104、町へ
アキラは十七歳の高校生だったが、事故に遭い死亡。すると、神?が現れ《創造》《無限の魔力》《想像力強化》《世界の理による最適化》《思考からの拡張解釈》というチート能力を貰い、ただ長生きすることを望まれ異世界へ。
【南半球編】
革命を成功させ、国内の安定に力を貸して三年が過ぎ。再び旅立ってこれまでの軌跡をたどり終えると、人間の槍使いのアリス、エルフの弓使いのフェリ、人間の魔法使いのカーラ、犬人族の双剣使いリリィ、人間の薙刀使いヒカリ、ドワーフの双子ヴィナとディア、羊人族で盾と槌を使うメアリ、さらに精霊の仔猫型使い魔を加えた九人と三匹で新天地へ。
順調に南下した主人公たちは南部に横たわる山脈に入り、雪原で過去に白い悪魔と恐れられた魔物の群れを退け、山を越えて荒野を抜けると砂漠へ。休憩を挟んで夜の砂漠へと足を踏み入れ白鯨に出会い、その後は砂漠を抜ける速度を競ってリリィが1位でカーラがビリに。砂漠を抜けて山を越えた先のジャングルで、主人公とヒカリは茶色いアイツにトラウマを植え付けられるが嫁たちの献身によって復活。西へ進路を変えつつジャングルを駆け抜け対岸が霞むほどの大河をわたると、最初の集落で乾季の蟻渡りと呼ばれる祭事に参加し、南部五都市を素早く観光後に海へと乗り出すと、海獣との鬼ごっこでは順調に連敗しつつもたまには休日をはさみ、最初の目的地である多島海の中に秘密基地を創り、今度は南へと船を進める。
そしていよいよ新大陸。上陸して助けたカエルさんたちの集落を訪れると、その夜には宴が催された。
「では、またいずれ」
と、ワンちゃん教授とお互いに拳を突き出し、それぞれの手の甲に鼻を近づける。これがワンちゃん教授たちスナフ族の正式な挨拶らしい。
(お尻の臭いを嗅ぐとかじゃなくてホントよかった)
お互いの臭いを確認するところは共通しているようだが、さすがに元の世界の犬と全く同じということはない。どれほど似ていたとしても、やはり違う種なのだろう。
ちなみに、北大陸とは比べ物にならないほど違いがある種族ばかりの南大陸において、頭を下げて一礼するのはどの種族に対しても問題のない行いということで、とりあえず正式な作法を知らない種族にはこの挨拶をするのが通例となっているのだとか。
「孫にはビシバシ厳しく魔法を教えてやって下され。まったく、災厄のことさえなければ私が直接教わるのですが。口惜しい限りですじゃ。ガウ」
ワンちゃん教授が付けてくれる案内はお孫さんという話。魔法を教えるのはその案内のついでなのだが、すでにワンちゃん教授の頭の中からは案内の部分が抜け落ちている感じがしなくもない。とは言え、紹介状にはちゃんと書いてあるので、問題ないとは思うが。
「では、行きましょうか。ケロ」
長カエルさんには朝いちで挨拶は済ませており、お孫さんが居るという町まで連れて行ってくれるのは御者カエルさん。見た目では全く区別がつかないが、感じる気配から昨日助けたのと同じカエルさんだと思う。
火の扱いが苦手なカエルさんたちは他種族から武具やお酒などを得ているそうで、元々その町と取引きがあるのだとか。その関係で町まで行くついでに連れて行ってくれることになり、長カエルさんからは助けた謝礼とは別にその町までの護衛料も貰ってしまった。
(当たり前だけど南大陸のお金は持ってないからね。さすが長カエルさん)
オレたちがすっかり忘れていたそのあたりに気づき、踏み込みすぎない程度にしっかりフォローしてくれた長カエルさんには感謝しかない。
「「じゃあまたねー!」」
再び『召喚魔法』で作った地を駆ける鳥型騎獣の上、離れ行く集落へと手を振る嫁たち。
昨夜の宴でオレが長カエルさんとワンちゃん教授に付きっきりになっている間、嫁たちはすっかり仲良くなっていたようで、子供から大人まで多くのカエルさんたちが見送ってくれている。
