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CONNECT THE WORLD――千歳湊――  作者: 瀬名柊真


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8/8

第八話

「湊! あんたなにぼーっとしてんの。ゲームのイベントでしょ?」


 ハッと意識が引き戻される。CONNECTED WORLDは、すでにローディングを終えて、前回の続きができるようになっていた。さっきまでの全てが夢のような気がする。だが、きっと夢ではない。なにせ、スマホのウィンドウにニュースが流れていた。

 ――CONNECTED WORLD制作者のミミことMorris Mims氏が死去――。

 そして、画面に映るミミのアイコン。それはまさしくMoeじゃないか。なぜ忘れていたのだろう。Moeといえば、ミミのキャラ名だったのに。あぁそうか。つまるところ、ミミもMoeも同じだったのはそういうことだったのだ。一人、湊の中で合点が行った。


「いや、ちょっとね……って、うわっ!」


 湊の腰掛けていた場所――段ボールが凹んで尻餅をつく。


「なんで中身のない段ボールがこんなところに……って、衣服類って書いてあるけど?」


「え? おかしいな、中身ないけど……」


 こうしていると、本当に何事も変わりがない。祖父である太一が死んだ後片付けのことなど忘れそうだ。


「あ、父さんの仕事は?」


「ちょうど今取引が終わったみたい。御飯作って待ってろってさ」


 相も変わらず傍若無人な人だ。と湊は思う。祖父とは似ても似つかない。それこそ何年も前に死んだ――誰だったかのほうが父にそっくりだ。


「父さんってば、なにがそんなに忙しいんだか」


「ほら、一応大きい会社勤めてるんだから仕方ないじゃん。それに、太一さんとは仲も良くなかったし」


 そうだったか。どちらかといえば仲良くしていたような気もするが、母がそういうのならそうなのだろう。自身を納得させつつ、湊は痛い尻をさすりながら立ち上がった。

 ログインボーナスを受け取ってから、スマホをポケットに直す。


「湊、ちょっと陽太に連絡しといてよ。帰んの3時くらいって」


「あーはいはい、オッケー」


 せっかく直したスマホを取り出し、湊は父へと連絡を入れた。友達の人数が108もいると探すのが大変だ。あれ、友達の人数って109じゃなかったっけ――?

 得も言われぬ違和感に襲われながら、再び湊はポケットへとスマホを仕舞う。

 段ボールを潰しているうちに、湊はエアガンを見つけた。母へ持ち帰る許可を貰おうと湊が後ろを振り返れば、母はとっくに車に乗り込んでいた。

 エアガンの一つはハンドガンタイプで持ち運べそうだったのでポケットへしまい込み、湊は車へと戻った。

 祖父の家ともこれでお別れだ。後は業者がやってきて、荷物を運び、家を購入する人が出るまで待ち続ける。

 車に揺られながら湊は思った。あれは夢ではない。それなら、湊が殺したあの人達の存在も消えてしまったのだ。ハル、ユウト、ノゾミ、ヨーコ。誰ともわからない人たちだが、その人たちの生きた証を奪った。

 だが、こうして湊の心で息づいている。だから、赦してほしいと切に願った。

 

「母さん母さん、父さんは5時くらいだって」


「はいはい。豪勢な料理振る舞ってあげなきゃね。ほら、陽太ってばお義母さんと同じで、からあげ好きだったでしょ」


「ん? うん、そうだったね。帰りにスーパーでも寄ろうか。僕も唐揚げ食べたいし」


「湊」


「どした?」


「や、なんでもない。なんか、変わったね」


「そー?」


 母は鋭い人だな、やっぱり。でも、このことは誰にも言わない。誰かの人生を息子が奪ったなんて知ったら、母は卒倒してしまうだろうから。或いは――口にしても存在ごと消えた人なら冗談と笑い飛ばされるのだろうか?

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