79、マリアンナ・ブラウニング side 曲解
いかにも本の主人公と私が同じだと演じれば興味を引くはず。
うん、これがうまくいけば、私にも友達という味方(取り巻き)ができるはずだわ。私はどう演じるか本を読みつつ、夜がふけても考えていた。
図書室に通いだして数日、Bクラスのヒラリー・オフリー男爵令嬢の顔が判明した。男爵令嬢にしてBクラス入りをはたしたらしく、図書室には勉強のために毎日通っているらしい。
いつものように馬の本を読む振りをしていると、ちょうど相手がこちらを向き、目が合ったので話しかけてみると、面白いくらいに食いついてきた。
主人公らしく、あまり自分の地が出ないように気を付けつつ、本のことは知らないかのように演じ話す。するとあっという間に友達になれた。
この調子で昼休みにももう一人Cクラスの女生徒リリア・スイートリー男爵令嬢も友達になった。二人はもともと知り合いだったらしく、二人して私に興味津々だった。
が、一人目の友達が出来た直後から担任の先生から呼び出されてマナーの勉強をさせられていて、放課後に思うように動けなくなってきた。この担任も何度も本を借りていた一人だ。
「きっと私が平民出身だから、マナーを学びなさいって先生がおっしゃるのだわ。マナーはすぐに習得できるものではないからって言われたから、残念だけど、放課後はしばらく会えないわ」
「それなら昼に会いましょう。放課後は私も勉強をするわ。それとDクラスの私の友達を今度紹介するわね」
「ヒラリー、ありがとう」
「いいのよ、マリアンナ。お互いに勉強、がんばりましょう。リリアにも伝えるわね」
あら、ヒラリーが友達(取り巻き)を紹介してくれるみたい。
放課後になり、担任のロバーツ先生に会いに行く。ロバーツ先生は熱心にマナーを教えてくださるが、私のことがとても気になるらしい。オブラートに包みながらも、エディの話をしてくる。きっと私を主人公と一緒だと思っているのだろう。
ただ、ロバーツ先生は私の他に十人ほどの生徒を居残りをさせ、マナーやダンス、学業の補習を他の先生たちと共に交代で生徒の苦手なものを重点的に個別に指導していた。
「殿下と同じ学年なのですから、がんばれば、ダンスもご一緒にできるかもしれませんよ」
「今のところ最低限のマナーができてませんから、王族の前には出られませんよ!がんばってくださいね!」
担任を含め何人かの先生に言われるが、ほんとに余計なお世話だ。私はこんなことをしなくても出会いさえあればいけるのに。それに私だけの特別授業かと思ったら、ほかにもいっぱいいるし……。私のためだと言われてもやる気なんて起きないわ。
◇
リビー・ロバーツ side
毎年のことだけれど、若手教師チームで授業についていけていないもの、特に家で家庭教師を雇えない子を重点的に放課後指導している。
マリアンナ嬢は平民の学校を卒業しているから筆記はそれなりにできていたので見落としていたが、改めて指導するとマナーに関しては全く身に付いていない。基礎が全くできていない。
あまりマナーに関して興味がないようなので、他の先生と相談してマリアンナ嬢が興味をもつ王族をキーワードに励ますがやる気は見られない。最低限身につければ物語のようなこともと思ったが……。
まぁ、そううまくはいかないか。思わず苦笑する。
「ロバーツ先生、ちょっとこちらへ」
「はい、なんでしょう?」
同僚二人に隣室に呼ばれる。
「新入生歓迎会の件ですが、やはり殿下に出席してもらいましょうよ」
「でも、あれは殿下含めて全員自由参加ですよね」
「でしたら全員参加にすれば……」
「強制は難しくないですか?」
「入学式は新入生のみ参加でしたが、新入生歓迎会に殿下が来ていただけたら在校生にもいい機会になると思うのですよ」
「それはそうですけど……」
殿下にご迷惑になることは王族ファンとしてはしたくない。
「じゃ、私が会議で提案しますので、援護よろしくお願いしますね」
「は、ぁ……」
確かに出てもらえたらうれしいけれど、警備が難しいんじゃないかしら……。ま、ダメだったら会議で学園長が許可されないでしょう。
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