表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/21

第21話 書類地獄

 朝のローゼンベルク不動産。


 ロギは今日もいた。

 ただし今日は設計図ではなく、

 書類を積み上げている。


 扉の鈴が鳴った。


 ダグラスが入ってきた。


「契約しに来た」


「お待ちしておりました」


 レオンが立ち上がった。


 ダグラスは机を見た。


 書類の山があった。


 ドサッ、とロギがさらに積み上げた。


「……なんだこれは」


「必要書類です」


「まだ半分じゃ」


 ロギが言った。


 ダグラスが絶望した。


───────────────────────


 レオンが説明を始めた。


「順番にご説明します」


 一枚目。


「ダンジョン売買契約書です」

「物件価格一百二十万ゴールドの支払いと」

「所有権の移転を確認します」


 二枚目。


「登記変更申請書です」

「迷宮管理局への提出が必要です」

「用途変更も同時に申請します」


 三枚目。


「冒険者ギルド保証申請書です」

「融資の保証をギルドに依頼します」

「審査があります」


 四枚目。


「危険区域開発申請書です」

「黒龍生息ダンジョンの開発には」

「管理局の許可が必要です」


 五枚目。


「新人育成施設補助申請書です」


 六枚目。


「討伐拠点整備補助申請書です」


 七枚目。


「危険区域開発助成申請書です」


「多くないか?」


「少ない方です」


 ダグラスが頭を抱えた。


───────────────────────


 午後。


 冒険者ギルド本部。


 受付を抜けた先の審査室。


 融資担当の女性が待っていた。


 三十代前半。

 眼鏡をかけた真面目な顔。

 机の上に分厚いファイルが積まれている。


「黒龍ダンジョンの融資申請ですね」


「はい」


「またですか」


 ダグラスが眉をひそめた。


「また?」


「過去に七十三回、同物件への融資申請がありました」

「全件、否決または途中辞退です」


 沈黙。


 ダグラスがレオンを見た。


 レオンは表情を変えなかった。


「承知しています」


「では」


 担当官がファイルを開いた。


「今回の返済計画を説明してください」


 ダグラスが口を開こうとした。


 レオンが静かに割り込んだ。


「こちらをご確認ください」


 一枚の資料を差し出した。


───────────────────────


 ━━━━━━━━━━━━━━━

 【返済計画書】


 借入額  :13,500,000G

 返済期間 :10年

 年利   :3%(ギルド保証付き)

 月額返済 :約130,000G


 【返済原資】

 基本運営収益(年間):4,000,000G

 維持費(年間)   :▲2,000,000G

 年間純利益     :2,000,000G

 月間純利益     :約167,000G


 月額返済130,000Gに対し

 月間純利益167,000G

 余裕:約37,000G/月


 黒龍収益は返済原資に含めず

 ━━━━━━━━━━━━━━━


「黒龍収益を返済原資に含めていない」


 担当官が資料を見た。


「はい」

「黒龍は臨時収入として扱います」

「基本運営だけで返済できる計画です」


「ただ」


 担当官はペンで数字を指した。


「余裕が少なくありませんか」

「月三万七千ゴールドでは」

「想定外の出費で詰まります」


「そのため黒龍収益を返済原資に含めていません」


 レオンは続けた。


「黒龍収益は」

「繰上返済と修繕積立に充てます」

「余裕が少ない分を」

「臨時収入で補う設計です」


 担当官が少し考えた。


「……つまり」

「通常運営で返済し」

「黒龍が出たら前倒しで終わる」


「はい」


「過去の申請は全件」

「黒龍収益を前提にした計画でした」


「存じています」


 担当官がファイルをめくった。


 しばらく沈黙が続いた。


「クランの実績書類はありますか」


「こちらです」


 ━━━━━━━━━━━━━━━

 蒼穹の牙 実績証明


 継続活動期間:4年2か月

 重大違反 :なし

 月次報告 :全件提出済み

 討伐成功率:94.3%

 A級保有数 :4名

 ━━━━━━━━━━━━━━━


「……準備が良いですね」


「仕事ですので」


───────────────────────


 翌日。


 迷宮管理局。


 窓口の職員が書類を受け取った。


「危険区域開発助成の申請ですね」


「はい」


「黒龍確認書類は?」


「こちらです」


 職員がめくる。


「第六号様式は?」


「こちらです」


「第六号様式別紙は?」


「こちらです」


「黒龍定期出現証明は?」


「こちらです」


「第七十三次討伐隊の記録との照合書類は?」


「こちらです」


 職員が固まった。


「……全部揃ってる」


「仕事ですので」


 ダグラスが小声でレオンに言った。


「よく知ってるな」


「過去の申請資料を取り寄せました」

「必要書類は把握しています」


「いつ?」


「視察の前日です」


───────────────────────


 管理局の廊下。


 帰り際に、見覚えのある顔があった。


 グランベル不動産の担当者。

 ヴァイス不動産の担当者。


 二人ともこちらを見て、少し驚いた顔をした。


「本当にやるんですか」


 グランベルの男が言った。


「やります」


「融資が通るとは思えませんが」


「通ります」


 ヴァイスの男が続けた。


「リスクが高すぎます」

「我々は責任ある提案をしなければ」


「ありがとうございます」


 レオンは静かに言った。


「ご懸念はもっともです」


 少し間を置いた。


「ただ」


「蒼穹の牙は大きくなりたいクランです」

「安全な提案が合うクランではありませんでした」


 二人が黙った。


 ダグラスが横で腕を組んでいた。


───────────────────────


 数日後。


 冒険者ギルド本部。


 審査室。


 担当官が、一枚の書類を机に置いた。


 ━━━━━━━━━━━━━━━

 融資承認

 ━━━━━━━━━━━━━━━


 判子が押されていた。


「おめでとうございます」


 担当官が言った。


「過去七十三回の申請で」

「初めての承認です」


 ダグラスが資料を受け取った。


 しばらく、黙って見ていた。


「通ったか」


「通りました」


 レオンが静かに言った。


 ロギがニヤリとした。


「やっとワシの出番じゃな」


「お待たせしました」


 レオンはロギを見た。


「では」


「着工します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