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31、自責

 

「そろそろお時間ですよ」


 エマの声に慌ててエドワード様から離れるも、すぐに腰を掴まれた。エドワード様はエスコートの形をとり、


「アリ、行こう」


 と食堂の方へと歩く。


「アリ、ありがとう。僕もアリの笑顔が大好きだよ」


 エドワード様が私にだけ聞こえる声で、そっと囁いた。


「ありがとうございます」


 真っ赤になりながらも返事をすると、エドワード様は優しく微笑んでくださった。

 あぁ、やっぱり大好きだなあ。


 食堂に行くと、お母様とお兄様がすでにいらっしゃっていて、私たちを見た侍女が食事を並べてくれた。


「あら、アリシア。なんだか顔が赤いけれど、熱かしら?」


「ほんとだ。アリ、無理してない?」


「お母様、お兄様、私は大丈夫です」


 私は恥ずかしくなり少しうつむく。

 そのとき、ちょうど食事が揃い、お母様の意識もそちらに向いた。


「さ、いただきましょう」


 昼食中は他愛もない話をして和やかに終わり、食後の紅茶を出してもらうとお母様は侍女たちを下がらせた。


「今日は何かあったの?」


 お母様が徐に聞くと、お兄様が先ほど学園であった出来事を細かく話した。お母様は驚いて


「礼儀がなってないわね。もしかして例の?」


「おそらく。後程騎士からの報告を聞いて対処いたします」


 エドワード様が返答された。

 やはり、さっきのはマリアンナ男爵令嬢だったのだわ。彼女はエドワード様と出会うために近づいてきたのかもしれない。

 エドワード様がマリアンナ男爵令嬢に普通に出会ってお話をされたら、エドワード様は前世の通りマリアンナ男爵令嬢を好きになられたのかもしれない。

 エドワード様の笑顔がマリアンナ男爵令嬢に向かったら……。

 あれ? 邪魔な私がいるから……この二人が愛し合えないのだとしたら ……?


 胸の辺りがゾクッとした。


「はぁ…はぁ…はぁ……」


 息が……しにくい……。指に力が入らなくなりナイフを落としてしまう。


「はぁ、はぁ、はぁ……、ごめ……な、さ……」


 息がうまくできな……い……

 苦しい……

 胸が痛……い……


「アリ、ゆっくり息をするんだ!」


 肩を掴まれたところで、私は気を失った。



 どれぐらい私は気を失っていたのだろうか。目を開けると辺りは薄暗く、夜なのか明け方前なのかわからなかった。


「お嬢様?」


 目を向けると、エマは私を見てホッとした顔をした。


「お嬢様、公爵様に知らせてきますからここでお待ちくださいね」


 そういうと、額にあった濡れタオルを洗い、もう一度額に乗せてから部屋を出ていった。


 入れ違いに珍しくバタバタと足音がして、お父様ではなくお兄様が部屋に入って私の側まできた。


「アリ、大丈夫?」


 お兄様は私の首筋に手を当てると驚いた顔をした。


「タオルではダメだ。氷を持ってくるね」


 お兄様の手がひんやりとして気持ちよかったなと思いつつ、うとうととしていた。お父様がいらっしゃるまでは起きてなくてはと思うものの、睡魔にあらがえず私は眠ってしまった。


 そして4日後目覚めたとき、私は自分の記憶をなくしていた。



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