからねぇ。
ピリルルも龍の英雄の暗殺なんて、バレたらヤバいですよ。
龍で居られなくなります。
まぁ、ラルフが相手で幸いでしたね。
生き返っちゃうんで、あはは。」
あははじゃないんだよ。
今回の能力をどうしよっか。
殺される訳にはいかないよ。
気持ちはわかるけどさ。
「それがですね。
久しぶりのキルカメラを見てみましょ。」
うん。
はい。
胸から尾が突き出てますね。
攻撃を受けてくれって言われたよ。
はいギルティ。
ギルティなんだけど、表情が…。
「びっくりした顔してるわね。」
…してる。
うっそーって顔してる。
このクソガキ…もしかしてイタズラでやった?
「そんな感じがしますよねぇ。
ピリルルの想定では、尻尾を止められてイタズラを咎められるとか、ヒーローごっこみたいなノリみたいなんですよ。」
はぁ。
もしかして義理の兄が出来たと思ってはしゃいだのか?
それとも龍を倒すくらい強いやつと戦ってみたかったのか。
「どうします?能力。」
手品みたいな能力ある?
なーんちゃってってするのが一番平和な気がするよ。
「無魔法にしますか。」
なにそれ。
無属性魔法?
「いえ、無魔法。
ただのイミテーション魔法です。
舞台とかで使われる攻撃力はないけど、派手な魔法です。
普通はエネルギーを攻撃に必要な熱や硬さを作るために魔力を使いますが、これはただ光ったり、デカい火の玉に見せるためだけに魔力を使います。
ある意味、自由自在ですが、なんの意味もない魔法ですね。」
おぉ、良いじゃん。
ごっこ遊びむけだね。
それにしてもらおうかな。
「はい。
では、お元気で、ラルフ。」
なんか挨拶簡単になってきてるよね。
仕方ないか…。
少なくとも週一で来てるからな…。
一度だけ3年間生きてたけど。
なんだこの異世界生活。
…
……
………
◆
「ねぇ、ラルフちゃん…とんでもなく強くなってない?」
「それはそうですよ。
龍にトドメを刺したんですから、魔力を得ます。
知られていれば伝説ですよね。
レジェンドラルフとして絵本になり、子供の憧れになるレベルですよ。」
「そうよね。
でも…なんか本人気がついてないわよ、あの感じ。」
「比較対象が今は龍ですからね。」
「もし今シャルル爺さんと戦ったらどうなるの?
あの、龍の腕輪を使って。」
「勝負にならないですね。
普通の剣とか刺さるんですかね、ラルフの身体に。
魔力がとんでもなく濃密ですから。」
「ちょっとティナに伝えておこうかしら。
帰国後に変なことにならないように。」
「自覚して使いこなしたらの話ですけどね。
大丈夫ですよ。
いざという時には私が光をふわふわーっと下ろしてそのせいにでもしましょう。」
「前回そのせいで面倒なことになってるじゃない…。」
「もう神の子なんて呼ばれているんだから大丈夫でしょ。
本人は嫌がってますけどね。
あはは。」
「…なんか、違う方向で本になりそうな気がして来たわ。」
タナは知らない。
アンヌを抱き留めながら婚約をしたシーンのみで、充分本になる程には話題になってしまっていることを。
もう刷り始められているかもしれないことを。




