結局制服はお揃いのエプロンになった
せっかくニーニャを秘密基地に連れてきたのなら用事も済ませてしまおうと俺達は町に出かけることにした。
行先はシルナークの服飾店である。
店用の服を仕立てるためだったが、店の扉を開き、店内にいたシルナークは、いきなり真顔で俺達を凝視する。
そして接客より何より先に俺に言った。
「……知らなかったのかもしれないが誘拐は犯罪だ。すぐに罪を認めれば大ごとにならずに済む」
「誘拐じゃねぇーから。彼女はうちの店員だ。そんで店の制服作ってくれ」
「なに? 店員だと? おいおい人間どもの忌むべき文化だな。奴隷を買うなど」
「奴隷でもねー。成り行きで世話をすることになっただけの仮の身元保証人だ俺は」
「……なんだそれは?」
「俺が聞きたいなそれは……」
説明してみたものの、言っていて自分でも訳が分からない。
シルナークも本気で怪訝な顔をしていた。
だがすぐに考えるのをやめたようで、俺ではなく今度はニーニャの前に膝をつき優しい表情で微笑みかけた。
「ふむ……お嬢さん。人生つらい事もあるが、決してくじけてはいけないよ? ほら、シルナーク特製クマのぬいぐるみをあげよう」
【……!】
さすがエルフ。ニーニャも驚いて思念がまとまらなくなるほどの男前オーラである。
こんなものはジョークの一部だと知っている俺は、彼の頭をぐりっとこっちに向けた。
「シルナーク……そろそろ真面目に話をしよう」
「もう聞いたろうが。このお嬢さんの服をしつらえてほしいんだろう? 構わんよ。
むさくるしいドワーフどもの作業服よりもよほどやりがいがある」
一応話を聞いてはいたようだが肝心の部分が抜けていた。
「俺の服も」
「ん? まぁそっちは暇な時にでもな」
「ちゃんと俺の服も頼むぞ? それと彼女にも事情があるからあんまりじろじろ見ないように。清潔感があるので頼む。貴族相手でも問題ないのがいい」
「いいぞ。生地はそれなりものを用意してやる。お前のはまぁ……安いのでいいよな?」
「できれば、俺もそれなりがいいけど」
「おや、いいのか? お前の寂しい懐事情をおもんぱかっての言葉だというのに」
「なるほどな……自信がないなら他を当たってもいい。なんたって今の俺にはスポンサーがついているからな」
「待ちたまえ……それは実に興味深い」
悪い顔でニヤニヤ笑いながら話をする俺とシルナークを見て、思念で俺の頭に語りかけてきたのはニーニャである。
【……仲が悪い?】
そう改めて尋ねられると、友人と他人のラインを行ったり来たりする非常に微妙な間柄だ。
「そういえばいいものがあった」
シルナークはニーニャを見ていた、そして何かを思い出しそそくさと店の奥に引っ込むと、とある服を持ってきた。
「ところでこいつは、とある行商から手に入れた服なんだが、彼女に似合うとは思わないか?」
それはアジアンテイストなインド風の踊り子衣装である。
ちょっぴりセクシーな衣装に最初俺は難色を示した。
「おいおいシルナークいい加減にしろよ? 店員の服だぞ? 似合うとは思うが、このセクシーさはまだ早い」
「いやいや。似合うのならば当然ありだ。それにこの服は彼女にぴったりのはずだ。素材も一級品で細工にも工夫が凝らしてある。君にはかわいいは正義という言葉を贈ろう」
「……かわいいは正義か。なるほど……確かにかわいくないとは思わないな」
がっちりと握手、友情のハンドシェイク。
【……仲が良い?】
「仲は知らんがどっちも馬鹿だ。衣装の注文は自分でしとけ」
ニーニャとマー坊のこそこそ話は聞こえた。
ちなみに踊り子衣裳は、さりげなく却下された。




