第15話『ブルーブリーズブランド』
風雷の八月献舞の三十日——。
生産修法の仕事も、そろそろ夏野菜作りが終盤に差し掛かる頃合だった。
NWSに新たに加わった、パーマカルチャー運動を推進する農家、ノリヒト、トーマス、ルイの三人は特別顧問に就いた。
そのため、生産修法だけではない農業のノウハウがいろいろ盛り込まれているところである。
まず、ノリヒトが手をつけたのは、野菜の保存のことだった。
「段ボールもいいがよ、氷で直に冷やすんなら室と同じだから、野菜を呼吸させてやった方がいいぜ。そういう時は筵を使うんだよ。わかんねぇかな、藁を荒く編んだ敷物だよ。あの倉庫なら、棚は安物収納棚使って素通しにしてよ、接地面に筵被せてみな。かなり違うぜ」
というわけで、ノリヒトの指導で倉庫での並べ替え作業が男性陣総出で急ピッチに行われている。
女性陣はというと、今日も集会所で生産修法に勤しんでいる。
弾むおしゃべりの最中にも、生産修法は休まない。それが女性のなせる業だった。
リーダーはオリーブとトゥーラ。
話題の中心は、オリーブがどうやってタイラーを落としたのか、ということだった。
「だってオリーブさん、タイラーさんが好きだなんて一言も話題にしてないじゃないですかぁ。ズルいですよ」
ミルラ(3班・方向者・20歳)がからかいつつ文句を言うと、オリーブも詰まってしまう。
「そんなこと言ったって、私も思いがけなかったのよ」
「余裕! 羨ましいっ」
メグ(2班・平面者・26歳)が両手を上下に振ると、生産修法の球がグワングワン揺れた。
「ちょっとメグ、なにしてんの」
オリーブが慌てると、メグはアハハと笑った。
「全然問題ないですよ! このくらい」
「味が雑になるでしょうが」
「シェイクされますね、きっと」
「されないから!」
「その繊細さにやられちゃった感じかなぁ。どう思います? トゥーラさん」
パティ(6班・平面者・27歳)が聞くと、トゥーラが言った。
「私はてっきり、個性的なところに参ったのかと思ってたけれど」
「酒豪なところが⁈」
ミルラが言うと、パティが突っ込む。
「それ個性じゃないから」
「じゃあ、どんな特技ですかぁ?」
「特技って……あのねぇ」
「オリーブさんって言えば、中性的なところが魅力ですよね」
クリオ(9班・平面者・22歳)が憧れたように言った。
「でも、ちょっとアニキ入ってますよね」
ミルラが遠慮なしに言うと、メグがこのネタに飛びついた。
「そう! 女に嫉妬されない女って感じよね」
「アニキなの? オカマなの?」
パティが聞くと、ミルラは無邪気に言った。
「じゃあオカマで」
「だったらタイラーはゲイじゃん」
オリーブが突っ込むと、ミルラが叫んだ。
「え――っ、やだぁっ!」
その途端、透明な球が弾けて、でんぐり返ったナスが転がり落ちた。




