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火星人襲来

 現在この文章を読んでおられる方々の大半が、パソコンかスマホを使っていると思います。

 ネット環境が整っていれば、情報を様々な角度から精査できます。

 しかし、インターネットが普及していなかった時代にはテレビやラジオ、紙媒体などいわゆるオールドメディアによってしか情報を得ることができなかったため、それを盲信しなければならなかった人も多かったようです。


 両津「冷静に考えろよ、食べたその日に5キロも痩せるの変だろ!?」

 両津母「だってテレビは嘘つかないだろ!」

 両津「どういう根拠だ、その理論!!」

『こち亀』の中にこういうシーンがありました。




「迫撃砲で武装した暴徒により議事堂が破壊されています。100メートル近い時計塔が、重さ9トンの球で時を打っていたビッグベンと共に地に落ちました。ちょっと待って下さい。最新の報告によるりますと、群衆は変装して逃げようとしていた運輸大臣のワーザースプーン氏の身柄を拘束しました。彼は今、ヴォクスホールの街灯に吊るされたところです。今聞こえたのはサヴォイ・ホテルが群衆に爆破された音です。」


 1926年1月16日の夜、英国放送BBCの放送するラジオ番組を聞いていた、何百万人もの聴取者たちは、突然上記のようなロンドンからもたらされた緊急ニュース速報にを聞かされることになりました。


 その後、次々ともたらされる速報は、ラジオの聴取者をさらに不安に陥れ、人々は親類に連絡を取るために電話口に走ったり、電報局に押しかけたりしました。新聞社や役所には事実を確認するための不安気な問い合わせが殺到しました。役所はそのような事実はないと対応しても、体臭は鎮まりませんでした。更には海軍省に、暴動を鎮圧するために海軍をテムズ川に送れと要請する聴取者からの電話がかかってきました。


 パニックに陥った聴取者の中で、あらかじめ、これから放送するのは全てが、茶番劇であるとの予告編が番組の冒頭で語られていたのを失念しなかった人はごくわずかしかいませんでした。聴取者は、某運動家に率いられた失業者が暴動を起こしているとの憶測の信憑性をしばらくの間信じこんでしまいました。BBCはそれらの状況を鎮めるために番組を中断して、局として公式な説明をした上で、番組の導入部分を繰り返しました。大衆が平静を取り戻すと、今度はラジオ局に非難が殺到し、それ以後イギリスではこのようなデマがラジオで流れることありません。



 何故このような事態に陥ったのかという問いにたいする聴取者たちの答えは「何と言っても、ラジオで聞いたのだから」だったそうです。



 私は、ボイスドラマとかが好きで、夜寝る前にYouTubeで聴いたりするんですよ。ただこのジャンルはなかなか登録者数やアクセス数が伸びにくいみたいで、長期的に活動されている方々が少ないのが残念です。朗読動画も聞きますが、こちらはどうしても基本的に著作フリーの青空文庫などに収録されている素材が使用されていることが多く、名作作品は朗読系YouTuberさんたちで被ってしまうので最近ではあまり聞いていないです。


 閑話休題。


 皮肉にも1938年ハロウィン前夜、アメリカニュージャージー州の空から火星人が地球に襲来してきて、破壊と✕✕の限りをつくしたらしいです。以下はその放送内用の一部です。


「ピカッ! ニュージャージー州グローバーズミルの近くで、隕石が落ちたという報告がありました……死者1500人……違います、隕石ではなく、空飛ぶ金属の筒です……ガスがニュージャージー中に拡がっています……侵略者は国中を飛び回って、爆弾を降らせています……火星人は死の光線を使っています」。


 それに対する当時の反応の一部は以下の通りだそうです。


 ・ペンシルヴァニア州ピッツバーグで男性が帰宅したところ、妻が毒を飲もうとしていた。「殺されるよりは、自殺した方がましだわ」。

 ・ニュージャージー州ヒルサイドでは狂乱した男が交番に駆け込み「恐ろしい奴等がニュージャージー中の牧草地に吹きかける液体ガスから身を守るためのガスマスクをくれ」と言った。

 ・ニューヨーク市マンハッタン島のディキシーバスターミナルは、行き先はどこでもいいからバスに乗って、迫り来る破滅から逃れたいという人々でごった返していた。

 ・インディアナポリスでは一人の女性が教会に駆け込み、ヒステリックに叫んだ。「たった今、ニュースで聞いたんだけれど、ニューヨークが破壊されたわ。この世の終わりよ。どうせ死ぬのなら家に帰った方がいいわ」。

 ・サンフランシスコでは恐ろしい脅威に対して戦おうという志願者たちが、地元の陸軍の指令部につめかけた。

 ・アラバマ州バーミンガムでは人々が教会に集まって祈りを捧げた。

 ・南西部の大学では、女子学生館や寮の女子学生が抱き合って泣いた。彼女たちは変わり番に、両親がこれが最後になるはずの長距離電話をかけに行くときだけ、お互いに身を離した。



