ブレイクとは脱がせる事!
「ない、とはどうゆうことだ? なぜ持っていない?」
盾を構えろとサイモンさんに言われたのに対し、俺はないと答えたがまずはその説明からしないとダメなんだな~と説明をする。
「えっと、買いに行ったんですけどお金がなくて……買えなかったんです、鎧の方は店の人の好意で揃えることができたのですが、現状盾はないんです」
俺の説明を黙って聞いたサイモンさんはなんどかうなずいた後口を開いた。
「まぁ駆け出しだしな、金銭面で買えなくてもしかたないだろう、しかしタンクが盾を持っていないというのもそれはそれで問題だ、早いうちに手に入れておくようにな!」
確かにそれは自分でも思っていたことだが、鎧と盾とどちらかしか持てないとなった場合、俺は鎧を選んだ、盾だけで全身を守るのは無理だし、急所は常に守っておかないとなにかあってからでは遅い。
結果的に技を教えてもらうという事に支障が出るかもしれないが、それはしかたないだろう。
「はい、出来るだけ早く持つようにします」
今はそう答えることしかできない。そして問題は技を教えてもらえるのかどうかだ。
「サイモンさん、技は……今日は教えてはもらえないのでしょうか?」
「いや、盾がなくとも覚えることはまだまだある! ないならないで他の事を教えるまでだ! ということで教える技の名前はブレイクだ!」
「ブレイク……どういった技なんでしょうか?」
「ブレイクは簡単に言うと敵に与えるダメージを増やす技だ!」
どうやって増やすんだ? その技を使うだけで増やせるというのだろうか? そんなこと可能なのだろうか……?
などと考えているとサイモンさんは続けて説明をしてくれた。
「つまりだ……この技はな、敵を脱がせる技だ!!」
またこの人は凄いことを言い出したな……脱がせる技? 俺に敵であろうと服を脱がす犯罪者になれというのだろうか? 敵が男だった場合も脱がせと? そんな趣味はないのだが……
「脱がす、つまりは装備を壊す、剥がすという事だ、カッチカチの防具で固めている敵に攻撃をしたとして、その敵にダメージを与えたとしてもたいしたものにはならない、しかし! 防具さえ壊して、外してしまえばどうだ? 攻撃は直に体に伝わりかなりのものになる、その為の技だ!」
確かに、防具をなくしてしまえるのならその効果は絶大なものになるだろう、凄い技だ! その技、早く教えて欲しい! あの二人とパーティーを組んだ時に必ず役に立つはずだ。
「サイモンさん、その技教えてください! 修行がしたいです!!」
早く修行を! その思いをサイモンさんの目を見ながら伝える。あの二人を迎えに行くんだ。
「いいだろう、でははじめるぞ!! まずは剣を構えろ!」
俺は言われた通りに腰にぶら下げ、鞘に入っている剣を抜いて構えるが、俺が構えるのを見ていると思っていたサイモンさんの視線はどうやら俺ではなく、俺の持つ剣に行っているようだった。
そしてその表情はとても信じる事ができない、そういった物を目の当たりにしたような、驚愕と困惑が入り混じった感じをしている。
なんだ? なぜそんな顔をしているんだ……? そんな疑問を抱いている俺を気にもせずサイモンさんは口を開いた。
「コウ……お前なんで……そんなものを持っているんだ………?」
そんな物、とはおそらく剣のことだろう、これを見てから様子がおかしいしな。
「剣のことですか? 鍛冶屋で買ったものですけど、これがどうかしましたか?」
「いや、剣自体はいい、私が言っているのはその文字だ……それが何なのか知っているのか?」
文字、刻まれているこの文字のとこか、何もわからない。そうとしか言えないだろう。
「いえ、この文字については何もわからないんです、この剣を作った人も読めないし、どんな効果もあるのか全くわからないって言っていましたし」
「そうか……」
俺の説明を聞いたサイモンさんの返事はそれだけだった、だが何か知っているのかもしれない、もし知っている事があるなら少しでも情報は掴んでおきたい。
「サイモンさん、この文字についてなにか知っていますか? できれば教えていただきたいのですが……」
「その前に、それを作った人がいるといっていたな、その人はどうやってそれを作ったのかは聞いているか?」
そう言われた俺はあの時の事、カマウリさんが言っていた言葉を思い出し、伝えてみた。
「確かよく来る冒険者が見つけた経典があって、使い道も効果もわからないという話だったんで買い取って剣を作る時に使ってみたらこうなった、と言っていたと思います」
「そうか……」
俺の話を聞いたサイモンさんの返事はそれだけだった。
「その文字はな、魔族の文字だ、俺も読めないからどんな効果があるのかまではわからない、というかそれを読めるのは多分魔族だけだろう、その剣を使うなら一様注意はしておいた方がいいぞ」
魔族の文字、そういわれてもいまいちピントこないな、会ったこともないんだから。それが正直なところだろう、注意しろと言われてもどうしたらいいかわからないしな。
とりあえず今は次の技、ブレイクを習得するのが先だ!
