63、初日
今日から学園に通うことになり、朝から専属侍女のエマは張り切っていた。
「お嬢様、制服の詰めた部分も大丈夫そうですね」
姿見を見ながらエマは言う。夜、寝つきが悪くなったため食欲が出ず、減った体重がなかなか戻らなかったので制服のお直しをした。
「これでしたら、お痩せになったこともそんなに目立たないかと思いますよ」
「エマ、ありがとう」
「では食堂に行きましょう。お時間になってしまいます」
私たちは少しだけ急いで食堂に向かった。
「アリ、おはよう」
「お父様、お母様、お兄様、おはようございます」
食堂につくと、すでに家族が座って待っていたので、すぐに自分の席につく。
「アリシア、今日からだね。無理をしないようにね」
「そうですよ。お披露目式までお休みしてもよかったのに」
お父様とお母様は私が戻ってきてから過保護になった。
「父上、母上、私がいますから大丈夫ですよ」
お兄様は今年度から生徒会に入り、ある程度の権限があるようで、生徒会室には個室もあるそうだ。ちなみにアンジェリーナ様も生徒会に入られている。
「そろそろ殿下がいらっしゃるぞ。急いで食べなさい」
お父様から声をかけられ、私はあわててオムレツを口に入れる。
準備が終わり、お兄様と玄関で待っているとエドワード様の馬車が到着した。
「おはよう! アリ、レオナルド」
「おはようございます。エド……ワード様」
「おはようございます。エドワード王子」
エドワード様はふふっと笑って馬車までエスコートしてくださった。
馬車に乗るとなぜか私は二人の間に座らされる。大きな馬車なのでゆったりと座れはするが、なんとなく気恥ずかしく思う。
学園につくと、タキレス様たちが待っていてお互いに挨拶をすると、エドワード様と私とお兄様は学園長室に向かった。
「エドワードよく来たね。アリシアは体調はどうかな?」
エドワード様の叔父上でもある学園長のアルフレッド殿下は会うとすぐに笑顔になり気さくに話してくださる。
「レオナルド、昨日はありがとう。助かったよ」
「いえ、また何かありましたら仰ってください」
「叔父上、今日からよろしくお願いします」
エドワード様が笑顔で頭を下げると、アルフレッド殿下はエドワード様の頭をがしがしして笑っていた。
「部屋は生徒会の部屋がある並びに用意したよ。あそこは入室に制限が元々あるからね。タキレスやサイテスは入れるようにしておくね。あとはまた追々ね。
さ、じゃぁそろそろ授業の準備があるでしょ。部屋まで連れていこう」
アルフレッド殿下は笑顔で案内をしてくださった。
学園長室や職員室は本館の一階にあり、各学年のAクラスとBクラスが二階と三階、生徒会室などが三階の奥となっていた。
他のクラスは三号館にあり、食堂や図書室などの特別室は二号館にある。
三階の教室に行くとわりと広めの部屋に驚いた。
「昨日、この部屋の準備を任されたときに部屋を区切ろうとしたら反対されてね……」
お兄様がふいに呟いた。部屋を区切る?
「私もこの部屋で学びたかったけれど、それもダメでね……」
お兄様、なにげにいろいろ挑戦してたのですね……。お兄様はまた来るねと告げて自分の教室に戻っていったが背中が寂しそうだった。
「エドワード、アリシア、何かあれば遠慮なくいいなさい。兄上からも公爵からも頼まれてるから気軽に訪ねておいで。もちろん、遊びにきてもいいよ」
そういうと、護衛の近衛騎士に声を掛けて部屋を去っていった。
「エド……ワード様、今日からよろしくお願いします」
「ふふふっ、まだ言えないみたいだね」
「む、難しいです」
「今日中に言えるようにならないと、帰りにみんなの前でキスするね」
「!」
エドワード様からエドと愛称で呼ぶように昨日言われ、何度練習しても恥ずかしくて言えないでいた。
愛称とキス、どちらが恥ずかしいんだろう……。
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