 これらは、有名な“オーソン・ウェルズ”主演のラジオドラマ番組『マーキュリー劇場』の「火星人の襲来」の結果起こったパニックのうちのいくつかであす。この話は“H・G・ウェルズ”の『宇宙戦争』を原作に脚色したものでした。


 “オーソン・ウェルズ” (1915~1985) というと、天才的な名優として有名らしいですが、私はあまり俳優としては知らないんですよね。それよりも名作映画『市民ケーン』の監督をしていたことの方が印象深いです。


 この番組はアメリカ史上最もパニックを引き起こしたラジオ番組でしたが、オーソン・ウェルズの同僚のほとんどは、原作が「空想的過ぎて現実味がない」と言って、ラジオドラマ化に反対し、皮肉なことに、この企画はお蔵入りになりかけたそうです。ただでさえ、ドラマシリーズ自体の聴取率が低く、前週の聴取率では裏番組が34,8パーセントに対して3,6パーセントしか取っていなかったからです。


 異議が多かったにもかかわらず、天才ウェルズは半ば強引に火星人の地球への来襲を描いたこのラジオドラマの企画を通してしまいました。


 ラジオ番組では原作のイギリスからニュージャージーへと舞台を移し、最新のニュース速報形式を使いました。


 ドラマは始まり、ウェルズはこれから行われるのは完全なフィクションであり、ラジオドラマであると注意深く前置きをしました。しかし、聴取者の多くはそれを気にも留めなかったか、その後のヒステリー状態に圧倒されてしまったか、後からチャンネルを合わせたかでした。


 さらにパニック状態を増大させる一因として、午後8時12分の裏番組にあまり売れていない歌手がゲストとして出演し、面白味に欠けるものだったのがあげられるそうです。それにより裏番組の聴取者のおよそ13パーセントが、ラジオのダイヤルを回し始めました。彼らはCBSで、今までで最も恐ろしいニュース速報を聴き、チャンネルを回すのを止めることになりました。


 1時間の放送が半分も終らないうちに、ヒステリーは最高潮に達し、蛮勇ともいえる聴取者の一部は、ショットガンやライフルを手にして戦う準備をしました。しかし、大半はパニック状態となり、病院はショックを受けた人々で一杯で、心臓発作起こした者さえいたそうです。



 人類滅亡の危機に瀕して、その準備に多忙を極めていた大半の人を除いた、最後まで番組を聞き続けたわずかな聴取者たちは、原作の残りを忠実に脚色したものを聴くことができました。


「人類は生き残った。侵略して来た火星人はウィルスに対して抵抗力がなかったので、全員衰弱して死んでしまったのだ」。



 9時1分に番組が終ると、ラジオ局には電話が殺到しまし、警察はスタジオに急行して、出演者を含むスタッフ全員の身の安全を確保しました。当局が怒った市民を落ち着かせようとし、番組関係者たちは夜を徹して被害の程度を調べている間、保護拘置下に置かれましたが、早朝までには、過失を問われることなく釈放されました。


 ヒステリーの大半は、翌日には治まっていましたが、その後には怒りを込み上がらせた聴取者が国中に残りました。ある中西部の市では道が群衆で一杯になったが、怒りに燃えた市長はその事態に対して、怨嗟の的となっていたオーソン・ウェルズを殴るために個人的にニューヨークへ行くと話しまし、そのためウェルズは姿を隠しすことになりました。


 後になって、CBSは一般に謝罪した。連邦通信委員会は何度か聴聞会を開き、この件を「残念だ」と言い、いくつかの規則を作りました。



 全体的には、新聞や他の論評はアメリカ大衆の「信じ難いほどの馬鹿さ加減」と「騙されやすさ」について言及しました。コラムニストのドロシー・トンプソンは「番組の内容は、どれも全く信じられないことばかりだった……オーソン・ウェルズ氏と彼の劇場は、論理的に書かれたどんなに言葉よりも、ヒトラー主義、ムッソリーニ主義、スターリン主義、反ユダヤ主義その他現代全てのテロリズムを解説するために大きく貢献した」と書きました。



 皮肉なことに、一般聴取者の中で最も騙されなかったのは、子供たちであった。若者の多くは、オーソン・ウェルズの声をラジオドラマ「シャドー」の役でよく聞いている声だと気づいたそうです。




 非常に多くの訴訟が起こされたましたが、全て法廷で棄却されました。放送中に何度もこれはフィクションであるとアナウンスがあったからです。結果的には、ウェルズと彼の番組は成功しました。数週間のうちに、キャンベルスープ社がマーキュリー放送劇場のスポンサー契約を破格の金額で結んだらからです。



 と、まあ書いてはみましたが、以上の「火星人の襲来」辺りからの下りは完全な都市伝説でそのような事実はないと証明されいます。あくまでも話としては良くできていて面白いと思いますけどね。



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