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PS ヒーロー始めました。  作者: くずもち
異世界の来訪者編
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リッキーにも挨拶

「こほん……気を取り直していこう。次は、鍛冶屋を案内しよう。贔屓にしてる職人がいるんだ」


【エプロン楽しみ】


 センスがとんがったエルフの家を後にして、今度はリッキーの家を目指す。


 今後、最も世話になると思われる職人にニーニャを面通ししておく意味も込めて工房を訪ねた俺達だったが……。


「こ、これは……!」


【……し、死んでいる】


 ピシャっと俺達の背景に雷が鳴ったような衝撃が走り抜けたかどうかはわからないが。


「いやいやいや。どうしたリッキー」


 そこには机に突っ伏し若干干からびていたリッキーがいた。


 あっ。目が死んでる。


 なんだか燃えつきているリッキーを突いてみる。


 ビクビクしているのでまだ息はあるようである。


「……ニーニャ、この男に回復魔法をしてもらっていいだろうか?」


【……わかった】


 ニーニャが頷いて、リッキーに手をかざした。


 ぼんやりその手に光が灯ると、幾分リッキーの顔に生気が戻ってきた。


「……え? なに? 女神様?」


「わかる。俺も似たような反応したことあるわ」


 あの感じからすると仕事明けか、深いクマが痛々しい。


 さすが魔法の達人だ。ニーニャの使える回復魔法は特に俺としても期待したいところだった。


 その上肉体疲労にも効果があるようで素晴らしい。


 俺は回復を確認して、リッキーの顔を覗き込みやれやれとため息を吐いた。


「それでどうしたのさ? リッキー、いつになく顔色が死んでるが?」


「……実は、せっかく作った防具が売れなかったんだよ」


「リッキーの防具が?」


 しょんぼりと肩を落としているリッキーのそばには見慣れない大きな袋があった。


 これはまた何かやらかしたのだろうか?


 リッキーの鍛治の腕は、目が肥えているドワーフ達の間でも一目置かれているほどだ。


 普通にやってればケチをつけられることなんてないはずだが……。


「そうなんだ……。注文通りだと、どーもしょぼそうだったから、とっておきの素材をふんだんに使って、納得ができるまでとことん試行錯誤して、依頼主に持って行ったんだけど……高すぎるから買い取れないって」


「……うんまぁ、予算ってものがあるもんね」


「いいものには相応の投資が必要だろ!? それに納期がちょっと遅れたからって全額払えないってことはないだろ!?」


「……まぁうん……ひどい話だね」


 力強く力説するリッキーだが俺は空返事しか出てこない。


 どうも今回、リッキーの悪い癖がでたらしい。


 ああリッキー。この町の変人ランキング3位の力を最大で発揮したようである。


 まぁこのこだわりこそ俺が彼を仲間に引き込みたいと思った理由なんだが、そのせいでリッキーは割と毎回金欠だった。


 自分の作品が受け入れられなかったからだろう、リッキーのご機嫌は斜めのようだった。


「そうだろ!? まったくもう……でもいいんだ。お店に飾って愛でるから。もうそれで満足しておく」


「……それは大丈夫なんだろうか? 見せてもらってもいい?」


「……いいけど」


 一体どんな物を作って持って行ったのか、興味があったので俺は袋の中を覗いてみると思わず大きく口を開けて固まってしまった。


「こ、これは……!」


 それは盾だった。


 純粋に厚く大きな盾である。


 丁寧に磨き上げられた鏡のような盾はゆがみ一つなく、そのこだわりが見て取れる。


 だが単純にでかすぎる。


 持つ者を強力に守護しようとする硬い意志を感じるが、重さも相当なものになることだろう。


「こ、これはまたすごいの作ったなぁ」


「だっろー。戦場でも死ににくい盾っていうからさ。魔法金属をこれでもかと重ねて層にして、厚くしてやったんだ。指揮官なんてどうせ動かないんだから重量は気にしなくっていいかなって」


「……なるほどなぁ。そのコンセプト嫌いじゃない」


 まぁ、物には限度があったってことなんだろうけど。


 そのあたりリッキーにはどうでもよさそうだった。


「だよねぇ。何でこの良さがわかんないかなぁ……まぁいいんだけどさ」


 そう言って特大のため息を吐くリッキーは盾を持ち上げようとしたが動きが止まる。


「……ふっ! ……ふんぬ!」


「何やってんだリッキー?」


「……ん。まあ後で飾ろう」


 どうやら重すぎて持ち上げられなかったみたいだ。


「それでそこのお嬢さんはいったい誰?」


 露骨に別の話を振ってきたリッキーに、俺はひとまずニーニャを紹介した。


「……ああ。期待の新戦力。ニーニャだ。魔法が得意な娘さんだよ。これから顔を合わせることもあると思うから紹介だけしておこうと思って連れてきた」


 ニーニャは焦って頭を下げる。


 リッキーは真ん丸な目をして、ニーニャをしばらく見ていたが俺に視線を戻すと心配そうに言った。


「え? なに犯罪とかはやめた方がいいよ? やましいことをすると、あとで後悔するのは自分なんだよ?」


「なんでお前らは俺が女の子紹介しただけで犯罪に結びつけるんだ!」


「そりゃぁ……町の変人ナンバーワンだし」


「人聞きが悪いー」


 うーん友達って何だろう?


 今のこいつだけには言われたくねぇと思ったが今は言わないでいてあげよう。


 変人には変人だからこそ生み出せるものがある。


 あの大盾。使える。


 俺は密かにリッキーの大盾を、心のメモに記しておいた。


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