「サイモンさん、そろそろ修行をはじめたいのですが……」
「ん、そうだったな! でははじめるとしよう! まずコウ! 貴様にやってもらう事がある」
「はい! なんでしょうか!」
「貴様には私を裸にしてもらう!」
(なぜそうなるんだ? 装備外すだけでいいのではないのか?)
「サイモンさん、装備外すだけじゃダメなんですか?」
「ダメだ!!!」
(何故だ!? 装備だけでいいじゃん! なんで裸にまでしないとならないんだ!?)
「いいか、ブレイクだけではなくどの技にも言えることだが練度を上げないと効果も薄く時間もかかる、そのため今回は俺を裸にするまで続けてもらう! そこまで俺を脱がせることが出来れば貴様のブレイクはそれなりの出来上がりになるだろう!」
なるほど……装備だけではなく相手の衣服まで脱がす、それによって技の完成度を上げるとは! その考えはなかった!! さすがサイモンさんだ。
「わかりました! やってみます!」
「よし、ではまずやり方だが相手の装備、その隙間やつなぎ目を狙い剣で弾き飛ばすのだ! さぁいくぞ!!」
「はい!」
こうして俺の修行は始まり、サイモンさんを裸にできたのは結局丸一日かかった為、疲れ果てたまま宿に戻り、明日へと備えるのだった。
そして翌日、俺はギルドに来ていた、その目的はお金だ!! 盾を買う資金が必要なのだ。その相談としてラミアスさんに話をしに行こうと寝る前に決めていた。
ギルドは相変わらずにぎわっていて朝だということもあって人がかなり多い、あまり時間をかけるのもあれだと判断し、ラミアスさんを探すとカウンターにいるのを見つけた、早速話かけ、相談をすることにした。
「ラミアスさんおはようございます、すいませんまた相談に来ました」
「おはようございますコウさん、相談……とは? また何かありましたか?」
「ええ、実はまたお金を稼ぐ方法を相談に……なんかすいません、相談に来るときにお金の話ばかりで……」
「ああ、いえ、そこは大丈夫ですよ! それでどれくらいの額が必要なのですか?」
「そうですね、そんなには必要ないとは思うのですが盾を買えるぐらいの金額が欲しいんです」
サイモンさんにも言われたことでもあるし、自分でも思っていた事、盾の確保、タンク職である自分が盾を持っていないという今のこの状態がおかしいのはわかってはいるが鎧を先にしたことにより盾の確保はどうしても遅れてしまう、そんなお金はないのだから。
「そうですね~、お二人との合流はまだできそうにありませんか?」
マジェとカッチェとの合流、今のままでもできるであろうが、今の自分ではタンクとしての能力が全くと言っていいほど発揮できない、盾がないからな。
それを考えるとまだ合流はできないだろう。
「そうですね、まだ合流はできません、会いたいとは思っていますけどね!」
俺の言葉を聞き、少しほほえましい物を見た様な顔をした彼女は一つ提案を出してくれた。
「コウさん、ペアを組んでみるのはいかかですか?」
「ペアですか? なんです?それ……」
町に来てからそんな言葉は聞いたことがないのだ、名前からして二人組? というぐらいでしかわからない。
「ペアとはまぁコンビを組む、ということですよ、冒険者の人はこれをしている人が多いですね、クエスト報酬は半分になったりしますが手間も減るので早くかたずいたりするのでお勧めではありますよ? ちょうどマジェスティさんとカッチェスさんのような状態ですね、コウさんの場合前衛職ですので相方として欲しいと思う人も多いと思いますよ?」
そう説明を受け、なるほどなと納得はするのだが問題はどうやって知り合うかだ、なにせ自分から人に言葉をかけて誘うなんてことをしたことがない。
人を誘う時ってどうやるのだ……? どこで知り合えるの??
