92、エドワード王子 side 胸中
タキレスとサイテスが帰ったあと、僕は執務室でずっと執務をしていた。途中侍女が夕食を告げに来たが、忙しさを理由に断った。何かをずっとしていたかった。
無心で執務をし、キリがいいところで終わるといくらか心がスッキリしていた。
我ながらメンタルが弱いな……。
そう思いながら自室に戻ると、テーブルに軽食が置いてあった。侍女の誰かが置いていてくれたのだろう。僕はありがたくいただいた。
コンコンッ
寝る支度が済んだ頃父上が訪ねてきた。
「エドワード、寝る前にすまない。ラドニーから報告があってね……。アリシアちゃんの様子は?」
「眠ったままでしたから、わかりません。また明日うかがう予定です」
「そうか……。今後はどうする予定?」
「僕はアリシアが通いやすいように整えるだけです」
「力がいるときはいいなさい」
「では、新入生歓迎会のときに近衛を数人追加でお借りします」
「わかった。エドワード、がんばりなさい」
父上は僕の頭をくしゃっと撫でると部屋を出ていった。
『被害者、加害者を無理に作ってはいけないからね』
以前父上に言われた言葉だ。冤罪を作ってはいけない。現状では故意に階段から落とそうとしたかどうかわからない。が、この件でアリシアは被害者だ。ラドニーという目撃者もいる。ラドニーがいなければ大ケガではすまなかったかもしれない。
上位貴族への不敬に対しては学園内ということで問われない可能性もある。だがラドニーへの態度は学園内でも処分できるが謹慎程度だろう。
タキレスとサイテスには明日マリアンナ・ブラウニングの様子と学園内の様子を探るように伝えてある。
アリシア……早く会いたい。
僕はアリシアを思い浮かべながら目を瞑り眠りについた。
◇
僕は朝からアリシアの元にいた。
「エドワード王子、アリシアはあれから目覚めてません。たまにうなされてますが、頭を撫でると落ち着きます。ではよろしくお願いします」
レオナルドは生徒会の仕事でやらなければならないものがあるらしく、僕と入れ代わりで学園に行った。
アリシア、会いたかった。
僕はアリにキスをした。
しばらくアリを見ているとレオナルドの言う通りたまにうなさることがあり、頭を撫でるとだんだん落ち着くが起きる気配はなかった。
昼になると公爵家から食事が出され、午後は執務をしながらアリの側にいた。アリは身動きもせず寝たままだったので、時折息をしているのかと心配にもなったが、たまにうなされる以外は寝ている状態と一緒だった。
夕方になりレオナルドが帰ってきたのでエマにアリシアを見ているように頼み、レオナルドと別室で話をした。
「エドワード王子、アリシアはどうでしたか?」
「レオナルドが言うとおり時折うなされていたようだ。それに起きる気配は全くない」
「そうですか。何か夢を見ているのかもしれませんね」
「明日もこの状態であれば僕がついていたいがいいか?」
「私は明日の午前は抜けられないので午後には戻ります。それまでよろしくお願いいたします。
学園の方は予想通りですね。上級生も含めAクラスはほぼ疑うことなくアリシアの味方です。教師側についてはまだ連絡はありません」
「そうか……この件で学園中に迷惑をかけるな……」
「こういうときの対応で今後を見られますので、間違った行動をしないよう気を付けてください。まあ、それは私も同じですが……」
「以前、父に冤罪は作らないように言われたことがある。だがアリの苦しみを考えたら、それに見合う罰をと思ってしまう」
「……それは私も一緒です。むしろ重い罰をと望んでます。が、それによる結果を思うとアリシアはきっと喜びません」
「そうだね……」
「今週は新入生歓迎会もありますので慎重に動いた方がいいでしょう。ただし、こちらから仕掛けるのはありだとは思います」
「ん? ……レオナルド?」
「エドワード王子にうちの手の者を紹介しますね。マリアンナ・ブラウニングの監視をしているものなのですが、多少は動けますので……」
すると扉が開き、まだ幼さの残る顔をした男が音もなく部屋に入ってきた。
「バート・アシュビーと申します。よろしくお願いいたします」
「ああ、父上に聞いたことがある……。君がか……」
「彼は今あの女のクラスに入り、毎日監視をしています」
「多少の交流はしているのか?」
「多少……ですがね」
多少……か。
「では今後頼みたいことがある」
「承知しました。レオナルド様に仰ってくださればすぐに動きますので」
「では今、話をしよう。時間はあるか?」
「大丈夫です」
この日は遅くまで三人で話し合いをした。
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