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僕はメールの用件を難しい顔でじっと見ていた。
いつもくるそのメールは、助けを求めているような文面。
机で確認したのちに、ため息一つついた。
「やれやれ、かごの中のお嬢様からのお呼びだな」
「それは、誰だ?」
「僕の本当の妹だ、離れ離れで暮らしている」
さっき、僕の携帯電話にかかってきたのが美野里からだった。美野里とは、僕の一個下の妹。
僕の本当の家族は父と母、僕と美野里の四人。今でもそうだと思っていた。
だけど、母の浮気により五年前に離婚。普通に幸せな家族は、一人の身勝手な行為によってバラバラになった。
兄妹も例外無く分けられて、母に預けられた僕と、父に預けられた美野里。
母はそのあと浮気相手のところに移り住み、父はシングルファザーとして美野里と二人で生活をしていた。
そして美野里は、離婚して間もなく謎の病気にかかってしまった。
「美野里は孤独だ。父さんは、会社がとても忙しくて美野里とほとんど一緒にいられない。
離婚してから、美野里もおかしくなった。謎の不治の病にかかった美野里は、ずっと病室のベッドの上。
まるで美野里はかごの中の小鳥だ。だから美野里が、一番孤独なんだよ」
「そうか、美野里が孤独なのだな」
ハシブトの目が、一瞬赤く光った気がした。
「ああ、そうだよ。それもこれも離婚のせいだよ、浮気のせい、母親がみんな悪いんだ」
「ふむ、ではわしの『カラスの恩返し』といこうではないか」
「はあ?なんだよ、それ?」
「ぬしは、美野里の孤独を癒してほしいのだろう」
「でも、それができるのが家族ってものだよ。僕と美野里は、本当に血が繋がっている兄妹だから」
机の上に飾ってある、美野里と僕が写った写真を眺めた。
小学生時代の美野里は、ツインテールでかわいらしく微笑んでいた。
同じ父、同じ母から生まれた僕と美野里。笑顔を見るだけで、僕は切なくなっていた。
「こう見えてもわしは、『孤独を癒すカラス』なのだ。この不便な人の体も、そのためにあるのだ。
それがわしの使命であり、役目であるのだぞ」
「『孤独を癒すカラス』って、なんだよ。カラスって、どっちかっていうとずる賢いイメージだろ」
「決めたぞ、わしは美野里という者に会いにいく」
やる気を見せたハシブトに、ただ唖然とするしかない。
「美野里は、正直やめておいた方がいい。アイツは特別だ。
大体中学に入ってから美野里は、随分人見知りが激しくなったし。僕も正直よくわからないところがある」
「大丈夫だ、わしに任せておけ。とにかくわしもついてゆくぞ、わしに彼女の孤独を癒させてくれ」
僕に顔を向けたハシブトは、とても愛らしかった。
彼女の目を見ると、僕は安心できて不思議と癒された。
そして見せたつぶらな瞳は、カラスのあの瞳とかぶった。
なんだか、いろいろ考えた心配はどうでもいいと思えたから。
「ああ、わかったよ。それじゃあ行くから、すぐに支度して」
いつの間にか僕は、ハシブトに対して一つ返事で返していた。
それに対してハシブトは、満面の笑顔を見せていた。




