第16話『100%』
ポールは興奮を隠せない。トゥーラは逆に気後れしている。
「そんなに大事にして大丈夫かしら……」
「収まりがつかないって? 大丈夫、大丈夫。ブログにしたってホームページにしたって、見たい人しか見ないんだから。ある意味、因果界でテレパスを鍛えられてる俺たちって、言葉の達人だよ。伝えたい人にこそ伝えることこそ本分じゃない。発信することが人のためって目的に適ってるなら、問題なんて起きないよ」
「……小さく収めることには自信があるんだけど……」
「どんだけ痛めつけられたの? その連中を全部見返してやんなさいよ。大丈夫、俺がついてる。へへん、口じゃ負かされないぜ」
「——申し訳ないけど、頼りないわ」
「あらら、傷が深いのね。トゥーラ、自分のことどのくらい好き? パーセンテージで」
「……50%くらいかしら」
「俺、100%! それもつい最近ね」
「最近?」
「トゥーラが俺のこと、好きになってくれたから!」
「……!」
トゥーラの瞳が感動で潤む。
「だから俺、今目の前に何の障害もないの。何でもできる気がするし、昔諦めたことも可能になりそうなんだ」
「私、重荷になるかも」
「何言ってんの。俺の頭上で燦然と輝いてる星ですよ、君は。そのままでも素敵だけど、出来たら自分のこと、もっともっと好きになってほしいな。俺にできることなら何でもするからさ」
「……ありがとう」
「どういたしまして。とりあえずブログとホームページは起ち上げようよ。ね?」
「うん」
「いい子、いい子。さて、そろそろ来るぞ」
「?」
ポールは誰か待っているようだった。
キーツが店長室から戻ってきた。
「お待たせー! 契約できたよ」
「どれどれ――?」
それは簡素な契約書だった。
上記の者、『ビアンコ・ディアマンテ』の専属ミュージシャンとして契約する、という内容だった。
キーツのサインが凝っている以外は、普通の文書だった。
「ちょっとこれ、カリグラフィーじゃない。いつの間にこんな小技身につけたわけ?」
ポールの言葉に満面の笑みで答えるキーツ。
「前からちょっとずつサイン頼まれることがあってさ。コツコツ勉強した成果だよ」
「ほらね、自己実現が目的の人間は、抜け目ないだろ?」
「納得」
ポールの持論をキーツが証明したようなものだった。トゥーラも認めざるを得なかった。




