それは花ですか?
「もう! 教えてあげたのになんでやらなかったの?」
コーンとの戦闘を終え三人が集合してすぐにカッチェはそう言うのだが。
「いや、いきなり股パンパン叩かれてもこっちはわからんよ?」
俺がそう言うと隣にいるマジェも首を縦に振り俺も同じだと言ってくれている、なにせ俺とマジェはある意味カッチェの意味の伝わらない行動に気を取られ殴られたのだ。
いや、まぁ敵から目を離した俺もわるいんだけどさ……
「というか弱点知ってるなら先に教えてくれよ……」
マジェがそう言うのを聞いて今度は俺が首を縦に振り同意してみる、戦闘前に言ってくれていれば作戦を練る選択肢もあったのだから。
「んで? 結局コーンは股にある付け根? が弱点でいいの?」
カッチェの股パンパンの意味と、コーン相手に接近戦でダガーをぶっさしていた行動から間違いではなさそうだが確認は必要だろうと俺が聞くと。
「そうだよ、コーンはあそこを地面にめり込ませて栄養を吸収してるんだけど、その関係で急所がそこになってるって聞いたよ?」
誰にそんなこと聞いたんだ? という疑問は俺だけではなく、マジェも思ったようで。
「そんなのいつ誰に聞いたんだ? 俺達一緒に行動してたのに俺は知らないぞ?」
俺のイメージでも二人は常に一組で動いているように思っていた、そんなマジェですら知らない事をいつ知ったんだろう。
「町に来て登録したときに受付のきれいな人、ラミアスさんだっけ? あの人が教えてくれたの」
というカッチェの言葉を聞き、俺はあの人ほんとに面倒見いい人なんだな~などと思っていると、カッチェは何かを思い出したように話し出した。
「そういえばラミアスさんが言ってたんだけど、ヒーラーは後ろで味方を回復するのが仕事だけど、あなたはその武器でできるだけ敵を倒しなさいっていってたんだよね、杖じゃなくてダガーの方ね!」
その言葉を聞きあの人が何故そんなことを言ったのかを考えた。
ヒーラーは基本的に前衛職や後衛職でもある程度防具を固めるハンターに対し防具は正直薄っぺらい、そんなヒーラーにダガーで倒せとは近接戦闘をしろということだ、そんなことを言う人なんて普通はいないのだが、あの人が意味もなくそんなことを言うような人ではないだろうと思っている俺はその意味を考えてみるが何もわからない。
情報が少なすぎることからもう少しなにかないかとカッチェ聞いてみる。
「他に何か言ってなかった?もうちょっと情報がほしいな」
俺の言葉を聞き少し考えた後カッチェは口を開き───
「後言ってたのは武器の文字をよく見ておきなさい、って言ってたかな~」
その言葉を聞き、まだ抜き身で手に持っている剣の文字に俺は目を移す。
もともと気にはなっていたが、カマウリさんが何も異常がないと言っていたこもありあまり気にしなくなっていた。
だがラミアスさんがそう言うなら、あの人は何かを知っていて俺達にすべてではないにしても教えようとしてくれているんだろう。
そこまで考えた俺はじっくりと剣に刻まれている文字を見るが、文字は見た所なにも変化はないように見える。
それは他の二人も同じようで、文字を見てみたがわからない、なにもないと首をかしげていた。
かなり気にはなるが……ここでいつまでもこうしてても仕方ない、まだクエストすら終わってはいないんだ、後残りの2匹を最低でも狩りに行かないと。
「わからないし帰ったら聞いてみよう、なにか知っているのかもしれないしな、その為にはまずはクエスト終わらせよう」
俺がそう言うとそれもそうだなと二人は次に行く準備を始め、三人で次なる獲物を探していく。
「それでは作戦会議をはじめます」
次のコーンを狩る為に移動をし、またも一匹でうろついている奴を見つけるとカッチェがそう言い出した。
弱点がわかったとはいえそこを狙うとなると打ち合わせは必要だろう、弱点の場所がこれがまた狙いにくいこともあるが、ヒーラーであるカッチェを無暗に前に出すわけにはいかないということもある、だが一番の理由は年頃の女の子が敵とはいえ下半身をめった刺しにする場面など周囲にいる男二人からすれば恐ろしいことこのうえないのだ。
先ほどの戦闘ではコーンが前に立っていたため俺には見えなかったがマジェには見えていたらしく、前回の戦闘からそれなりに時間が過ぎている今でもカッチェから距離をとり常に守りに入っている。
それほどの場面など出来ることなら見たくはない。
「作戦って言ってもよ、どうする? 歩いてる状態のあいつのあんな所俺狙えねぇぞ?」
「かわいそうで狙えないってこと?」
「違うわ! 確かに男としてあそこを狙うのは抵抗ないわけじゃないけど今は違う!」
男として同情の気持ちからではなく、ハンターとして今の自分には無理だとマジェがカッチェに説明する。
確かに同情はするな、相手がモンスターとはいえ……。
「ん~それならコウに足を斬ってもらって、四つん這いになった所をうつのは?」
確かに足を斬れさえすればマジェも打ちやすくはなるだろうが……
「なぁ、その選択肢以外やっぱないのかな……?」
「他に思いつかないもん、そういうマジェはなにか案あるの??」
そうカッチェに言われては代案がない以上これでいくしかないだろう、やっぱりマジェ嫌なんだな~などと考えているとマジェが吠えた。
「俺の弓はなぁ! モンスターのケツに打ち込むためにあるわけじゃねぇんだ~! 撃つ対象が人じゃないってだけでも救いだけど、俺は!……俺は……心が痛い………」
「あ~はいはい、速く準備してね!」
自分がやるわけではないので俺の気持ちはすこしは楽だがやはりこれはキツイな……マジェにはご愁傷様としか言えない。
さて、作戦は決まった、後はやるだけだ!そう気合を入れ剣を抜き戦闘態勢に入り、あえてマジェの方を見ないようにし俺は走り出した。
剣を構え、膝の裏を斬る様にイメージをし、コーンの足元に滑り込み斬りつけた。
「おらぁ!!」
ザクっとした感触が剣から伝わり、ちゃんと自分の攻撃が届いたのを感じ取り、コーンを見ると予定通りにコーンは四つん這いになるようにして倒れこんでいた、次はマジェの出番だ!とマジェの方を見ると弓を引き絞り狙いを付け、謝りながらマジェは弓矢を放った。
「ごめんなコーン!!!」
謝りながらも放たれた弓矢は弱点であるあの場所に命中する、がモゾモゾと動く様子を見てまだだめか!とマジェは続けて弓矢を放ち続け、息絶えるころにはさながら生け花に花を挿したあとの様な弓矢による花が出来上がっていた。
「俺……がんばったよ……」
そう言葉を零すマジェの肩に手を置きねぎらうことしかできない俺は、下半身に弓矢の花を咲かせたコーンの討伐証明であるツブを回収しているカッチェを見守っていた。
その後俺達は同じ方法でコーンに弓矢で花を咲かせ、討伐が終わり、町に戻る途中で出会ったハニービーにも花を咲かせて無事町に戻った。
その際にもうコーンは狩らないとつぶやいたマジェの声を俺は今後忘れないだろう。




