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この学校のスキー合宿は、五人一組の班ごとに部屋が割り振られていた。
ペンションが男子女子で分かれるので、僕は安志と一緒に女子の部屋に今は来ていた。
「扇君、安志君、こっちにいるわ」
クラスの女子の一人が、僕に声をかけてきた。
女子専用のペンションで部屋には、もちろん初めての体験だ。
隣の安志は、よく女子の部屋に招かれるみたいだが。
今は自由時間、僕は心配そうにハシブトのところに来ていた。
もちろん、部屋の女子たちは僕に対してあまりいい目で見てはいない。
「大丈夫ですか、ハシブトさん?」
「おお、喜久。それに安志も来てくれたのだな」
布団で寒そうにくるまっていたハシブトが、僕と安志を見るなり布団から少しだけ顔を出した。
ハシブトの布団の中には、使い捨てカイロをいくつも入れていた。
暖房はきいているのだが、カラスは寒さに弱い。
ペンションはいる前には、顔色が真っ白で今にも死にそうだったし。
当然、スキーをすることはできなかったわけだ。
「ハシブトさん、大丈夫ですか?」
「安志、うむ」
「これ、持ってきました」
そういって、安志が持ってきたのがビニールの包み。
出てきたのは、なぜか『肉まん』だった。
「ご苦労だった、安志」
「暖かいうちにどうぞ。あ、皆さんのもあります」
こういうところは、マメな安志だ。少し見習わないとな。
「えー、ホント?」
「さっすが、気が利く小椋君」
女子たちは、安志が持ってきたビニール袋から肉まんの差し入れを嬉しそうに持っていく。
爽やかな笑顔の安志は、女子たちに囲まれていた。安志は女子に相当人気あるからな。
「うまいぞ、ありがとうな」
「いえ、いいですよ。俺は女子の喜ぶ顔が好きだから」
キャーキャーと、女子の視線と声を浴びた安志。
女子受けのいい安志がいないと、僕もここにはたどり着けないから追求するのをやめておこう。
「ハシブト、一応僕からも……」
「どうした、喜久?」
肉まんを持ったハシブトは、僕の方をちらりと見てきた。
僕は売店で買った紙袋を、おそるおそるハシブトに差し出した。
「これは?」
「プレゼントだ、せっかくスキーしに来たんだから、ここに来た記念。食べ物じゃないけど」
「そうか」そういいながらハシブトは、紙袋を開けると嬉しそうな顔を見せた。
前に生徒会長の家に呼ばれたときと同じ、とてもうれしそうな目を輝かせた顔をハシブトは見せた。
「これは……輝いているぞ」
「うん、ハシブトにはこれがいいかなって」
それは、スキーしている人が金色の枠になった安価なキーホルダー。
金ぴかに光るキーホルダーを、嬉しそうにハシブトは見ていた。
「こんなに、金ぴかに輝いているとは……」
「ハシブトは光り輝いているもの、大好きだからな」
「無論だ」
いつの間にか布団から上半身も出して、嬉しそうにキーホルダーを見ていた。
安志は、相変わらず女子と軽快にトークしていた。
「これはいいぞ、喜久。本当に輝いているな」
「ああ、金ぴかのスキーだ」
「輝くというのはいいものだ。輝いている時間を、人は青春というらしいな」
「なんだい、ハシブト?」時折しおらしいハシブトの顔が、僕には引っかかった。
「喜久よ、ぬしはいつまでも輝いていられるな?」
「あ、ああ。よく分からないけれど、たぶん僕は生まれつき輝いていないような気がするんだ」
「そんなことはない、輝いている。こうしてわしの前にいるからな」
「変なの?寒さでやられたか?」
「かもしれぬ、わしはもうしばらく休もう。ありがとな、喜久」
やはりハシブトの顔は、その時は白かった。
だけど金ぴかのキーホルダーを、嬉しそうに何度も見ていた。




