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屍兎は自由人  作者: 平成兎
第1章 屍兎
27/75

サボらない兎は月まで跳ねた。

オノレ、黄砂。許さん黄砂。

さて、どうしたものか。


ハクが居らず、ドクロのみで今の白盾の防御を突破するのはキツイだろうな。


あの白修羅って技は多分反応速度と、思考速度を上げる技だ。


それを踏まえた上で間合いを計る。

だが、其れだけじゃどうしても決定打に欠けるんだよなぁ。


しょうがない………アレ使うか………。

疲れるから嫌なんだけどなぁ…。


『呪紋』









『おーーーーっと!!!何と此処で月兎、謎の黒い文字の様なものを体に纏い始めました!!!

あれは一体何なのかーーーー!!!??』

「ありゃ、アレ使っちゃうんだモフ君」

「何だ…あのスキルは?」

魔狼は、月兎を見ながら灰兎に聞く。

「あのスキルはねぇ。呪紋って言って、体力を半分にして、防御力を五分の四にする代わりに」

灰兎が其処まで言ったところで………

白盾が吹き飛んだ。


「力と素早さを二倍にするんだよ」












「ッッッッ!!!!!???」

月兎の白い手足に、黒い文字が纏い、目は黒く、瞳は赤くなり瞳孔は針の様になる。

其処まで見えた瞬間、吹き飛ばされ、壁に激突する。

斬り飛ばされなかったのは、警戒を解かなかったからだ。

もし、後少しでも警戒を怠っていたら首から上が斬り飛ばされていたことだろう。

まだ、盾を持っている右手が震えている。


バケモノめ……。

瓦礫を退かしながら、月兎が居る筈の場所に目を向ける。


立ち上がり、壁に背中を守らせながら盾を突き出し、剣を構えながら月兎を観る。


月兎は俺がさっき居た位置まで歩いて行き、奪った白い刀を回収していた。

こっちが来ない事はお見通しってか。


……いよいよやばいな。


刀を回収された。

一刀であの威力だ。二刀同時に来たらどれ程の威力を発揮する?


分からないが、避けるのは無理だろうな。

となると当然受けるしかないわけだが、どう受ける?


盾をうまく逸らしてダメージを軽減させるか?

さっきは不意打ちだったが、一度見た以上、受け切れる可能性は無くはない。

だが……


其処まで思考した時点で、月兎からの殺る気が増幅する。


考えてる暇は無い……か。

後ろからは来れないんだ。残りのアイツが来れる範囲全部対応して、捌き切ってやるよ。

思考を遮断し、敵だけを観る。



こっちの準備が完了したと同時に、月兎は踏み出した。







場内には、静寂が支配する。

皆、呼吸を忘れその闘いを見守っていた。


月兎が縦横無尽に跳び回り、二刀による斬撃と投剣の投擲を繰り返し、白盾が盾と剣で其れを受ける。

白盾の鎧には、少しづつ、しかし確実に傷が付いてきていた。


白盾と月兎のスタミナには差があるのか、少しづつ白盾の息が上がってきている。


やがて、白盾の鎧は傷だらけになった。

誰もが心中で白盾を応援しつつ、月兎の今の姿に畏怖を覚える。


人外の様な姿で、口を三日月の様にして破顔いながら、戦う姿は恐怖の対象だった。

主人公なのに………。


月兎は一度距離を取り、刀を鞘に収め、抜刀の構えを取る。


(あの技か……)

白盾は自分が一度受けた技を思い出し、盾を構える。

鎧と体には大量の傷が付いている。


しかし、彼を守り続けた盾は傷一つ無く、煌々と輝いていた。


(頼むぜ……相棒!!)

盾に気合いを込め、月兎を観る。


両者が睨み合い、場内を先程よりも緊迫した空気が包み込む。


時間にして見れば数秒。

しかし、その場に居た者からすれば、永遠にも思える時間。

其れが過ぎ………



月兎が動いた。



『雷道』


赫と白の雷鳴が迸り、白盾の盾に激突する。


その瞬間、白盾が勝負に出た。

一部の強者のみには見えたその瞬間。


黒剣も、隠者も、魔狼も、灰兎も、蒼銀も、妖狐も、炎精も、


そして、何より月兎も、

その場に居た二つ名持ち全員が、驚愕する。


(((白盾が盾を捨てた!!??)))


其れは、白盾渾身の策。

彼の象徴であり、相棒である盾を捨てる。


それは、白盾の防御を、即ち盾を破る事に躍起になっていた月兎の意表を突き、喉元を搔っ食らう為の策。


盾に二刀をぶつけていた月兎は、其の儘勢いを止められず、動きを止めようと脚を止める。そして、白盾は左に回り込み、技を放つ。


「『ホワイトセイバー』ー!!!!!」


彼の放つ渾身のホワイトセイバーの光が場内を包み込む。











『お、おーーーーっと!!!此れは白盾、見事に月兎の意表を突いたーーー!!!

分からない方に説明致しますと、月兎が先程の抜刀術にて、刀を盾にぶつけたその瞬間、彼はナント、その盾を捨てたのです!!!!

盾の攻略に躍起になってた月兎は見事に不意を突かれて、白盾に渾身の必殺技を首元に撃たれてしまいました!!!

果たして勝敗の行方は!!!??』


(光の奴、やるじゃねえか!!!)

