15話 奇襲
荒れた大地がどこまでも続き、生命を感じさせない枯れ木が頼りなさ下に風に揺れ、ごつごつした岩が険しさを感じさせる。
暗い死神界を3名が飛んでいる。
何かを告げるかのように激しい風が吹き荒れた。
「あそこだ!!捕えろ!!!」
突然聞こえた声に3人が一斉に振り返る。
見ると大勢の天界の兵がこちらに向かい、猛スピードで飛んでくるのが目に飛び込んできた。2人の天使と1人の死神の目が大きく見開かれる。
時間的に言うと、闇の日が終ってからそう時間は経っていないはずなのに、見つかるのが早い。早すぎる。
このまま飛行を続けても、兵との戦いは免れられないだろう。
ときおり、ごうごうと激しい風が吹き付ける。
「…飛んだのが裏目に出たか」
ヴィアが体勢を低くし低く唸り、手のひらを下にして一文字に横にひと振りする。手が通った辺りの空間がぐにゃりと歪み、力の発動とともにヴィアの長い髪が翻り、黒雲のようなもやもやした中から巨大な鎌が現れる。勢いよくそれを抜き取り、紅い宝石の埋め込まれた鎌を構えた。
セルザスが少し前に出て語気鋭く言い放つ。
「お前はヴィアと共に先に行け!」
宙に指で魔法陣を描き、そこから白い剣を引き抜き、剣をひと振りして兵の軍勢に向かって構える。だがフェルは首を大きく横に振り、叫ぶ。
「嫌だよ!セルザスを置いていけない!僕も…戦う!」
ローブの内側から真新しい聖法書を取り出す。だが、フェルは治癒系以外、何一つといっていいほど聖法は使えない。
「…馬鹿!足手まといになるだけだ!ヴィアティウス!」
ヴィアが一つ頷いて身を翻し、フェルの元に行こうとした刹那、
ヴィアの目が愕然と見開かれた。
笑っている。
セルザスが嗤っている。
この状況下で怪しく嗤っている。
駄目だ、このまますんなり先へ進んでは。
彼と共に行動しては。
セルザスが天界の掟を破ってまで此処に居るのは、何故だ。
戦慄と共に漠然とした嫌な予感が一閃し、ヴィアの頭の中で警鐘が鳴り響く。
違和感が確信へと変わる。
ヴィアは鎌の切っ先で円を描き、すばやく空中に魔法陣を作った。
「フェル!来い!」
「…ちょっ、痛いよっ」
ヴィアがフェルの左腕を強引に引っ張り、自分の方へ引き寄せ、
そのまま魔法陣の上にフェルの身体を放りだす。
フェルが魔法陣の上に触れた瞬間、魔法陣が発光しだした。
「えっ…な、何?!」
慌てて魔法陣から出ようとするが、光の壁に阻まれて出ることができない。
セルザスが異変に気付き振り返る。
もうすぐそこまで兵が近づいてきている。
「セルザスは危険だ。…必ず迎えに行く!」
光の壁に手をついたフェルが必死になって叫ぶ。
「何それ?!ヴィアさん?!」
ヴィアの言葉が合図かのように、まばゆい光がフェルを包み込み、
そしてその光は再び暗闇に掻き消えた。
フェルの姿もそこには無かった。
「お前…!フェルをどこにやった…!!」
フェルが居た場所とヴィアを剣呑に睨み、セルザスは苛立ちを含む低い声で唸った。ヴィアは一瞥し、鎌をセルザスの方へ据え、凄みのある声音で問う。
「…貴様…何故ここに来た…何が目的だ…」
闇の中だというのに不思議な力で、鎌がキラリと鋭く反射する。
セルザスが持つ剣の切っ先も、キラリと反射する。
緊迫した空気が張り詰める。
「どこにやった」
質問とは違うことを言うセルザスに、ヴィアは剣呑に目を細めた。
じりじりと間合いを詰めていく。
「逃げ場はない。お前一人では太刀打ちできん。」
「それはどうかな…?」
セルザスはにやりと嗤って斜に構え、聖法書を取り出し詠唱を唱えはじめた。
この、詠唱は…。
「貴様…まさか!」
聖法書のページが怪しく輝きを放ち始めた。




