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屍兎は自由人  作者: 平成兎
第1章 屍兎
39/75

Usually in the madness, madness is usually

訳:普通は狂気で狂気は普通。

狼牙と初めて会ったのは高一の入学式の時だったかな?


誰とでも仲良くなれる様に、という小学生並みの理由で自由席で、適当に座ったら隣に2メートルはあるクソデカイ奴が座って来た。


第一印象は、デッカ……だ。


当然だ。

誰だって身長45センチメートルも差があったらそう思う。


俺がそんな事を考えてると、狼牙の方から話し掛けて来た。


「俺は金宮 狼牙だ」

何の前振りやもなく名前を名乗られた。


何か凄い事を暴露された訳でも無いのに、それを聞いて周りがざわつき始めた。


まあ、確かに2メートルの大男が、端的に名前だけ教えて来たら誰だって混乱するよな。


そう思っていたが、どうやら違うようだ。

「金宮ってあの」「すげー本物かな?」「本物ならスゲーよな……」


どうやら此奴は有名人らしい。

そう思い、


「有名人?」


と、聞いた。すると、

「姉がな。俺はその姉のボディーガードだ」

「ふむ。つまり有名人の弟?」

「聞かれた事が無いが、まあそうなるな」

「ふーん……」


会話終了。


俺も別に興味があった訳でも無いし、後で調べてみるか。

ぐらいのものだった。


其の後、何だかんだ色んな行事で一緒になったり、中学の頃からの友人の海斗が彼奴と知り合いだった(海斗の母親は社長なので、金宮の主催パーティに招待された時に海斗も連れて行っており、その時海斗は護衛をしていた狼牙に会ったんだそうだ)事で、更に縁が深まって仲良くなった。


と、そんな感じなので普段の態度から卑屈だな。位にしか思っていなかった俺は、何故卑屈なのかも其処まで詮索しなかった。


幾ら親友といえど、家庭事情にまで踏み込むのは余程の事が無い限り駄目だと思った。


其れが間違ってるのか合ってたのか、今の此奴を見て、より分からなくなった。


「どうした?とっととやるぞ」

一見、普通に見える。

いや、普通なんだ。


そう、普通過ぎる。


まるで何事も無かったかの様に、普通だ。

だからこそ、俺はコイツにこう言った。

「お前は誰だ?」










「は?お前何言ってんだ?遂にボケたか?」


…………

「聞こえなかったか?お前は誰だ?って聞いたんだ」

威圧を含んだ声でそう言う。


その声を聞いた金宮 狼牙を名乗るソイツは混乱している。

「どうしたんだよ急に………其れに、戦ったほうが良いんじゃないのか?」


「………お前とはやらねぇよ。

俺は金宮 狼牙と戦いに来たんだから」

「いやだから、俺が金宮 狼牙だよ!

お前何か変だぞ!?」

「変なのはお前だろ」

「俺はいつも通りだよ!いつも通りのお前の親友の」


「狼牙は、自分で俺の親友だなんて絶対に言わねえんだよ。

だから、聞いたんだよ。お前は誰だ?って。

テメェが何をトチ狂ってそうなったのかは知らねえが、壊れてねぇでとっとと元に戻れ。

テメェの姉貴が心配してんだよ」











何を言ってるんだ?御雷の奴。俺が金宮 狼牙じゃない?いや、俺は金宮 狼牙だろ?

じゃないってんなら、












イッタイオレハダレナンダ?












アイツは、さっきからずっとうわごとの様に

「オレハイツモドオリ」と繰り返している。


此れである程度ハッキリしたな。



狼牙は解離性同一性障害だ。


解離性同一性障害。別称多重人格、DID等。


解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害の事。


解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものの事だ。








今の狼牙は正に其れだ。

別の人格。この場合は記憶が乖離して成長し、全く別の記憶によって形成された人格が彼奴。

つまり、彼奴は狼牙が解離性同一性障害になる様な現実が一切起こっていない記憶を持った狼牙。

タマモの話から考えるに、狼牙は家庭の事情で此処まで追い詰められたって事になる。

だから彼奴は家族関係についての記憶を改竄しているんだろうな。

自分は名家の出身ではなく、普通の家庭の出身。とか、そんな所だろう。

だから、普段の態度から考えられない位直ぐに取り乱す。

だから、学校とかで此奴が出て来ても誰も気づかないって訳だ。

何せ普通だからな。


そんで今、此奴は本来の記憶との矛盾の様な物と戦ってる。

解離性同一性障害を発症するに至った記憶を覚えている人格と、自衛の為に記憶を消した人格が戦ってるって訳だ。


この戦いが暫く続いた後、普通の解離性同一性障害なら、精神が壊れてまた別の人格が発生するだろう。

そう、普通なら。

だが、金宮 狼牙という人間が、そんなに単純じゃないのは、今までの付き合いと、タマモの話で分かってる。



さて、そろそろ………かな。




解離性同一性障害の症例は様々だ。

ただ、此の場合重要なのは解離性同一性障害の別名は、二重人格ではなく、多重人格。

という事だ。


もう分かっただろう。






狼牙が頭を抑えるのを辞め、腕の力を抜いて宙ぶらりんにし、空を見上げる。無表情のまま。

「…………………」


あぁ、やだやだ。

一体何があったら、此処までの化け物連れて来れるのかねぇ?

今のコレを見て、俺は狼牙の正気を疑う。


いや、分かってた事だった。

此奴は元から、

















「ハ、ハハ……………

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」







正気なんかじゃなかったんだから。


寝てたら地震が来てベットから落とされた男_:(´ཀ`」 ∠):

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