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半堕天使フェル  作者: 蒼すだま
Ⅳ章
32/41

31話 気さくな王

ローブ姿のフェルと、周りの背景に融け込んでしまいそうなヴィアの前に

悪魔が立ち、道案内をしてくれている。

頭には2本の角、爪は鋭く尖り、歯も鋭くぎざぎざ。目は白眼の部分が黒い。

悪魔がチラリとフェルの羽根を見て、舌打ちをした。

おおかた、堕天する者とは言え、何故羽根の白い忌まわしい天界の者を入れなければならないのだろう。

ああウザいウザい。ていうか何故自分が道案内などしなくてはならないのだ。意味が分らない。

といったとこだろう。

黒い大理石に紅い絨毯が轢かれる廊下を奥に進み、そしてひと際立派な扉に辿り着いた。


「ここです…」


若干投げやりのような口調で言い、扉を開くが、そこには誰も居ない。

部屋は黒や茶色、赤基調の部屋だ。

道案内の悪魔が辺りを見回し、大きなため息をついた。


「またですか……ちょっと待っていてください」


そう言うと部屋の奥の扉へ消えていった。


「なんだろう…?」

「…」


フェルとヴィアは若が分らず顔を合わせた。


程なくして先ほどの扉から誰かの姿が見えた。先ほどの道案内の悪魔が後ろからついてくる。

2人は目を瞠った。色んな意味で。


「いやぁ~すまんすまん!ちょっと散歩に行ってたんだ。」

「貴方ともあろうお方が、そのような格好で魔街に出るのはやめてくださいといつもいつも…」

「あーあああー悪かったーはいはい、私が悪かったよはいはいー」

「サタン様!」


道案内の悪魔は諦めたかのように溜息をつきフェルを通り過ぎ部屋を出ていった。

フェルは再び目を瞠った。

サタンはかつて、天界でルシファーという12枚もの羽根を持つ大天使だったのだ。

だが神に逆らい、ミカエル率いる神の軍団と戦うが敗北し、堕天したと伝えられている。

そして魔界の王になった。……と聞いていたが。


「やぁ、すまないねーお見苦しいところを見せてしまって。ささ、椅子に座ってよ」


気さくに笑う彼からは、魔界の王様という感じは全くしない。

それもそうだろう。

今彼はダボダボのズボンに、ダボダボのTシャツらしきものに、着なれたよれよれの上着

という限りなくラフな、悪く言えばだらしのなさすぎる格好をしているのだから。

その前に、部屋の雰囲気と服装が合ってない。合っているのは人柄と服装だけ。

腰まで届く紫の髪に金色の双眸、端正な顔立ち、頭に生える2本の立派な角、そして悪魔を象徴すべき蝙蝠羽根。

それが辛うじて悪魔なんだなと思わせる。

その美しい相貌は男女誰もを魅了し堕としてしまうだろう。


「あ……あの…」

「ほほお、本当に君珍しいね~白黒の羽根だって。そんでもって君は…死神さんかな?

死神は天界、魔界には関与してはいけないんじゃなかったけ?まあいいや。

さて。話はさっき道案内してくれた者から聞いたよ。最後の願い…ってのがあるんだってな。

まぁ君はいずれ魔界に来るらしいし。どうせならやり残したことをしてからスッキリした方がいい。

うん。私でよければ力になるよ」

「え、あ…ありがとうございます!」


一気にしゃべられ若干唖然としていたフェルである。

ヴィアは先ほどから壁にもたれかかり険しい表情でこちらの様子を見ている。

フェルは勧められるままに椅子に座った。


「ああ、その前にだ。お腹すいてないか~?ケーキとかいっぱいあるぞ、何が好き?」

「そんな!悪いです…」


フェルの言葉を思い切り無視し、何処にあったのか、ケーキを持ってきてテーブルに置いた。

イチゴのショートケーキにチョコレートケーキ、チーズケーキもある。


「えーい!サタン様の言う事が聞けぬというか!」


腰に手を当て冗談っぽく怒ってみせるサタンは…まるで子供だ。


「ああ、そこの死神さんもよかったらどうぞ。食べながら話をしよう」

「ああ…」


サタンに手招きされ寄ってきたヴィアのケーキを見る目が、心なしか輝いている。

3人は椅子に座り朗らかな雰囲気の中でケーキを食べた。


「あ、どうだった?魔街は。びっくりしただろー?魔界のイメージぼろぼろだろ??」


何かを期待する目でサタンが見つめてくる。


「まるで人間界の町のようでびっくりしました!」

「いぇい!やったぜ!」


誇らしげにガッツポーズをするサタン。


「何故あんなものを作っているのだ?」


心底疑問に思ったらしいヴィアが食べる手を休め尋ねた。

サタンはチラリとヴィアを見て人差し指を立てた。


「だってさ、魔界って暗いし。暗いの嫌じゃん。面白くないしさ~

どうせなら皆がびっくりするような物を…!ってさ。思い通りにしたくて王になったのさ」

「へぇ…」

「でもまぁ…私のいるところだけでいっかなと。

だからこの空間以外は君たちが想像するようなくっらーいなんの面白みもない魔界だよ」

「そうなんだ…。そう言えば、服は…なんでそんな恰好を…?」

「ああ。本当は私の服もちゃんとしたのはあるんだがな…面倒臭い」


素敵な笑顔で返してきた。

面倒臭いで全てを片付けてしまったサタンは色んな意味で偉大だ。


「おっと、いけない。本題から逸れるところだった。で、願いとは?」


先ほどとは打って変わって真剣な表情になる。

フェルも緩んでいた表情を引き締め言った。


「あの…僕、母に…逢いたいんです!」


細められたサタンの目が鋭く光った。





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