風呂好き
俺は長い廊下を夏乃と進み、また2、3個階段を降りていった。
(おいおい、まだ下があるのかよ)
どうやらタオルなどのは全部向こうにあるらしいので、俺は手ぶらでついていく。
「なぁ、着替えって俺持ってないんだけど……」
「あ、確かに。今日は同じの着て我慢しなさい。」
「まじかよ……。」
どんなにその日疲れても、お風呂には必ず入る俺にとって、入浴後同じ服を着る事は大分心にきた。
「大丈夫。服は明日、上の売店で買えるから、洗濯するところも風呂の帰りに寄るから覚えといてね。」
「おう。ありがとう。本当何でもそろってんなここ。」
「そうだね。嫌ってぐらい全部……。」
「……?」
(嫌ってなるのか?こんな充実してんのに。どういう事だろう……。)
「ほら、着いたよ。じゃ、私は右だから。また後で。」
「うん。また。」
「ほー、ここが。」
銭湯じゃん。右と左に、多分男女で分かれていて、入り口にそれに合った色の暖簾。
銭湯じゃん。中に入ると右には扉がついてないタイプのロッカーがずらーと並び、入り口の左側には多分体拭く用のタオルが積まれている。
銭湯じゃん。服を脱ぎ、部屋(脱衣所)の奥にあった重めの扉を開けると、そこには温泉……じゃない!?
俺の目に飛び込んできたのは、見たこともない膨大な水量を叩き下ろす巨大な滝だった。
正確にいうと、滝は50m程離れたところにある。その滝を受け止めるような大きな岩場があり、そこに下るような橋というか、板が扉と岩場を繋いでいる。板の左右では溢れ出た水が真っ黒の地下空洞へ落ちていく。
「ひいー!あんだこれー!?この扉までで予算使い切ったんか!?」
(この滝がもう少し近かったら、岩場がもう少し小さかったら。入った瞬間水の流れで、下に落っこちんじゃねえのか!?)
高所恐怖症とほんのり潔癖症が戦った結果、俺は恐る恐る岩場へと足を運んだ。
(右側にずっと壁あるけど、滝の真ん中を壁で割って男女を分けてんのか。その木材足場に回せよ。)
随分ワイルドな水浴びを行った。首がいたい。
そろそろ出ようと、滝から離れ、板を上がり、扉を閉めようと、後ろを振り返ると、滝の中から誰か出て来たのが見えた。
(誰かいたのか……!水量が半端なくて、視覚も聴覚も機能してなかったから、気付かないのが普通か。)
(それにしても……)
すごい筋肉だ。これがジャパニーズガチムチってやつか。
生で見ると同じオスとして尊敬してしまう。
遠目で見ても、190はありそうな巨大な男には頭に獣のような耳があるのが見えた。
(おっと、他人の裸なんてジロジロ見るもんじゃないな)
筋肉と同じくらい頭の獣耳が気になったが、夏乃と待ち合わせしているので、俺は脱衣所へと入っていった。




