24、動転
サイテス様がエミリー様を連れて戻られた。
「おはよう、エミリー嬢」
「おはようございます、エミリー様」
「おはようございます、エドワード殿下、アリシア様、タキレス様」
「おはようございます、エミリー嬢」
エミリー様とは先日ぶりだわ。あいかわらずオレンジの髪がエミリー様の性格を表しているかのようにふわふわとふんわりしていて、私まで優しい気持ちになれる。エミリー様はおっとりとしていて、いつ会ってもふわりと微笑んでいる。
サイテス様も夢の中では目をつり上げて私を糾弾する姿しか記憶になかったけれど、今はエミリー様を前に目尻を下げっぱなしで印象がずいぶんと違う。
今日は今から入学式があり、その中でエドワード様は新入生代表で挨拶をされる。
「エミリー嬢、僕はこれから別行動になるから、申し訳ないがアリシアと一緒にいてくれないか?」
「もちろんでございます」
私はエミリー様と見あってお互いにニコッと笑った。
「サイテスは二人について。タキレスは僕と一緒に」
「しかし、護衛として殿下につかなければ……」
サイテス様がエドワード様に食い下がる。
「いや、僕には学園の警備もつくし、自分も戦えるから大丈夫だが、二人にいざ何かあれば離れていれば守ってやれない。入学式の間はサイテスに任せたい」
「……分かりました。殿下にはタキレス様もいらっしゃいますし……二人は私にお任せください」
「ありがとう、サイテス」
最終的にサイテス様は了承をし、頭を下げた。
エミリー様はサイテス様を見て分かりやすく顔を赤らめている。なんてかわいいのだろう。それに気づいたサイテス様は微笑んでエミリー様の頭を撫でた。
「さて、そろそろ時間だから会場に移動しよう。式が終わったら迎えに行くから、アリはその場にいてね」
エドワード様にエスコートされ会場に入り、エドワード様とはそこでわかれた。
「サイテス様、エミリー様、Aクラスの場所に行きましょう」
前世の夢で何度か見た会場と同じで、私はかなり緊張していたけれど、それを見せないようにしていた。
こういうとき、王妃教育が役に立つわね。
ニッコリ笑いながら二人と移動し、ちょうど三つ席が空いているところに座った。
はしたないとは思いつつも、辺りをキョロキョロと見回し、近くにマリアンナ男爵令嬢がいないことを確認しホッとした。できればお会いしたくない令嬢である。
しばらくすると式が始まり、入学許可の読み上げ、学園長の挨拶、来賓の挨拶、新入生代表であるエドワード様の挨拶があり、最後の生徒会会長による歓迎の挨拶が終わり、あとは終わりの言葉を司会が言うだけというときに、後ろからバンッと扉が勢いよく開く音がした。
全員が一斉に扉の方を見ると女生徒が一人立っており
「遅くなりすみません!」
と叫んだ。扉を警護していた騎士が慌てて外に連れ出し、扉をしめたために静かになったが、私の心臓は早鐘を打つように力強くドクドク鳴っていた。
マリアンナ・ブラウニング男爵令嬢だわ……。
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