天災なんで、
さて……具体的にこのバカ犬をどうやってぶった切るかだが…………
簡単な話だ。
コイツの動きにもっと速く反応すれば良い。
其れに、さっきまで俺は回避の次に攻撃を行っていた。
それじゃ間に合わない。なら………
其処まで考えた所で突きを撃たれる。
俺は体を斜めにし、狼牙の腕の下からに斬りつける。
腕の下は案外脆く、あっさりと血を吹き出す。
「ッッ!?」
「何だ。意外と簡単に切れたな」
腕を切られ、さっきとはまるで違う気に驚きつつ、飛び退く。
此奴………何を簡単にやってのけたか分かってんのか?
まだ受けてほぼ二回目の俺の突きを避けながら切ったんだぞ?
其れはつまり、俺の突きを初見で見切ったって事だ。どういう洞察力してやがる……。
……もっとに慎重に間合いを見計らねえとな。
此奴はさっきまでとは別物だ。
右腕の痛みを噛み締めながらもう一度突きの構えを取る。
御雷は、自分の手を見た後、此方に向き直り脱力した構えを取る。
「どうした?来ないのか?」
先程の無表情とはまた違う雰囲気で、挑発して来る。
「余裕かましやがって、ムカつく野郎だなぁおい?」
「まあ、攻めて来ない相手なら、余裕だな」
「安心しろよ!!ちゃんと攻めっからよぉ!!」
狼牙は、地面を強く踏み、その勢いと共に拳を撃つ。
さっきよりも大振りでなく、速い突きで、反撃する余裕は無い。
なので、回避に専念する。
彼岸の札。
俺の持つ奥の手で、キョンシーのユニークスキル。
俺の額に貼ってある札を剥がす事で発動するスキルで、効果は集中力と反応速度の引き上げ。
集中力が上がった事で、思考速度が上がった。
集中力が上がった事で、思考が冴えてる。
そうなる事で、所謂死に際の走馬灯の様に、世界がスローモーションに見える。
反応速度が上がった事で、そのスローモーションな世界で、より速く正確に動けるようになった。
そして、限界まで引き上げられた集中力で、その場での最適解を導きながら、学習して、強くなっていく。
正直かなり使い勝手が良い。
後で灰トに礼を言わねえとな。
此れなら、今の狼牙にも対応出来る。
八極拳の重厚な拳と、人狼のスペックを活かした速い拳。此の二つの拳が混ざった連撃。
凄まじい拳だが、隙が無いわけじゃない。
避け、逸らし、が精一杯だったのが、やがて、避けながら斬れる位の余裕が出来ていく。
拳を逸らしてそのまま肩に斬り込み、蹴りを避けながら、脚を斬る。
何度か、反撃をした時点で狼牙が距離を取ろうとして来る。
予想通りだ。無論逃がさない。
踏み込んで蹴りの間合いを潰し、交差斬りで狼牙の肩に深く傷を負わす。
「ガァッッ!!」
さっきよりも対応し難い様に、パターンを変えて打ち込んだが、一瞬で対応されてしまう。
凄まじい対応力に戦慄しながら、飛び退く。
が、其れも読まれており追撃され、肩にダメージを負ってしまう。
反撃と腕を振るが、咄嗟に出てしまった大振り等、今の御雷に当たるはずも無く、身を屈めて避けられ、足払いで体勢を崩される。
「うおっ!!」
そのまま倒れる前に地面に手を突いて、そのまま飛び、木の枝に乗る。
更に追撃とばかりに、飛び掛かられる。
「おいおい、容赦ねえな」
飛び退き、後ろの枝に乗り移る。
御雷の追撃で斬れた木の幹が倒れて、御雷が視界から消える。
何処行った?…………
後ろか!!
咄嗟に振り向き不安定な足場から御雷に蹴りを打ち込む。
足場の枝が折れ、御雷ごと、攻撃を打ち合いながら、俺が最初に打撃で作ったクレーターに落ちる。
狼牙の足場が折れた事で、俺と狼牙はクレーターに落ちる。
風踏みは狼牙の後ろに回り込むのに使ったので使えなかった為、普通に落ちた。
「ハァ………ハァ………」
「ゼェ………ゼェ………」
お互い満身創痍だ。
狼牙はさっきの攻防で肩と二の腕からかなり出血してるし、俺も肋骨が砕け散ってる。
「さて、そろそろ」
「あぁ、決着……付けようじゃねぇか!!」
狼牙の叫びと同時に、二人共飛び込む。
狼牙は腕辺りに力を集中させ、技の準備をしている。
俺は、狼牙よりも先に打つ為にある技を選ぶ。
震天雷地がパワー一点特化なら、此の技は速度一点特化。
飛び込み、狼牙が間合いに入った瞬間、技を打ち込む。
『迅雷閃』
凄まじい速度で繰り出される御雷の剣技。
黒剣戦の技は時間が掛かるだろうから使わないだろう。
その読みが的中した俺は…………
その技を敢えて受ける。
御雷の反応速度は規格外だ。
だが、技を打ち切った後は、少し反応が遅れる。
俺は、その一瞬を狙い、技を打ち込む。
『餓狼の爪』
俺が打ち込んだ、全身全霊の技は、
御雷の居合刀で逸らされた。
(やられたッッ!!!)
黒剣戦で使っていた居合刀。
完全に意識の外だった。当然だ。
札が無くなり、別格な強さと気迫に押されていたのだから。
その後、御雷の言葉で正気に戻された。
複数回、劇的に感情を動かした俺は、御雷の思惑通り、冷静な判断を鈍らせていた。
そして、それは此の天災相手には致命的なミスだ。
その代償は大きく、俺は完全に虚を突かれ、刀で攻撃を逸らされ、そのまま…………
俺の首は落ちた。
「俺の勝ちだ」
完全な敗北を喫した俺は、最期にその言葉を聞き、
目を閉じた。




