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22-1 「みぃみ!」です

 岩を登って、上から様子を伺ってみれば、藤君と白雨君が、何か石を立てようとしてるのを、沢山の小さな亀達が食い止めようとしていた。

 ……ズボンとか服に噛みついてる。


「何で止めんの!?」

「これ元々あった奴でしょ! 直した方が良いよねぇ!?」

「「「みみみみみみみぃ!!」」」


 うーん、謎の状況。

 ボーッと見ていたら、私の頭の亀が降りて来て、何か主張し始めた。


「みぃ! みみみ!」

「え? 2人のアタマをふっとばすの?」

「みぃみ!」


 首を左右に振っている。

 違うのか。いや、違わなかったら困るんだけど。

 大きな物を表してるのか、引っくり返りそうになりながらカメは後ろ2本足で立ち上がって、前足を上に上げて、体を大きく見せる。そしてぴょんぴょん飛ぶ。

 ふむふむ……。


「今わたしたちがいるイワ、くだけと?」

「みーッ!!」


 さっきより必死に首を左右に振られた。全然違ったようだ。


「あの2人が立てようとしてる石碑みたいなのじゃありません?」


 メイシーの言葉に、亀は「みみ!」と目を輝かせる。成る程。


「あれか……ふたりともー!」


 2人が私の声に気付いて上を向いた。何で藤君の前髪のガード案外硬いな。なんで上向いても顔見えないの? 整髪料付けてる感じ無いのに。


「姫様! と、オマケその一」

「あれ? もう合流する頃合いだっけ?」


 藤君の言い草によって、横で喧嘩腰になりそうなメイシーを宥めて「そのセキヒ、カメたち じゃまなんだってー!」と言う。


「ええ? でも結構力の強い奴封じてるっぽいよー!」


 白雨君の言葉を聞いて、亀へと視線を向け直す。


「こわしたら、せかい滅ぶレベル?」

「みぃみぃ」


 首を横に振ってる。その心配はいらないらしい。


「姫様、規模が大きすぎます。もうちょっと絞りましょう? この森が更地になる辺りから初め━━首縦に振ってますぅ! 姫様ッ、この爬虫類首縦に振ってますよぉ!」

「わるいカメだったのか」


 見た目に騙された。……悪い亀なら、鍋にでもしちゃおう。大丈夫、私はご飯を粗末にはしない。


「み゛っ!? みみみぃ! みぃみ! みいぃぃ!」


 羽根を一枚、出刃包丁に変えた瞬間、亀はメチャクチャ怯えて前言撤回してる素振りを見せる。


「うーん。……もしかして、ふうじられてる子の、つよさの話だけ してた?」

「みぃ!」


 イエスらしい。


「せいかくは、おんこう?」

「みぃ!」


 温厚らしい。


「私達のこと、たべたりしない?」

「みぃ!」


 ……じゃ、いっか。


 ━━━━ズドムッ!!


「「うわっ」」


 出刃包丁を真下に投げる。大柄な成人男性くらいの大きさだから強度が心配だったけれど、普通の出刃包丁じゃ無いから頑丈だ。

 慌てて後ろへ下がる藤君達と、砕けた石碑の残骸を見てたら、亀が岩から降りるよう服の袖を引っ張ってきた。

 生地が傷むから止めてほしい。


「壊すなら先に言ってくんない?」


 不機嫌を隠さず言ったのは白雨君だ。


「ごめん。ところでコレ、2人がさいしょに こわしたの?」

「えぇ……まぁ、成り行きで」


 藤君の返答を聞いて、私はメイシーに目配せする。


「先輩等も苔石追ってましたよねぇ? 壊した時ぃ、一目散に消えませんでしたぁ?」

「それな」

「急に変な動きしたから後ろ見たらもうコレよ」


 わーお。気付かない内にやっちゃったパターンか。こんなの壊れたら一瞬で気付くと思うんだけど、この2人本当に苔石追ってただけなんだろうか……。


 刹那、私達の真横の大岩に、パカリと目玉が浮かんだ。


「「「「〜〜〜〜ッ!!」」」」


 4人して、声にならない悲鳴。

 今のは怖い!! この岩って、もしかしなくても大きなカ━━みぎゃ!? やっぱりいぃ! 地震みたいに地面が揺れ出したんですけどー!


「みいいいいいぃぃぃぃぃぃぃん」


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