意外とやれるな
助けを求める声がする。
「きゃぁ! うちの子がまだ中に!」
燃える建物の中に取り残された我が子を涙ながらに呼ぶ声がする。
『三階。生命反応を確認』
「……よし」
そんな時白い戦士は赤いマフラーを翻し、さっそうと現れる。
屋根から屋根に飛び移り王都を駆け抜け白い戦士は窓を突き破って燃える建物に飛び込んだ。
「ゲホゲホ……誰?」
机の下で丸まっていた子供を発見。
子供を抱き上げ、外に飛び出す。
「坊や!」
助け出された子供を抱きあげた母親は尋ねた。
「ありがとうございます! あなたのお名前は!」
ぽかんとしている子供を地面に降ろし、白い戦士はぐっと親指を立ててその場を後にした。
「ひったくりだ! 捕まえてくれ!」
人ごみの中で事件発生。
白い戦士は上から降ってきて、あっという間に赤いマフラーで犯人を巻きとり宙吊りにした。
「な、なんだ!」
犯人が戸惑っているうちに行動不能にしてしまう。
通りから拍手が巻き起こり、白い戦士は親指を立ててやっぱりその場を後にした。
「……意外と、やれるな」
俺は王都の時計塔のてっぺんでそんなことを呟いた。
王都ではトラブルも多く、パワードスーツはよく動く。
具体的にヒーローっぽいことをやってみようとした活動は、うまくやれているようにも思えた。
俺は一歩踏み出して、時計塔の屋根から落下する。
流れていく平和でにぎやかな王都の街並み。
俺はそんな一連の流れにヒーローらしさを全身で感じていた。




