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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
一話;傷だらけのハシブトカラス
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6/60

僕はメールの用件を難しい顔でじっと見ていた。

いつもくるそのメールは、助けを求めているような文面。

机で確認したのちに、ため息一つついた。


「やれやれ、かごの中のお嬢様からのお呼びだな」

「それは、誰だ?」

「僕の本当の妹だ、離れ離れで暮らしている」


さっき、僕の携帯電話にかかってきたのが美野里からだった。美野里とは、僕の一個下の妹。

僕の本当の家族は父と母、僕と美野里の四人。今でもそうだと思っていた。


だけど、母の浮気により五年前に離婚。普通に幸せな家族は、一人の身勝手な行為によってバラバラになった。

兄妹も例外無く分けられて、母に預けられた僕と、父に預けられた美野里。

母はそのあと浮気相手のところに移り住み、父はシングルファザーとして美野里と二人で生活をしていた。

そして美野里は、離婚して間もなく謎の病気にかかってしまった。


「美野里は孤独だ。父さんは、会社がとても忙しくて美野里とほとんど一緒にいられない。

離婚してから、美野里もおかしくなった。謎の不治の病にかかった美野里は、ずっと病室のベッドの上。

まるで美野里はかごの中の小鳥だ。だから美野里が、一番孤独なんだよ」

「そうか、美野里が孤独なのだな」

ハシブトの目が、一瞬赤く光った気がした。


「ああ、そうだよ。それもこれも離婚のせいだよ、浮気のせい、母親がみんな悪いんだ」

「ふむ、ではわしの『カラスの恩返し』といこうではないか」

「はあ?なんだよ、それ?」

「ぬしは、美野里の孤独を癒してほしいのだろう」

「でも、それができるのが家族ってものだよ。僕と美野里は、本当に血が繋がっている兄妹だから」


机の上に飾ってある、美野里と僕が写った写真を眺めた。

小学生時代の美野里は、ツインテールでかわいらしく微笑んでいた。

同じ父、同じ母から生まれた僕と美野里。笑顔を見るだけで、僕は切なくなっていた。


「こう見えてもわしは、『孤独を癒すカラス』なのだ。この不便な人の体も、そのためにあるのだ。

それがわしの使命であり、役目であるのだぞ」

「『孤独を癒すカラス』って、なんだよ。カラスって、どっちかっていうとずる賢いイメージだろ」

「決めたぞ、わしは美野里という者に会いにいく」

やる気を見せたハシブトに、ただ唖然とするしかない。


「美野里は、正直やめておいた方がいい。アイツは特別だ。

大体中学に入ってから美野里は、随分人見知りが激しくなったし。僕も正直よくわからないところがある」

「大丈夫だ、わしに任せておけ。とにかくわしもついてゆくぞ、わしに彼女の孤独を癒させてくれ」


僕に顔を向けたハシブトは、とても愛らしかった。

彼女の目を見ると、僕は安心できて不思議と癒された。

そして見せたつぶらな瞳は、カラスのあの瞳とかぶった。

なんだか、いろいろ考えた心配はどうでもいいと思えたから。


「ああ、わかったよ。それじゃあ行くから、すぐに支度して」

いつの間にか僕は、ハシブトに対して一つ返事で返していた。

それに対してハシブトは、満面の笑顔を見せていた。


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