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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
三話:白い海のオオハクチョウ
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週末の日曜日、来週に迫ったスキー合宿のためにスポーツ用品店に来ていた。

ここは、学校指定のスポーツ店でいろいろ割引が聞く。

僕の母親はハシブトのスキーを了承してくれたな、自由参加なのに。

合宿代、費用も高いのによく出してくれるよ。ただの居候だけど。

それとも、僕に離婚して罪悪感の気持ちがあるのだと思うが、何でも受け入れる母親の性格が羨ましくもあった。


ジャンパーにズボン姿の僕はハシブトと一緒に、スキー合宿のための用意をしていた。

スキー板やストックなどスキー用品は向こうにあった。

だから必要なのは、スキーウェアやスキーブーツとか、ゴーグルとかを探せばいい。

ちなみに僕は、去年買ってあるのがあって新調する必要はないが。


ハシブトって背は高いし、足も大きいんだよな。

スキーブーツ、ゴーグルを買い揃えて僕はハシブトのスキーウェアを買っていた。


「ハシブト、スキー用品これなんかどうだ?」

「わしは、白い服が好きだ。『アルビノ』みたいで、いいではないか」

「『アルビノ』?ああ、変色種のカラスか。

でも意外だな、ハシブトは白が好きとは。じゃあこれはどうだ?」

僕は持っていた、白っぽいスキーウェアをハシブトに当ててみた。


「かわいいな、これもいい」

「ハシブトは、モデル体型だからな。なかなかあうのが無くてな」

「わしは、この体が好きではないのだ」

「前にも言っていたな、人間の体が不憫だとか」

「そうだ、この体は特殊なのだ。喜久はどうなのだ?」


すると、ハシブトが僕に対して胸を前に突き出してきた。

上目遣いのハシブトは、縛った黒髪もあいまって彼女は可憐に見えた。

妖艶で、美しい、まさに絶世の美女だ。男を魅了し、虜にする体としては十分すぎるほどセクシーだ。


「え、えと……好きだ……」

「あれ、扇君?ここにいたのですか?」


どこかで聞いたことある声が後ろから聞こえた。

現実に引き戻された僕は、後ろを振り返った。

そこにはワンピース姿で、ミディアムヘアーのお嬢様が姿勢よく立っていた。


「扇君も、スキー用品選びに来たのですね」

「ああ、生徒会長か。ってそれはなんですか?」

「イエイヌですよ。前に話しませんでしたか?」


生徒会長は、なぜか『イエイヌ』といわれた狼を、当り前に犬の様に店に連れてきていた。

ここ、スポーツ用品店だよな。

生徒会長の狼は、ワンワンとハシブトに吠えていた。


「ぬしも来ていたのか、イエイヌ」

「ワンワンワン」とイエイヌは狼の時は、犬のふりをしていた。

ハシブトは、優しい顔でイエイヌの頭を撫でてあげた。

それにしても見た目は狼だぞ。店内に連れてきて大丈夫なのか。


「私は、イエイヌが常にそばにいないと落ち着かないのです」

「そうだった……ですね、はははっ」

生徒会長の寂しそうな顔、僕は追求できなかった。


「生徒会長は、スキー合宿の用意です?」

「ええ、今年は参加しようと思います」

「そうかぁ。生徒会長は去年、いませんでしたもんね」

「ええ、不参加でした。イエイヌがどうしても気になって……」


生徒会長の言葉、イエイヌはとても大事な存在らしい。前に家で全て話してくれた。

生徒会長は、スキーのポスターをじーっと眺めていた。


「去年はイエイヌがね、熱を出してしまったのです」

「イエイヌって、狼なのに?」

「そうです。だから私も休みました」

「そんなに好きなんだ」

「私にとってイエイヌは全てです。イエイヌがない生活は、考えられません。

私の心は張り裂けて、死んでしまうでしょう」

大げさだなぁ、と思うも生徒会長の真剣な表情に圧倒されてしまった。


「そうか、ぬしも貢献しているのだな」

ハシブトは、イエイヌの頭を撫でていた。

イエイヌは、気持ちよさそうにハシブトになついていた。

こうしてみると犬だけど、本当は狼なんだよな。そう考えると、ゾッとした。


「生徒会長。それより、イエイヌも合宿に行くのですか?」

「何を言うのですか、いつもイエイヌとは一緒です」

「は?」僕は驚いた顔を見せた。

生徒会長は、堂々と胸を張っていたが少し気まずそうな顔に変わった。


「私はちゃんと学校にも、連れて行っています。

カバンにしっかり詰めにして、風紀委員に見つかりそうになりますが五島に任せています」

「えええっ!」

素直に僕は驚くしかなかった。

驚くと周りのスポーツ店の客の視線が、僕に突き刺さっていた。


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