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69、エドワード王子 side 僥倖(ぎょうこう)

 

 自室にアリを連れてきて、侍女に昼食を用意するように指示し、一緒にソファーに座った。もちろん、アリは僕の隣だ。

 アリの綺麗な髪を一束すくってキスをする。


「久しぶりの学園はどうだった?」


「少し緊張しましたが、エドワード様やお兄様がついていてくださったり、配慮してくださっていたので大丈夫でした」


「大丈夫というわりに顔色が悪かったよ。きっと僕の気づかない何かがあったんだろうね。ごめんね」


「いえ、ほんとに疲れてしまっただけですので……ご心配おかけしました」


 うーん、アリは心配かけまいと隠す傾向があるから今後も注意しておこう。


 侍女に頼んだ昼食の配膳が終わり、僕はいつも通り、アリの口にも放り込む。先週よりも食べる量が増えていないようだ。あまり食欲がわかないのだろうか。心配になる。


 僕は執務があるので急いで終わらせようとしていたら、アリが帰ろうとしたので少し慌てた。アリには父上である公爵が仕事終わりに迎えに来ることをつげ引き留めると、本を読んで過ごすことにしたようだ。本は僕の本棚から選んだ政治の本だったが、アリは熱心に読んでいた。


 しばらくして、執務を終えソファーで本を読んでいたアリの隣に座るとアリは本をテーブルに置いた。


「僕はアリがこの部屋を出てから熟睡できなくてね、どんなに体を疲れさせて寝ても夜中に目が覚めてしまってなかなか眠れないんだ」


 僕は話ながらアリの頭を撫でる。触っているだけで気持ちいい。

 アリはどうだろう。眠れているだろうか。


「……私もなかなか眠れなくて……。でも不思議なんです、エドワード様に頭をさわってもらうと……今もですが、頭がふわふわして眠く…な、る」


 アリの頭を撫でてはいたけれど、こんなにこてんと寝てしまうとはおもっていなかった僕は驚いていた。


「アリ?」


 熟睡しているようで起きない。それならベッドに移してあげようと立ち上がろうとした時に気がついた。アリは僕のシャツを握りしめていた。


「あ……」


 どうしようか思案していると侍女から公爵がアリを迎えに来たことを告げられ入室を許可する。


「殿下……アリシアは……」


 入ってきた公爵は驚いてアリシアを見ているが僕も内心驚いている。


「熟睡してしまってね……。シャツも離さない」


「!!」


 公爵はアリシアの側に来て、握りしめているシャツの部分を見、「アリシア、アリシア」と呼ぶも起きないことを確認した。


「殿下、アリシアは最近よく眠れていなかったようですが、殿下の側だと眠れるようですね。今日は申し訳ありませんが、ここで眠らせてください。連れ帰るのは無理そうです」


「公爵がよければ、アリの着替えもそのままあるしかまわないよ」


「殿下、本日はご迷惑をおかけしますが、アリシアをよろしくお願いします」


「それはかまわない」


 そういうと挨拶をして公爵は帰っていった。


 しばらくしてもアリはシャツを握ったままだったが、一時間ほどすると手が緩んだのでその隙に僕はアリをベッドに移し、侍女に着替え等を頼んだ。その間、僕は父上に報告をし、部屋に籠ることにした。僕もずっと眠れなかったんだ。



 夜も更け、明け方までもう少しの時間になったころ、アリがもぞもぞと動いた。僕はアリをぎゅっと抱き締めると、アリは僕の顔を見た。


「まだもう少し明るくなるまで寝てて……それともお腹へった? 何か食べる?」


「お腹は大丈夫……です」


 アリはまたスーっと寝たので、僕は幸せな気分に包まれながらまた目を閉じた。


 朝になり目が覚めるとアリの顔が目の前にあった。僕は眠ったときと同じくらい幸せな気分のままアリを眺めていた。

 しばらく眺めているとゆっくりとアリの目が開いた。


「おはよう」


「おはようございます」


「よく眠れた?」


「はい。久しぶりに熟睡してました」


 アリもよく眠れていたようでうれしく思って眺めていると、アリは僕の胸に顔を埋めた。朝から幸せで仕方がない。



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