「次に来るのは秋頃ですよね」
と待ち遠しそうに確認するのは、二人乗りの今日の相方であるフェリ。
小さめでピンク色の子供カエルは最初から可愛いという評価だったが、すっかり仲良くなった今ではちょっとしたオシャレをしている女性カエルさんたちも可愛く見えるようになってきたらしい。
「そうだね。半年後くらいになるのかな?」
北大陸ではそろそろ冬になる頃なのだが、こちらはこれからが夏本番。そして次にケロッグ族が部外者禁止になる冬のちょっと前に、災厄の調査結果を聞くためにワンちゃん教授を迎えに来ることになっているのだ。
(その時には何かお土産を持って来よう)
あまり物欲のなさそうなカエルさんたち的には、大量にお酒を買って来ると喜んでくれるのではないだろうか。
お金の件で長カエルさんは恩に着せないように気を遣ってくれたようだが、そのくらいのことはしていいだろう。
ーーーーーー
「おぉ、意外と普通の街っぽいな」
結局姿を確認することはなかった凶暴ウサギの勢力圏を順調に一日かけて抜け、峠から目的地の町が見えたのは集落を出た翌日の昼頃のこと。
その町を遠くから見下ろした感じでは石っぽい材質の壁に囲まれた瓦屋根の建物群で、カエルさんたちの集落とは違って北大陸の町とさほど変わらなそう。
「意外と言えば意外ですが、案外こんなものなんでしょうね」
と、今日の相方であるカーラ。
二本腕で二足歩行という部分が同じならば、使う道具や住居もどこか似たようなものになるのかもしれない。
(北大陸のオークや南大陸のトカゲたちの武器とかも、デザイン的な違和感はあっても結局は剣や槍だと分かる物だったっけ)
違ってくるのは、常識や風習といった部分になってくるのだろう。
「予定通り、今日中には着けそうですな。ケロ」
ほっとした様子の御者カエルさん。今回は何の問題も起きなかったが、念のためしばらくは護衛カエルさんの数を増やして行き来するそうだ。
(今回はオレたちが居たけど今後はそうじゃないし、ちょっと心配かな)
道中に聞いた話では、カエルさんたちの住む南大陸西端の湿地帯から縦長な凶暴ウサギの勢力圏を越えたこちら側は様々な種族の国家があるようだ。しかし、その中でもトカゲたちの王国は南部にあるため、先日のように北東端集落の行商隊が襲われるというのはかなり異常な出来事だったらしい。
(災厄はもちろんだけど、トカゲたちの方も調べた方がいいのかね?)
南部のトカゲ王国からわざわざ北部にまで行商隊を襲いに来たということは、カエルさんたちのところに物資が入るのを阻止しようとしたのかもしれない。もしそうならば、その最終目的としては西部への侵攻という可能性が思いつくが、実際のところどうなのか……。
(精霊ズには災厄の方に集中してもらうとして、トカゲの方はオレの方で対処しておくか)
おそらくオークなどの同類で魔物に分類されるため、翻訳の指輪ではその言葉を理解することは出来ないと思われる。これは、何も考えずに創ったはずなのに魔物の言葉が翻訳されなかったということから、おそらく蘇生薬と同じ《創造》出来ないタイプの物なのだ。となると、使い魔で盗み聞きしてトカゲ王国内部の状況を探るのは難しい。
(てことは、トカゲ王国の軍事行動の監視と、北東端集落だけじゃなくて他の集落の行商隊も陰ながら守るくらいかな)
《創造》や《無限の魔力》といったチートを駆使すれば、トカゲたちを滅ぼすことも難しくはないとは思う。しかし、オレたち北大陸の人族と相性が悪く、かつ南大陸で仲良くなった種族とも敵対しているらしいとは言え、一つの種族を滅ぼしてしまうと様々な悪影響もあるはずだ。
(種族じゃなくて国家だけど、ネシアス帝国で革命して、その結果いろいろ思うところもあったしね)
ちょっと消極的な気もするが、大きな動きがない限りは、仲良くなった種族をこっそり守るくらいにしておこう。




