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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
三話:白い海のオオハクチョウ
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この学校のスキー合宿は、五人一組の班ごとに部屋が割り振られていた。

ペンションが男子女子で分かれるので、僕は安志と一緒に女子の部屋に今は来ていた。


「扇君、安志君、こっちにいるわ」

クラスの女子の一人が、僕に声をかけてきた。

女子専用のペンションで部屋には、もちろん初めての体験だ。

隣の安志は、よく女子の部屋に招かれるみたいだが。


今は自由時間、僕は心配そうにハシブトのところに来ていた。

もちろん、部屋の女子たちは僕に対してあまりいい目で見てはいない。


「大丈夫ですか、ハシブトさん?」

「おお、喜久。それに安志も来てくれたのだな」

布団で寒そうにくるまっていたハシブトが、僕と安志を見るなり布団から少しだけ顔を出した。


ハシブトの布団の中には、使い捨てカイロをいくつも入れていた。

暖房はきいているのだが、カラスは寒さに弱い。

ペンションはいる前には、顔色が真っ白で今にも死にそうだったし。

当然、スキーをすることはできなかったわけだ。


「ハシブトさん、大丈夫ですか?」

「安志、うむ」

「これ、持ってきました」

そういって、安志が持ってきたのがビニールの包み。

出てきたのは、なぜか『肉まん』だった。


「ご苦労だった、安志」

「暖かいうちにどうぞ。あ、皆さんのもあります」

こういうところは、マメな安志だ。少し見習わないとな。


「えー、ホント?」

「さっすが、気が利く小椋君」

女子たちは、安志が持ってきたビニール袋から肉まんの差し入れを嬉しそうに持っていく。

爽やかな笑顔の安志は、女子たちに囲まれていた。安志は女子に相当人気あるからな。


「うまいぞ、ありがとうな」

「いえ、いいですよ。俺は女子の喜ぶ顔が好きだから」

キャーキャーと、女子の視線と声を浴びた安志。

女子受けのいい安志がいないと、僕もここにはたどり着けないから追求するのをやめておこう。


「ハシブト、一応僕からも……」

「どうした、喜久?」

肉まんを持ったハシブトは、僕の方をちらりと見てきた。

僕は売店で買った紙袋を、おそるおそるハシブトに差し出した。


「これは?」

「プレゼントだ、せっかくスキーしに来たんだから、ここに来た記念。食べ物じゃないけど」

「そうか」そういいながらハシブトは、紙袋を開けると嬉しそうな顔を見せた。

前に生徒会長の家に呼ばれたときと同じ、とてもうれしそうな目を輝かせた顔をハシブトは見せた。


「これは……輝いているぞ」

「うん、ハシブトにはこれがいいかなって」

それは、スキーしている人が金色の枠になった安価なキーホルダー。

金ぴかに光るキーホルダーを、嬉しそうにハシブトは見ていた。


「こんなに、金ぴかに輝いているとは……」

「ハシブトは光り輝いているもの、大好きだからな」

「無論だ」

いつの間にか布団から上半身も出して、嬉しそうにキーホルダーを見ていた。

安志は、相変わらず女子と軽快にトークしていた。


「これはいいぞ、喜久。本当に輝いているな」

「ああ、金ぴかのスキーだ」

「輝くというのはいいものだ。輝いている時間を、人は青春というらしいな」

「なんだい、ハシブト?」時折しおらしいハシブトの顔が、僕には引っかかった。


「喜久よ、ぬしはいつまでも輝いていられるな?」

「あ、ああ。よく分からないけれど、たぶん僕は生まれつき輝いていないような気がするんだ」

「そんなことはない、輝いている。こうしてわしの前にいるからな」

「変なの?寒さでやられたか?」

「かもしれぬ、わしはもうしばらく休もう。ありがとな、喜久」

やはりハシブトの顔は、その時は白かった。

だけど金ぴかのキーホルダーを、嬉しそうに何度も見ていた。


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