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映し出された真実

 ふわふわとした微睡の中、鳥の囀りが辺りに響き渡る事で徐々に意識が覚醒していき、次第に肌寒さが全身を駆け巡る、その理由はおそらく朝になりまだ日が昇り切っていないからだろう、昨日の夜の戦闘後、男二人はあの言葉は何だとという説明を求められ、なんとか必死に言い訳をした結果、ハミィのお説教は回避できなかった……思わず出てしまった言葉ではあるが自分達がいらぬ想像をしてしまった事であの絵ずらが出来上がってしまった事もあり、二人揃っておとなしく怒られはしたが元々はマジェのあの一言がなければあんな事にならなかったのだ。


 しかしまぁそんな事は考えても仕方がない、そしてその結果は男どもを見張るという形で俺とハミィ、マジェとカッチェに分かれて見張りをしながら眠る事になり、先に寝たマジェ達と交代で朝まで眠りに付いたのだ。


 「ん……寒い……」


 「お? 起きたか?」


 「かな~?」


 目を閉じたまま温もりを求めて身じろぎするが、聞こえて来た仲間の声によりその意識が急速に覚醒していき、眠気により靄がかかっているかの様な思考が鮮明になる。


 「ん~~、おはよう、何もなかった?」


 体を起こして背伸びをしながら寝ていた事による体の鈍さを徐々にほぐし、寝ている間に起こされる事はなかったが、自分達が寝た後も大丈夫だったのだろうかと心配をする。


 「おう、特に何もなかったぜ! 暇すぎてカッチェの髪で遊んでたぐらいだ」


 女の子の髪で遊ぶのはそれはどうなんだろうと考えながらも髪でどう遊んでいたのかと当人であるカッチェの髪に視線を向けると、いつもは特に縛ったりすることもなく流してしるだけだった髪型が網目状に結われて整えられていた、相当器用でないとこれは出来ないだろうというある意味の芸術を魅せ付けられる。


 「すげーなそれ、マジェそんな事できるのか」


 「ん~マジェは昔から髪型いじるの好きだったからね~、最近はなかったけどクレイの町にいた頃はよく勝手に変えられた~」


 「カッチェは解ってねぇんだよ、髪は芸術なんだ、少し手を加えてやるだけでその姿を変えて色々な表現を見せてくれる、いいか! 髪はな、見るだけじゃなくて魅せるものなんだよ」


 「あ~はいはい」


 力説をするマジェをカッチェが軽くあしらい、解ってもらえない事に少し落ち込むマジェの見て俺もやってみようかとその生贄を探すが、寝る時には近くにいたハミィの姿が見えなかった。


 「あれ? ハミィは?」


 「ハミィなら向こうの小川に行くって言ってたよ~、夜なら止めたけどもう日も上がって来てるし大丈夫だからちょっと行って来るって~」


 そういいながら指し示す方向は俺達が野営をした北側にある少し木が多い茂った場所で、距離もそれほど離れてはいないから何かあっても駆けつけれるだろう、しかし魔物が力を増す夜ではなく昼間だとしても一人で大丈夫かと心配にもなる。


 「ちょっと行って来るわ、顔も洗いたいし!」


 「行ってらっしゃい~」


 「ごゆっくり~ってカッチェ! ここ気になるならちょっと直す、動くなよ!」


 「えぇ~」


 どうやら髪に関しては特殊な思いがあるマジェの様だが、納得がいく出来になるにも時間がかかりそうだなと立ち上がり、教えられた場所へと行く事にする。


 少し歩いて木々で先が見えなくなっている間をすり抜けて行き、小川が近くなってきたからか水の流れる音が聞こえて来るのを頼りに先に進むと、少しづつその音が大きくなって来るがそれだけではなく、その中に水が滴り落ちる様なおとが混ざり始める、おそらくハミィが顔でも洗っているのだろう。


 「眩し……」


 人間というのは不思議な物で、少し薄暗い木陰に入っただけでもその先に広がる日の当たる場所が眩しくて見えなくなるようだ、目を細める事で見えやすくはなるが先の状態が見えにくいというのは少し嫌な気分にもなってくる。


 眩しさを堪えながら木を避けて進み開かれた小川へとたどり着くと水の音と共に髪の長い一人の男が流れる小川の中で上半身を脱いで体を拭く姿が映し出される、もちろんその相手はハミィであるのだがおそらく昨晩の戦闘で触手に絡まれたところを綺麗にしているのだろう、まぁ今は男だし大丈夫だろうと声を掛けようと手を上げて口を開くが、その姿に見惚れる様に動けなくなっていた。


 いや、正確に言えば体を拭いている姿にではなく、その姿を映し出す様に小川に映りこんでいる彼女の姿にだ、長い黒髪を肩の辺りから体の前に流し、ゆっくりと拭き取る切れ長の目をした()()、その容姿はもちろんではあるがその人の存在自体が美しく輝いて見える、すべてがはっきりと見えるわけではないがその映し出された姿は紛れもなく()()のものだ。


 「……だ、誰!?」


 「きゃぁ! 誰!?」


 開きかけていた口から思わず出た貴方誰ですか!? という質問に驚いて辺りを見渡しながら胸の辺りを両手で隠すハミィは、辺りをキョロキョロと見渡し棒立ちになっている俺を見つけると安心したかのようなため息をついてジト目で見つめ返す。


 「びっくりした、コウいつから見てたの?」


 「い、いや、ほんとについさっきだけど、そ、それよりハミィ! それ、それどうなってんの!?」


 上げていた手を今だ彼女と思われる女性を映し出している小川を指して、そんな姿が見れるならもっと早くに見せてくれても良かったのにと思う気持ちを抑えて疑問を投げかけるが。


 「え? どうって……何の事?」


 「いや、だって……そこに映っているのって……」


 「ん? コウどうしたの? 別になにもないけど……?」


 俺が指し示した物を見ても何もないと、今の自分の姿が映っているだけだとそう答えた。


 「えぇぇ……どうなってんだ?」


 「それよりコウ、いつまで見てるつもり?」


 「え!? あ、ごめん」


 少し威圧感を交えたハミィの言葉ですぐさま後ろに振り替えるが、今映し出された光景が頭から離れることは無い、なんだったんだ今のは。


 「もういいよ、こっち向いて」


 「あ、う、うん」


 振り向くことの許可をもらった事で再び彼女の姿を凝視するがすでに服を着た状態で小川から出てしまっている、これでは確認はできないな。


 「それで? コウは私を探しに来てくれたの?」


 「まぁね、少し心配はしたかな、後は顔を洗いたかった」


 「ふぅ~ん、そうなんだ、それじゃ戻ろっか!」


 少し微笑んでなにやら嬉しそうな彼女は頬に手を当てながら顔を逸らす様にして俺が通って来た方へと歩き出す。


 もう一度確認の為にも見たかったけどしかたがないか、それにしても――。


 「今のがハミィの本当の姿……?」


 もしそうだとしても何故ああいう形で見えたんだ? それに彼女自身には見えていない、今の男としての自分が見えていたみたいだ、全くわからない……あれ? ちょっと待って。


 「ハミィ! 俺まだ顔洗ってない!」


 その後野営地へと戻り、二人と合流した俺達は目的地を目指して再び歩き出す、これからも俺達の戦いは続いて行くだろう。

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