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第27話『グランドフィナーレ』

 窓際ではトゥーラとシエナが和やかに語らっていた。

「妊娠何カ月目に入ったの?」

「七ヶ月です。時々お腹を蹴るようになったんですよ」

「そう……この頃は安定してきて、お仕事にもきちんと出てくれて大助かりだけど。——ご両親は説得できた?」

「それなんですけど。旦那の両親に私の銀行通帳を見せたら、こんなに経済的にしっかりした人なら、ってことになって。すんなりOKをもらえたんです。——実は旦那より稼いでるんですから、説得力ありますよね」

「あら、そうだったの」

「はい。ウチの両親は初孫が何よりも効いたみたいで、甲斐甲斐しく世話してくれてます。もちろん、旦那の両親もですが、とても楽しみにしていて赤ちゃんの寝具やガラガラ、おむつを買い込んで、挙句にぬいぐるみの木馬を買ったりして、ものすごく気が早いんですよ」

「よかったわね、シエナ。心配事がたくさん消えて、赤ちゃんに会うのが待ち遠しいでしょう?」

「おかげさまですべて上手くいって怖いくらいです。トゥーラさんやみんなのおかげです。ありがとうございます」

「いいえ、あまり無理しないでお仕事してね」

「はい!」


 トゥーラたちから少し離れた壁際では、キーツがクラシックギター片手に曲を試し弾きしていた。

 観客はメリッサ一人。

 熱心に耳を傾けている。

 曲の転調部分でふと演奏が止まる。

「うーん、ここのところが決まらないんだよね」

 黒縁の眼鏡のブリッジを押し上げながら、楽譜をチェックするキーツ。

「そうですね……バラードだから、あんまり高低差が激しいとじっくり聴いてられないですよね」

「わかる⁈」

 キーツが嬉しそうにメリッサに問う。

「はい……ちょっと変わってるけど、収まりが悪いって言うか。安定感が少し足りないっていうか……」

「そう、そうなんだよ! この曲は風変わりなバラードを目指したんだけど、結局収まりが悪くなっちゃって、スタンダードに戻そうかと思ってたところなんだ」

「うん、キーツさんの声はよく伸びるから、スタンダードの方が絶対決まりますよ」

「ありがとう! メリッサ」

 キーツが感激のまま手を差し出した。

 メリッサは嬉しげに手を握った。

 とてもナチュラルなふれあいを楽しんでいた。


 マルクは一人、倉庫を見回っていたが、集会所に戻ってきて年末特有の賑わいにちょっと驚いた。

「これじゃ全然仕事にならないな」

 ナタルとアロンのところにやってきて、ぼやいたがまったく怒ってない。

「お帰り、マルク。そうなんだよ、今日はみんな仕事じゃなくておしゃべりに花を咲かせたいみたいでさ」

 アロンが笑いながら言うと、ナタルも二度頷いた。

「来週は聖人降誕祭だからね。盛り上がりに水を差すのもなんだし、俺たちも特に注意はしないようにしてたよ」

「……仕方ないなぁ。まぁ、この時期特有の浮かれようだけど」

 全体を見渡して、マルクはいくつもの喜ばしい兆しを見つけて苦笑した。

 童話の童子相手に、あーでもないこーでもないと注文を付けるノリヒト。

 タイラーとオリーブの二人をからかいながら、盛り上がるポール。

 ハルニレのところへルイスを背中から押しやるランス。

 貫禄の出てきたシエナのお腹をさするトゥーラ。

 盛り上がるキーツとメリッサ。

 みんなみんな幸せそうだった。

 マルクは一計を案じた。

「おい、二人とも協力してくれ」


 マルクたちが用意したのは二ダースのシャンパンその他だった。

 早速、メンバーが自宅からシャンパングラス等をテレキネシスで取り寄せてわいわい騒ぐ。

 ノリヒトもやってきて、マルクに聞いた。

「俺もご相伴に預かっていいのかい?」

「もちろんです。シャンパングラスはありますか?」

「こう見えても、ウチにはシャンパングラスぐらいゴロゴロあるんだぜ」

 言って、その手にはピカピカのシャンパングラスが。

「さすが富豪」

 ポールが合いの手を忘れない。

「みんな、シャンパンは注ぎ終わったか――? それじゃ、聖人降誕祭とNWSの明るい未来を祈って」

「乾杯——!!」




















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