相棒誕生
木暮と瑞穂は相棒になる?
「ありがとう瑞穂。実は俺最近、兄貴の奥さんに会ってないんだ。母ちゃんは東京へ行ってたから結婚したことは知っていたけど……」
「もしかして、結婚の報告前に亡くなったのか?」
「兄貴のメジャーデビューが決まってやっとって思っていたんだけど、マネージャーから口止めされていたから」
「口止め?」
「マネージャーにはMAIさんが兄貴を駄目にする存在だと映っていたのかも知れないな。そんなことないんだよ。だってMAIさんは兄貴の幼馴染みで、良く俺とも遊んでくれたんだ」
「お前、兄貴の後を付いて行ったのか?」
俺の質問に頷いた木暮。
「あっ、そうだ。金魚の糞だ」
「なんだいきなり」
「思い出したよ、原っぱのこと。やはり兄貴の仲間だったって」
「だとしたらヤバかったんじゃないのか、あのカフェ。原っぱは兄貴の仲間だったんだろう? MAIさんだってお前だと気付いたかも知れないだろう?」
俺の言葉に木暮は黙ってしまった。
「大丈夫だよ。もう何年も経っているんだ。気付くもんか」
それでも強気な発言をした。
とりあえず今日得た情報を叔父に報告しようと木暮を同伴させてイワキ探偵事務所へ向かった。
「一週間後か? 出来れば行っててみたいな」
木暮は妙なことを言い出した。
「えっ、女子会へか?」
俺はひっくり返りそうになった。
「もしかしたらお前。有美から何か聞いたのか?」
「何かって、何だ?」
「だから、俺が女装しているところを見かけたとか」
言ってしまってから気付いた。
俺は自ら木暮に、女装していることを打ち明けてしまっていたのだった。
「えっ、えっーー!? へぇー、お前が女装をね。一体何でそんなことしてんの?」
木暮は今にも吹き出しそうだった。
「お、叔父さんの手伝いだよ。本当はイヤだけど、叔父さんに頼まれと断れないんだ」
俺はしどろもどろになっていた。いくら親友でも弱味は見せたくなかったのだ。
「確か叔父さん、元警視庁の凄腕警察官だったんたよね。高校生にそんなことさせても良いかな?」
俺の直感は図星だった。木暮は怖いことを言っていたのだ。
「俺が何であの高校に入らなかったのか知っているか?」
「単なる偏差値の問題だろう? お前の高校の方がレベルが高いから……」
「違うよ。俺は彼処の生徒達に聞いたんだ。彼処は校則が厳しいって言ってたよ。私立を落ちたヤツが大勢受験するだろう? いい加減な高校生活を送らせないためだとか」
木暮に痛い所を突かれ、俺は返す言葉がみつけられないほど落ち込んでいた。それにしても驚いた。
あの校則はそんな意味もあったのかと。
とりあえず叔父の了解をもらって、イワキ探偵事務所の中に入ってもらった。
木暮は俺に何が言いたいのだろう?
俺はそのことばかり気になっていた。
でも木暮は叔父に対して時候の挨拶とかしただけで何も話してくれなかった。
俺はまず、原田学の着けていたゴールドスカルのペンダントヘッドを見つけたことを話した。
それを聞いただけで叔父の態度が変わった。
叔父は、原田学の霊を慰めるには犯人を見つけてやることだと思ったようだ。
其処で女子会潜入って話になった。
でも叔父さんの女装なんて見られたもんじゃない。
結局俺だけ……
でもなかった。
若くてチビの、女装にうってつけなのがもう一人目の前にいた。
それは木暮悠哉だった。
木暮はスポーツマンには似合わない草食系で、良く女性と間違えられていたのだった。
木暮は快諾した。
そこで、叔母さんの三面境の前で、二人は女装してみることになった。
実はそれは木暮が言い出したことだった。
『女子会って確か、大分前になるけどの流行語だったよね。俺、一度行ってみたいと思っていたんだ』
木暮はあっけらかんと言ったんだ。
俺はあの時の、木暮がチラシをポケットに入れたことが気になっていたのだ。
その理由はこれだったのかも知れない。
俺一人でもやるつもりだった。
だけど二人なら心強い。
「本当は、俺も一度女装してみたいなと思っていたんだ」
「もしかして、そのまま女子会……ううん、その辺を歩こうって言うんじゃないよね」
「当り。良く解ったね」
「えっー!?」
叔父と同時に言った。
それほど驚いたのだ。
俺より少しだけ背の高い木暮の唇が俺の耳元に迫ってくる。
俺はその途端にフリーズした。
「よろしく相棒」
木暮はそう言った。
俺達はその時から相棒になってしまったのだった。
勿論、この事件が解決するまでの話だ。
「高校生の女装探偵か? あぁー校則が……」
俺は頭を抱えて事務所の椅子に凭れ込んだ。
「よっしゃー、瑞穂。その骨は俺が拾ってやる。思いっきりやってこい」
叔父までもが発破をかける。
『瑞穂、サッカーなんか辞めて此処を手伝ってくれ』
何時か叔父の言ったことを思い出して俺は震えた。
俺からみずほとサッカーを取ったら何も残らない。
みずほが亡くなった今、俺にはサッカーしかない。
それを知りながら……
俺には目の前にいる二人が悪魔のように映っていた。
何故校則が厳しいのかを瑞穂は知った。




