Which of the following are crazy?
昨日投稿出来てませんでした。
ごめんなさい
夢を見ていた。
不思議な…でも、とても綺麗な夢だった。
母が居て、父が姉を褒めていた。
姉は、もう大学生だからと照れながら、嬉しそうに笑っていた。
自分は御雷と海斗を家に招き入れて、宿題をしていた。
宿題が終われば、二人はゲームを勝手に始め出した。
そんな、良くある日常の風景。
夢くらい、幸せな物を見ても良いかな。
所詮、泡沫の夢なのだから。
「ハハハハハハハハ!!!!!!
何だぁ?こりゃあ?
何の祭りだぁ!?おい!!あの野郎俺を差し置いてこんな面白レェ祭りに参加してやがったのか!?
おい!!御雷ィ!!!テメェとやれば良いのかぁ!!?」
「…………出て来たな。大物が」
解離性同一性障害。別名多重人格。
そう。多重人格なのだ。二重人格ではなく。
さっき出てたのが、記憶を乖離させた人格なら、此奴は………恐らく、感情を乖離させた人格だろう。
やれやれ……何があったら此処まで人格変わるんだろうねぇ?
「無視してんじゃぁ………ねぇ!」
「ッッッ!!!」
目の前に蹴りが飛んで来る。
咄嗟に右に避けて逃れる。
「ボーッとしてねぇで、とっとと始めようぜ!!!もう待ちきれねぇんだよぉ!!!」
恍惚とした笑みを浮かべ、此方に突撃してくる。
その突撃して来る傷だらけの上半身に、毛が生え始める。
顔にも少しづつ毛を纏い、異形の姿に変わっていく。
やがて、全身を毛で覆われた、人狼が俺に爪を振り落とす。
先程よりも段違いに速い一撃を、間一髪で避け、拳が地面にめり込みクレーターを作る。
「うおっ!?」
拳を打ち込んだ本人も、想像以上の威力に驚いていた。
だが、直ぐに転進すると、此方に左手で二撃目を打ち込む。
ドクロとハクで逸らし、そのまま腹に斬り込む。
「へぇ、やるじゃねぇか!!!」
「…………ッ」
予想通りだが、右肘と右膝で受けられる。
凶暴性は上がったが、格闘術を忘れたわけじゃねぇってわけだ。
「吹っ飛べぇ!!!」
叫び声と共に、左のフックが飛んで来る。
凄まじい速度故に、避けることも出来ずに脇腹に直撃する。
そのまま吹っ飛ばされ、木を折りながら闘技場の壁に激突する。
あ〜、痛ってえなぁクソッタレ。
アバラ何本か逝ったぞおい。
……駄目だな。コレ。
身体のスペックが違い過ぎる。
力、速度、防御。
そういった単純なスペック差。
人狼の力を完全に解放した状態の彼奴のステータスは、間違いなく現プレイヤーの中で一位だろう。
なら、どうするか?
呪紋で、攻撃と速度を上げる。
ダメだ。それでは埋めきれねで程差が開いてる。
海斗の援護。
タマモとやり合ってる以上援護は期待出来ないな。
ステータスでは絶対に追い付けず、援軍は無理と考えるべき、アバラを何本か折られ、ダメージを負っていて、向こうは無傷。
中々に絶望的な状況だが、打開策が無いわけじゃない。
まあ、俺も使った事がない手だから、正直賭けになるんだが…………
やらなきゃ負けるんだし、やるだけやってみるか………。
そう思い、俺は頭に付いている札を取った。
『彼岸の札』
おお、あの野郎派手に吹っ飛びやがったなー。
マジでどうなってんだ?
確かゲームの世界なんだったか?
最近のゲームは凄いねぇ。
にしても、あの野郎、骨も完全に折れたてたのに血が全く出てなかったな。
…………まあ、良いや。
俺がやる事は一つ。
全部、ぶっ壊す事だ。
「…………ハハハハッ」
乾いた笑いが漏れる。
こうやって確認しないと、直ぐに暖かい日々に逃げようとしてしちまう、余りにも脆い自分のココロに憎悪を覚える。
「そんな日々に、俺みたいなのは、居ちゃいけねぇんだよ………」
「くだらねぇな」
「ッッ!!」
下を向いていた顔を声のした方に向ける。
其処には、顔の札が取れて、頰に彼岸花が浮かび上がった御雷が居た。
木の枝の上に立ち、狼牙を見下ろす。
「なるほどな。良く分かったよ。
お前の原動力は、
解離性同一性障害を発症する程の自分への憎悪。
大元の原因は自分の力不足で姉を追い詰めちまった事への負い目か?」
「お前…何で知って!!??」
「テメェの姉から聞いたんだよ」
「!!……………そうかよ……。
彼奴から…………」
「そんで?俺が今言ったのは正解か?」
「ッ!!…………あぁそうだよ!!!
彼奴の、姉さんの笑顔を奪っちまった俺は!!その償いをしなきゃならねぇんだよ!!!じゃなきゃ、俺は自分を許せねぇ!!!!」
「…………タマモはそんな事、望んじゃいねえだろ」
「んなこた分かってんだよ!!!!其れでも俺は、ケジメをつけなきゃ」
「タマモを泣かせてでもか?」
「今……なんて」
「何だ?知らなかったのか?
昨日俺の所に来たんだよ。
お前を助けてくれって……泣きながらな」
「何言って……俺なんかの為に、彼奴が泣いてちゃ」
「テメェがそう思ってても、彼奴がテメェの為に泣いてんのは事実だろうが。
それに、彼奴が泣いてんのに、テメェは何でまだ同じ事を繰り返そうとしてんだ?」
「ッッ!!」
「何でテメェの都合で、彼奴が苦しめられてるんだ?」
「……アアアアアアアァァァァァァ!!!!」
狼牙は胸を抑え、頭を掻き毟り始める。
姉が苦しむのを唯見てた自分が許せなくて、
そんな自分に価値なんてあるわけ無い。それどころか存在する事すら、許したくないと思った。
でも、他ならぬ姉自身がそんな自分程度が壊れていく事に涙を流した。
結果、矛盾に気づき始めた理性と、尚自分を許せぬ憎悪が、今狼牙の中で激しく争い合ってる。
此処まで行けば狼牙を正気に戻すまで後一歩だ。
矛盾に気づいた狼牙は、それでも自分の中にある憎悪を捨て切れない。
だが、その憎悪をぶつける対象であった自分を傷つければ姉がまた傷つく事になる。
ならどうすれば良いのか?
その行き場の無くなった憎悪を発散させてやれば良い。
要するに、
暴れてスッキリさせてやれば良い。
『双雷閃』
「ッッ!!」
俺の不意打ちを、狼牙は反射で避ける。
状況が理解出来ないとでも言いたげな目でコッチを見て来るアホに、刃を向ける。
「来いよバカ犬。テメェのそのクソ真面目な憎悪ごと、俺がぶった切ってやるよ」