第六話
どのくらいの時間が経過したかもわからない――そもそも時間など存在していないが――中、マップの端である丘陵の広がる場所にみなとは身を隠していた。みなとの身体だからこそ、完全に身を隠せているのだろう。マップ自体が広いお陰か、先程から聞こえるのは銃声だけ。ただ、それが聞こえるということは銃使いがいるということにほかならず、よりみなとの身の危険性をしらしめられるだけなのだが。
ソードを握りしめた右手は白くなっている。たといこの行為がどれほど間違っていたとしてもやらざるをえないのかもしれない。やらなければやられる。誰も望んで殺すわけではない。なにせ、 この場所では、か弱い女の体だからとか、初めてきたばかりだとかは関係ない。ただ、死ぬか生きるか。殺さなければならないから殺すのだ。
何度も言い聞かす。僕は悪くない。僕は悪くない。悪いのは、Moeだ。
(ノゾミさんは死んだから……後はユウトさん、ハルさん、ヨーコさんだ。遠距離のやつから殺さないと……)
この場合、遠距離は最低2人だ。弓使いと銃使い。2つとも違う職業になるから一人が使用することは不可。勿論これはCONNECTED WORLDの話になるから、このCONNECT THE WORLDでは話は変わってくるかもしれないが。
弓と銃なら銃を優先すべきだろう。勿論弓の無音性は銃と並ぶ恐ろしさがあるが、一発アウトは銃の方だ。
みなとは丘陵を抜け、銃の音がする方へと忍び足で寄っていった。勿論道中で誰かに見つからないように身を潜めながらではあるが。
射撃手の下へたどり着いた時、その惨状にみなとはひゅっと息をつまらせた。3人。3人が血だらけとなって転がっている。血の滲んだ砂が風に乗ってみなとの頬を打った。ノゾミはまだ息があったのか、少し離れた位置でヘッドショット。ユウトは弓を持ったまま3発程度。ハルは足を撃たれていて、まだ息があるようだった。射撃手であるヨーコはみなとには気づかず、ハルへと狙いを定めていた。
(この場合、ヨーコさんが殺してから、ヨーコさんを殺すべきだな)
殺すのを止めるのではなく、どうすれば自分が得かを考えたことに、湊はゾッとした。まだこの手は誰も殺めてはいないというのに。
ヨーコが、銃を撃った。間近で聞く射撃音は耳が壊れそうなほど五月蝿くて、人の死を飾るのに相応しい気がした。
ハルが死んだのだろう。ヨーコがきょろきょろとあたりを見回していた。だから、みなとは後ろから近づいて、その首を掻き切った。
聞くに耐えない声だった。ひゅーひゅーと掠れた細い声が聞こえる度に吹きでた血が泡を立ててみなとの身体を穢していく。もがり笛、と呼ぶらしい。確かにこれは笛の音ににているが、笛の音に対して失礼だと湊は思った。
不意にみなとのほうを振り向いたヨーコの顔は誰かに似ていた気がしたが、それが誰かは判らなかった。
「もう、他のやつは死んでる?」
首を切った相手に訊くものとしてはあまりに間違っている。だが、ヨーコは頷き、湊もそれに抵抗がなかった。もはや、罪悪感などという感情は湧かない。それはまるでただ動物の屠殺するのと同じようだった。あんなにも躊躇われていたことが、所詮この程度。その事実に心が空っぽになっていく中、視界は歪み、元いた場所へと戻ってきていた。湊の身体はすっかりと元通りだった。




