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半堕天使フェル  作者: 蒼すだま
Ⅱ章
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15話 奇襲


荒れた大地がどこまでも続き、生命を感じさせない枯れ木が頼りなさ下に風に揺れ、ごつごつした岩が険しさを感じさせる。

暗い死神界を3名が飛んでいる。


何かを告げるかのように激しい風が吹き荒れた。



「あそこだ!!捕えろ!!!」


突然聞こえた声に3人が一斉に振り返る。

見ると大勢の天界の兵がこちらに向かい、猛スピードで飛んでくるのが目に飛び込んできた。2人の天使と1人の死神の目が大きく見開かれる。

時間的に言うと、闇の日が終ってからそう時間は経っていないはずなのに、見つかるのが早い。早すぎる。

このまま飛行を続けても、兵との戦いは免れられないだろう。

ときおり、ごうごうと激しい風が吹き付ける。


「…飛んだのが裏目に出たか」


ヴィアが体勢を低くし低く唸り、手のひらを下にして一文字に横にひと振りする。手が通った辺りの空間がぐにゃりと歪み、力の発動とともにヴィアの長い髪が翻り、黒雲のようなもやもやした中から巨大な鎌が現れる。勢いよくそれを抜き取り、紅い宝石の埋め込まれた鎌を構えた。

セルザスが少し前に出て語気鋭く言い放つ。


「お前はヴィアと共に先に行け!」


宙に指で魔法陣を描き、そこから白い剣を引き抜き、剣をひと振りして兵の軍勢に向かって構える。だがフェルは首を大きく横に振り、叫ぶ。


「嫌だよ!セルザスを置いていけない!僕も…戦う!」


ローブの内側から真新しい聖法書を取り出す。だが、フェルは治癒系以外、何一つといっていいほど聖法は使えない。


「…馬鹿!足手まといになるだけだ!ヴィアティウス!」


ヴィアが一つ頷いて身を翻し、フェルの元に行こうとした刹那、

ヴィアの目が愕然と見開かれた。

笑っている。

セルザスが嗤っている。

この状況下で怪しく嗤っている。

駄目だ、このまますんなり先へ進んでは。

彼と共に行動しては。

セルザスが天界の掟を破ってまで此処に居るのは、何故だ。

戦慄と共に漠然とした嫌な予感が一閃し、ヴィアの頭の中で警鐘が鳴り響く。

違和感が確信へと変わる。

ヴィアは鎌の切っ先で円を描き、すばやく空中に魔法陣を作った。


「フェル!来い!」

「…ちょっ、痛いよっ」


ヴィアがフェルの左腕を強引に引っ張り、自分の方へ引き寄せ、

そのまま魔法陣の上にフェルの身体を放りだす。

フェルが魔法陣の上に触れた瞬間、魔法陣が発光しだした。


「えっ…な、何?!」


慌てて魔法陣から出ようとするが、光の壁に阻まれて出ることができない。

セルザスが異変に気付き振り返る。

もうすぐそこまで兵が近づいてきている。


「セルザスは危険だ。…必ず迎えに行く!」


光の壁に手をついたフェルが必死になって叫ぶ。


「何それ?!ヴィアさん?!」


ヴィアの言葉が合図かのように、まばゆい光がフェルを包み込み、

そしてその光は再び暗闇に掻き消えた。

フェルの姿もそこには無かった。


「お前…!フェルをどこにやった…!!」


フェルが居た場所とヴィアを剣呑に睨み、セルザスは苛立ちを含む低い声で唸った。ヴィアは一瞥し、鎌をセルザスの方へ据え、凄みのある声音で問う。


「…貴様…何故ここに来た…何が目的だ…」


闇の中だというのに不思議な力で、鎌がキラリと鋭く反射する。

セルザスが持つ剣の切っ先も、キラリと反射する。

緊迫した空気が張り詰める。


「どこにやった」


質問とは違うことを言うセルザスに、ヴィアは剣呑に目を細めた。

じりじりと間合いを詰めていく。


「逃げ場はない。お前一人では太刀打ちできん。」

「それはどうかな…?」


セルザスはにやりと嗤って斜に構え、聖法書を取り出し詠唱を唱えはじめた。

この、詠唱は…。


「貴様…まさか!」


聖法書のページが怪しく輝きを放ち始めた。


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