白バラ令嬢
コツ…コツ…コツ…
この国の王太子にエスコートされ、銀色の髪が光に反射して美しく、優しく大らかなオーラをまとい、精錬された完璧な仕草で会場までやってきた令嬢がいた。
彼女が姿を現すと会場内の話し声や雑音が一瞬にして消え、誰もが息をするのを忘れて見惚れてしまう。
その令嬢の名をアリアンヌ・ランイニと言う。
彼女は、ランイニ公爵の一人娘であり、王太子エドワードの婚約者である。
そんな彼女の事をみた目とは裏腹に皆"白バラ令嬢"と呼ぶ。
ある者曰く、お茶会の警備中、隣の騎士が睨まれた。その数日後、彼は経費を横領していることがバレて罪人となり騎士団から追放された。
ある者曰く、お忍びで町に遊びに来ていたアリアンヌに、ある店の店主は睨まれた。その数日後、店主は違法取引をしていることが分かり、騎士団に連行された。
ある者曰く、舞踏会で伯爵が睨まれた。その数日後、国の事業である河川補強工事での水増し請求が明るみになり、さらに数日後、公文書改ざんや違法奴隷などが判明し、1カ月後には没落した。
ある者曰く、ガーデンパーティーに来ていた侯爵令息が睨まれた。その数日後、彼の婚約者が彼が他の令嬢とキスしているところを見つけ、婚約破棄の上、廃嫡された。
このように美しく、優しそうな見た目なのにも関わらず、彼女が睨んだ相手は破滅していく。
それはまるで見た目は清楚で美しいのに鋭いトゲが隠れている白バラのようで、社交界で彼女は白バラ令嬢として名を轟かせていた。
本人曰く、睨んではいないらしいが…




