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屍兎は自由人  作者: 平成兎
第二章 薔薇の王国
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方針決定

「本当にありがとうございました!!!!」

港町に来ていた帝国軍人を名乗る奴等を拘束した俺達は、港町の人達ほぼ全員から頭を下げられていた。

「いや、マジで気にしなくて良いから。

ちゃんとお礼として菓子を貰う予定だし…」

「はい!!沢山食べて下さい!!」

さっき話したおっさん達の家族は、どうやら全員無事らしい。


自分を帝国軍人だって言ってた男は、どうやら非戦闘員に手を出す気は無かったらしい。

あくまで脅しとして住人達を人質に取った。


……多分。


それにしても、色々気になる事が出来たな。


まぁ、後で色々聞くとしよう。


今は、


「おっちゃん!!コレめっちゃ上手い!!

おかわり!!」

「あいよ!!たんと食えよ!!おーい!!

黒蜜団子追加だー!!」


褒美に預かるとしよう……














「なぁ、お姉さん」

「あら、どうしたの?おかわり?」

「うん。それは貰うけど、

そうじゃなくてさ」

「??」

「この街に兵士が駐在してるって聞いたんだけど、ソイツ等はどうしたんだ?」

団子を頬張りながら質問すると、団子のお姉さんは少し言い淀み、こう言う。


「兵士さん達は、その、さっきの男達が来た時に皆……」


そう言って、お姉さんはさっきまで煙の立ってた方向を指差す。


「………灰ト」

「どうしたの?苺大福食べる?」

「後で食べるわ……。

ちょっと、あっちの方見て来るわ」

「ん。分かったー」













「………酷いな…コレは」

お姉さんが言い淀むのも頷ける。

俺は中身はともかく、見た目は女の子だ。

普通の考えを持ってる人なら、こんな物を見せるのを躊躇してしまうだろう。


兵士の死体は、兵士が駐在する為の小さな詰所の崩れた瓦礫の下敷きになっていた。

しかも、その死体の中には、至近距離のショショットガンで頭を撃ち抜かれ、頭が吹っ飛んでる死体もあった。

彼等には同情するが、今注目するのは其処では無い。


注目するべきは彼等の武器だ。


彼等の武器は、剣や槍、遠距離武器も弓矢等で、どう見ても銃器の類は見られない。


幾ら何でもおかしい……。


帝国が如何に賢帝に支えられた世界一の大国とはいえ、この国だって西方では一番の大国だ。

なのに、帝国の兵士は銃器、しかも第二次世界大戦時クラスの銃器を使い、

王国の兵士の飛び道具は弓矢。


…………何かあるな…。


「………酷いなコイツは」

「ッ!?…って、何だよ海斗かよ」


「随分と一方的な戦いだったみたいだな」

「まぁ技術が大体一緒で、銃対弓矢ならこうなるのも無理ないと思うぜ」


「「…………」」


暫く沈黙が流れる。

流石の海斗も、頭が無い死体はショックが大きく、いつもより心なしか口数が少なくなってる。



「……なぁ、海斗」

「………何だ?」



「コレを見たら、他の奴等は心変わりすると思うか?


コイツ等の命は一つだ。

でも、自分達は蘇れる。


だから……代わりに戦う。


そんな風に変わる奴等は居ると思うか?」










「戦う?誰と?」

「………誰だろうな?


だが、誰と戦うにせよ、もうソイツにとってこの世界はゲームじゃなくなってる。


そうなれば、何と戦っても本物の殺し合いになるぞ」


「死なせない為に戦うのにか?」


「実際に戦争やるなら、そんな事省みる時間なんて無くなるだろうな。


ソレに、戦争を一度始めたら、個人の意思は無視される。

それが嫌でも、途中で辞めるなんて無理だ」



「……ゲームと割り切るには少しリアル過ぎるって訳だ」

死体を見ながら、海斗がそう呟く。


「まぁ、そういう事だ。


で、海斗。

そういう奴は居ると思うか?」


「………お前はどう思った?」


「………そうだなぁ。


幾ら連中は本当に死ぬからって、コッチが死んでやる義理は無いと思うぜ?


戦争に巻き込まれるのが真っ平ゴメンなのも事実だ」

「なら、free onlineを辞めるか?」


「ソレも嫌だ。


ようやく見つけた面白い事だ。

ソレを、俺以外の奴が原因で辞めなきゃなんねえなんて、死んでもゴメンだよ。







まだ、サービス開始して半年のゲームだが、

このゲームに命賭けてる奴は幾らでもいる。

俺がその代表みたいなもんだしな。


二つ名持ちの連中は、コッチの世界に居る時間の方がよっぽど長い筈だ。


ソレを奪われるなんて、許せねぇに決まってる」



「なら、どうする?」


「ソレはこれから王国を見てから考えるさ」


海斗は「そうか」と、少し満足気に言うと、街の方に戻る。





……方針は決まった。


王国や帝国にどんな事情があるかは知らねぇが……

連中が俺達を戦争に巻き込む気なら、


連中には俺の我儘に巻き込まれて貰う。

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