表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
半堕天使フェル  作者: 蒼すだま
Ⅲ章
PR
27/41

26話 喧嘩別れ

とある家でどなり声が聞える。




「エルシ!駄目だって何度言ったら分るの!お母さんはそんな子に育てた覚えはないわ!」

「何よ…!駄目駄目駄目って!何でも駄目じゃん!私の勝手でしょ?!大体育てられた覚えもないもん!」


ふわりとした金髪の女の子が母に食ってかかる。


「お母さんはあなたを心配して言っているの!どうして分らないの」

「いつどこで誰が心配してほしいなんて言った?」

「ああ言えばこう言う!もう!あなたなんてうちの子じゃないわ!」

「……っ!…お母さんなんてもう知らない!!」


勢いよく身を翻し、家を出ていった。


エルシは、夫と離婚してから女手一つで育ててきた。

そんなエルシは突然、学校をやめてミュージシャンになると言うのだ。

まだ13歳だというのに、そんな計画性も実現性も薄い事など許せない。

心配しているというのに、どうして分ってくれないのだろうか…



***



数日間ずっと口のきかない日々が続いた。

ある日の昼、いつになく外が騒がしいことにふと気が付いた。

――何かあったのかしら…?

外に出て見るとどうやら近くで事故があったらしい。

耳にひそひそ話が飛び込んできた。


「交通事故があったんだってねぇ」

「ちらっと見てきたけど…怖くて帰ってきたわ」

「まだ子供だったらしいわね…かわいそうに…」


――え…

心臓がどくんと跳ねた。

何故か嫌な予感がする。

息を切らせながら走って行くとすぐに人盛りが見えた。


「ちょっと、すいません!」


人を掻きわけて進み、言葉を失った。

まるで悪い夢でも見ているかのようだ。

血の池に倒れる女の子。

血に染まる身体。

ふわりとした金髪が所々赤に染まっている。


「エルシ…!!!」


目を見開き、悲鳴に近い叫び声をあげた。


「嘘!嘘でしょ?!嘘って言いなさい!」


膝をつき、エルシの身体を力任せに揺さぶり叫ぶが、

エルシは黙ったままだ。

段々身体が冷たくなっていく。

母親はその場に崩れ折れた。



***



病院で母は、すっかり冷たくなったエルシの隣に座り呆然としていた。

ノックの音が聞こえ、病室に人が入ってくる。


「あの…これ…」


見知らぬ女が紙袋を手渡してきた。

緩慢な動作でそれを受け取り、まじまじと見つめる。


「…?」

「事故現場に落ちていて…では…失礼します…」


それだけ告げると帰っていった。

何だろうか。

開いてみると中からビーズで作った花形のキーホルダーが出てきた。

袋の中をもう一度見たとき、手紙が入っているのに気付いた。

開いてそれを読む女の、母の目がみるみるうちに震えだした。


【お母さんへ

  お誕生日おめでとう

  手作りキーホルダーだよ



  この間はごめんなさい。我儘ばかり言って

  心配して言ってくれていたのは、分ってるよ



          お母さん大好き】


「――…!」


エルシからの手紙だった。

涙があふれ出す。

ああ、喧嘩をしたままだった。

仲直りもできなかった。

酷い事も言ってしまった。

私のせい、私のせい、私のせい。


「あなたは私の子よ…!私が…私が悪かった…っ」


プレゼントと手紙を胸に抱え、嗚咽を漏らしながら泣いた。



――だから、戻ってきて…!




  +  +  +






女の指がぎりぎりとフェルの首を絞めあげていく。

フェルが縛られたままの手でもがき、抵抗し、

苦しそうに顔をゆがめる。

フェルを押し倒した女の手に一層力がこもり、つめが食い込みフェルの首に血が滲んだ。

視界が暗くなって意識が遠のいていく。


「く…苦し…や、めて…」


フェルの一言にはっとした女の目が見開かれる。

苦しむフェルとあの日のエルシが重なって見えた。


『痛いよ…苦しいよ…』

「…!エルシ…?!」

「…?」

「あ…あ……」


フェルの首からフローラの手が離れ、彼女は震え慄きながら後ずさった。


「いやぁあああ!!!」


狂ったように叫び、懐からナイフを出し自分の胸に降り落とす。

床に鮮血が飛び散った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