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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
一話;傷だらけのハシブトカラス
1/60

あの日から、あたしは最愛の人と離れ離れになった。

大人とは、どれだけ自分勝手なのだろう。

まだ小学生だったあたしは、赤いランドセルを背負っていた。


夕暮れに、大好きだった男の子とあたしはバイバイした。

一生懸命手を降った、あの日は寒かったのをあたしは覚えていた。

手袋をつけ、ふかふかの帽子をつけて手をいっぱいふったから。

だけど、あたしの想いは届かない。


そのあと、あたしは一個の嘘をついた。

その嘘は、あたしはもう引くに引けなかった。


どこにでもある住宅街の路地は、冬の寒さが身に染みた。

夕方でも日は沈みかけていて、暗くなった道を学校で大きな失敗をした僕は歩いていた。

僕の名は『(おうぎ) 喜久』。取井出市の高校に通う、普通の学生。

くたびれた顔で、僕は住宅街を歩いていた。


そこは、町の汚いものが集められる場所。住宅のそばにあるゴミ捨て場。

生ごみの臭いにおいが、僕の鼻を刺激していた。


(ゴミを、まだ回収していなんだな)

苦い顔で僕はゴミ捨て場を見ていると、そこには一羽のカラスがいた。

黒い物体が、コミ袋の上でいる様は威圧しているようにも見えた。


(カラスか……なんか、嫌な気分だ)

僕はゴミ袋のカラスが、何となく気になっていた。

カバンを持ったまま、僕は立ち止まっていた。

人を見るとカラスは頭がいいから、飛び上がるはず。案の定、カラスは立ち上がっていた。

そんな僕は、カラスの視線が妙に気になっていた。


(なんだよ、何見ているんだよ)

僕はそこを通り過ぎようとしたとき、良心の呵責(かしゃく)に苦しんだ。

必死に立ち上がって、僕の方から視線を前に向けていたカラス。


(所詮カラスだろう、なんで……)

周りに人はいない。夕暮れのゴミ捨て場、いるのは僕とカラスだけ。

薄暗いゴミ捨て場は、静まり返っていて誰もいない。


「ああっ、もう……今日はツイていないな!」

吐き捨てるように言った僕は、カラスのいるゴミ袋の上に近づいた。


カラスは、必死に飛び立とうとしていた。しっかり立って羽を、大きく振っていた。

だけど、体は宙に浮かない。

理由は、見てわかった。僕はすぐさま、カラスのいるビニール袋そばに近づく。

一生懸命羽を振りあげるカラスの羽の骨が、折れていたのだから。


(なんだよ、立ち上がるなよ。無理なんかするな……)

可哀そうになった僕は、カラスの頭を優しく撫でた。

こうすることで、ある程度警戒を解くことができるから。


元々カラス自体、人間に警戒心抱く。

頭がよく、人間自体を避けていくのが得意だ。


前のカラスは、つぶらな瞳で僕の顔を写した。

こうしてみると人間の外敵のような言われ方をしているカラスも、かわいく見えてしまう。


(痛々しい姿で、頑張るなよ。まるで、僕みたいじゃないか)

そう思えると、僕はハンカチを取り出した。

そのまま丁寧に傷ついたカラスを、ハンカチで包み込む。


「ちょっとの間だけ、我慢してくれよ。

家に帰れば、道具があるから。僕は、ちゃんと治せるから」

僕は、言葉の伝わらないカラスにそう言い聞かせていた。

カラスは、声に反応してか首を振ってすぐに大人しくなった。


この日、一羽のカラスと出会った。

その出会いは、これからの僕を変えていくことになったのだから。


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