自分のライバルが見事にプレイヤー最強の月兎に意表を突き、渾身の必殺技を放った事に、黒剣は歓喜していた。


其れでこそ俺のライバル、と。


そして、観客は隠者の説明にて漸く状況を理解し光の中にある結果を、固唾を飲んで見守っていた。


そして、白盾の全身全霊の剣技によって発生した光が消える。










「ッッ!!!

おいおい。そんなのありかよ……」


白盾がそんな言葉を吐く。彼自身も、月兎の斬撃を捌き続けた疲労と、土壇場で思いついた策を月兎相手にやるという荒業をこなした事による緊張と興奮により、感覚を殆ど感じなくなっており、

自分の必殺技を放った結果すらまだ分かっていなかった。


そして、結果を見て驚愕する事になる。

しかしそれも無理のない事と言わざるを得ない。

何故なら、彼の渾身の必殺技は……。









月兎の牙によって、止められていたのだから。


『キョンシーファング』










キョンシー。

別称、殭屍

 硬直した死体。

 符呪師や道士(この場合仙人の事)は、符呪や儀式により埋葬されていない死体に魄を入れることによってキョンシーを作ることができるとされる。


月兎の種族、キョンシーもこの妖怪の話を聞いた雪原 灰トが考えた種族である。


このキョンシーを作る儀式は、上手い道士がやれば、生まれたキョンシーは鬼神の如き力を得ると言われており、

月兎も、素早さが全種族の中で最速を誇る獣人と同等レベルの速さを誇り、力に至っては力特化の鬼人族を超えるという、スペックを誇る。


加えて痛覚が無く、疲れを殆ど覚えない。 白盾との戦いにて、縦横無尽に動き回っているにも関わらず、一切息が上がっていなかったのも其れが理由である。


しかし、魔法を一切使えず、防御力は低く、体力も少ないという弱点がある。

魔法を一切使えないという事は、実は相当不利な事である。


前衛職の者達は、追撃用の初歩の攻撃魔法と、身体強化魔法を覚える。

身体強化を使えば、鬼人も、獣人も、キョンシーより怪力になり、素早くなる。


つまり、総合スペックは言う程高くはないし、遠距離が使えないという、欠点すらある。


その為月兎は、スキル《鉄蹴・縮地・跳躍・風踏み》を覚える事で素早さをより強化し、

ユニーク職業、空撃剣士になり空中の火力を上げ、身軽故に頭上を取りやすいという利点を最大限発揮させ

、投剣作製で、遠距離攻撃の穴を埋めた。


そして、月兎はリアルの方でも武術、剣術をやっており、相手の気を読み取るという戦闘に於いて非常に有利な技術を身につけていた。其れを実戦で鍛え、気配感知というスキルを身につけた。


二つ名同士の剣技と剣技がぶつかり合い、閃光が発生したにも関わらず、白盾を正確に捉え斬撃を放ったのはこの技術である。


そしてキョンシーには、特殊な能力が四つ程備わっていた。


一つ目、ユニークスキル、『見極めの眼』

相手の剣技、魔法の発動を見抜く技。

ユニークスキルは、レベルは表示されないが

練度というものが存在する。

見極めの眼は、練度を上げれば、より事前に察知できる。

ただし、即発動の物は練度を上げても意味は無い。

一見地味だが、相手の技を事前に察知出来るというのは、戦闘を非常に有利に進められる。

唯、地味である。


二つ目は呪紋。

中国では、死体は長い時間が経過すると、悪霊になって人に害を与えるという俗信がある。

呪紋は、此れを元ネタにしたもので、発動する事で、己の身体すら犠牲にして、相手に対する攻撃を強力にする。

(HPと防御力が下がる代わりに、攻撃力と、素早さを上げる)

練度を上げると、その怨念を武器に込めて、より呪いを強力に出来る。

(練度を上げると、武器を強力に出来、より攻撃力が上がる。)

非常に強力だが、防御力が下がり、疲れるから余り使わない。

月兎の奥の手の一つ。

(疲れる原因は怨念を取り込み、負の感情の奔流に襲われる為であり、常人なら発狂する。

疲れるで済んでる時点で化け物)


そして、三つ目が牙。

通称(愛称?)キョンシーファング

噛む事で、余程強力な技以外は、受け切る事が出来るキョンシーのみが覚える技。

但し、タイミング良く噛まないと失敗する。

白盾渾身のホワイトセイバーを受けた技であり、月兎の奥の手の一つ。


四つ目は、月兎はまだ使ってないので紹介は控えておこう。









「ほまえ、すへぇよ。まはかほのわはをふはわふぁれるほはほもわなかったぜ(お前、凄えよ。まさかこの技を使わされるとは思わなかったぜ)」


俺の剣を噛みながら、月兎が賞賛の言葉を送って来る。

何言ってるかいまいち分からんかったが。


「けど……」

月兎の蹴りにより、腕に凄まじい衝撃が走り、剣を放してしまう。


月兎は、俺の剣を捨てて、右の刀を振り上げ………


「俺の勝ちだ」


振り落とす。

走馬灯が流れ、景色がスローモーションになる。


嗚呼、負けたなぁ。悔しいなぁ。


なんて、感傷に浸ろうとする脳を無視し、


俺は叫ぶ。

「覚えとけ!!!!

絶対、借りは返すぞ!!!!」


其処まで叫び、俺は肩から腰にかけて斬られる。

暗転していく、視界の中で………














兎が破顔っているのが見えた。

















ヤベェ、もう四時じゃん。

寝よ(^^)

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