そんな俺の困った様子を見てラミアスさんは口を開く。
「えっと、何かわからないことでもありますか?」
「えっと、……どうやったらそうゆう人と知り合えるんですかね……?人に話しかけたことすらないんでわからないのですよ……」
「あぁ、そうゆうことですか、大丈夫ですよ? 町の北に紹介所がありますからそこで登録をすると自分に合った人、もしくは希望の職業の人を紹介してくれます、一度行かれてみてはどうですか? お二人と合流したとしても基本パーティは4人で組むことが多いので問題はないと思いますよ?」
確かに相方は欲しい、それはマジェとカッチェを見ていると余計に思う、合流した後でも問題はないのなら一度行ってみるのもいいかもしれないな。
「そうですね、一度行ってみることにします! 場祖は北のどこらへんにあるんでしょう?」
「北の鍛錬所のすぐ近くですよ! 行った時に人が集まっている場所を見ませんでした?」
確かに全く気にはしていなかったが人が集まっている場所があったのを思い出す。
「そういえばあった気がします、行ってみますね! ありがとうございます!!」
俺は彼女に礼を言い、ギルドから北に向かうことにした。
北の通りは人も多く、色々な施設があると聞く場所だ、そんな所にひときわ人が集まる場所があった、男女共に色々な職業の人が集まっており、その場所は目的の場所だと判断できる、よく見ると中心に人が立っているのが見えあの人が仲介人だろうと思い話しかけてみることにした。
「すいません、ここで相方になる人を紹介して頂けると聞いて来たのですがあっていますか?」
まずはここが目的の場所かどうかを確認しなくては、間違っていた場合恥ずかしいし……
そんな俺の質問を聞いた仲介人らし男性は笑顔で答えた。
「ええ、あっていますよ! ここでは希望する人に紹介をしています、登録料として銅貨3枚ほど頂くことになりますがどうすますか?」
「大丈夫です、では登録をお願いします」
費用である銅貨3枚を渡し登録をする。
「はい、ではご希望の職業などはおありでしょうか?」
希望の相手、前衛の俺には相棒として選ぶならヒーラーがいいだろう、合流した後カッチェがヒーラーだから職業がかぶるがまぁ大丈夫か。
「ではヒーラーをおねがいします」
「かしこまりました、ではヒーラーの方でタンクをご希望の方は………あ、いらっしゃいました! 1名ですが今お呼びしますね」
そう言い残し、人ごみの中へと入って行った彼の背中かを見ながらワクワクやドキドキが収まらず、若干緊張をしながら待つ事にした。
少しした後、そんな俺の後ろから声をかけてくる人がいた。
「はじめまして、貴方のお相手に選ばれましたヒーラーのハミィです、よろしくおねがいします」と。
その言葉を聞き、慌てて挨拶をするために振り替えるがその途中で俺は不思議に思ったことがあった、ヒーラーは本来女性しかならない職業というわけではないのだが、女性が多いのだ、割合的なことで言えば2割が男性で残りは女性、そんな感じだ、そして俺に声をかけて来たその人の声は男性の声であった事からめずらしいな……というのが感想だった、しかし名前は女性の用に感じたのだが……と振り返った俺が見たのは。
女性用ヒーラー装備に身を包んだ男だった………




