龍の王子様
まずは挨拶しないとな。
全てを滅ぼしてしまいそうな眼を向けて来ている龍だけど、印象が良ければ解決するかも知れない。
はじめましてラルフです。
こっちは父のジェマです。
「よくいらっしゃった、龍を惨たらしく殺害せし者よ。
ぐっ…我が最愛の娘の…おほん、婿殿よ。」
…あ、ダメそうだ。
ギリギリだ…ギリギリで威厳を保てなくなったところを嫁龍が尻尾を踏んで持ち直した。
「初めまして、ごめんなさいね。
この人、娘が可愛くて仕方ないの。
この人が龍王、私が妃よ。
不便でしょうから、これ。
魔法をかけるわね。」
青い王妃龍からふわっと魔法が飛び、僕とお父さんに入り込む。
これは見たことがあるな。
ヤイシャが使ってた魔法だ。
「これで龍とのコミュニケーションは問題ないはずよ。
元々私たち龍王の一族は人の言葉を話せるんだけどね。
他はスピラヴェラと龍神様くらいしか話せないから。
お部屋もあるわ。
この人、馬鹿みたいにいきり立っているから、少し時間を空けましょうね。
少しゆっくりしたら良いと思うの。
ピリルル!
来なさい。
さ、この子が案内しますからね。
少しお休みなさいな。
結婚式までまだ間がありますからね。」
そう言うと王妃龍は龍王の尻尾を握り奥へ去っていった。
明確なパワーバランスがあったな…。
「お客様、こちらです。
あの、パパも納得しているんです。
でもなんか受け入れられないんだって。
ごめんね。」
あ、キミも龍王のお子さんなのね。
いや、当然だと思うよ。
大事な娘さんなんだから。
ウチのお父さんだって、僕の姉のティナが明日なんかよく分からないけど嫁ぐってなったら…ね?
「ああ、相手を殺すな。」
ほら見てこの眼。
戯れの空気なんて1mlも入ってないでしょ?
お父さんなんてこんなもんだよ。
悪く思ってない。
むしろ龍って異種族だから僕らが知らないだけで、家族ちゃんと愛しているんだと思って安心したよ。
役目だからと言ってポンポン他所へ娘を差し出すような親より信頼出来る。
「そう言ってもらえたら。
お姉ちゃんも安心すると思います。
心配してたんです、お姉ちゃんも。
パパがあんな感じだから、変な事にならないと良いなって。」
キミはお姫様の弟さんなんだ。
じゃあ、龍の王子様だ。
「…あ…ピリルルです。」
家族の中では僕と同じ立場だね。
もっと気楽に話してよ。
仲良くしてね、ピリルル。
「…うん、こっちだよ。」
ピリルルもやっぱり龍なんだなぁ。
後ろから見てても背景が歪むほどの魔力だ。
ピリルルはお姉さんとは仲がいいの?
「うん、上にもう1人兄がいるんだ。
お兄ちゃんは出てっちゃたからあんまり会えなくなったけれど、みんな仲がいいよ。
…い程に。」
ん?なんて?
「あ、この部屋がジェマ様のお部屋です。
どうぞお休みください。」
あ、先にお父さんの部屋に着いたらしい。
大きな扉に、人サイズの扉も付けてあるのね。
猫とかが出入りするみたいなやつ。
あ、今回のためにわざわざ付けてくれたの。
へぇー、心遣いってやつだねぇ。
「ラルフはこっちのこの部屋だよ。
さ、はいってはいって。
あのね、僕、ラルフにお願いがあるんだ。」
ん?
なーんにもない、がらんとした部屋だね。
その辺で休んで良いのかな?
お願い?
なんだろう。
言ってみて欲しい、力になれるならなるよ。
振り返る僕の胸には小さな龍の尾が刺さっていた。
「お願いはね、僕の攻撃を受けて欲しいってことだよ。」
ゴホッ…なるほどなぁ。
君も僕と同じタイプか。
ティナがよくわからん男と明日結婚しなきゃならなくなったって言ったら、僕も相手をぶっ殺す覚悟があるもんなぁ…。
でもなぁ、ごめんなぁ。
5秒で復活するんだよ。
残念だったなシスコンめ。
…試すなら、簡単に死ぬやつにするんだな。




