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白き竜の魔法  作者: 鬼狐
2章 《知らない過去》
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第21話 『転移した先で』

また、遅くなっちまったな。

 突如放たれた光の正体は、最近お馴染みの転移魔法(手紙バージョン)だった。

 しかも、今回は王宮の大広間だった。

 平身低頭の多くのメイドさんが居並んでいた。


「え……? えっ!?」


 いくら最近連続で体験したりしたけど、いきなり転移されるのは慣れてない。

 混乱する僕の前に一人のメイドさんが出てきて、頭を下げた。


「龍也様。ようこそ参られました」


「え、あ、はい……えっ?」

 

 頭を上げたメイドさんはニコリと微笑んだ。


「当王宮のメイド長を務めているアイリスと申します」


 メイドさん――アイリスさんは両手でスカートの裾をつまみ、軽くスカートを持ち上げて丁寧に挨拶をした。確か“カーテシー”と呼ばれる挨拶の一種だったっけ。

 しかし、ティアラさんと同じく本物のメイドさんと偽物(・・)と雰囲気が違うな。

 昔、母さんのおねだりでメイド喫茶に行ったことがあるが、あの『お帰りなさいませ、ご主人様♪』という緩い感じが全然しない。結構緊張するんだが。

 

「え、ええと、僕は天白龍也と言います。天白が姓で、龍也が名で……って、もしかして知ってますか?」


「はい。それはもう」


 初対面であるメイドさんに名前を抑えられていた。

 異世界にはプライバシーはあるのだろうか。


「あの、この手紙ってどういうことですか? それに此処は一体何処なんですか?」


「それらについては竜王様直々にお話されるそうですので。では、お部屋に御案内いたします」


 そう言って大広間から繋がる廊下に先導される。

 僕は未だ状況が呑めずにアイリスさんの後に付いて行った。

 ううむ。竜王ってあれか。メールさんが説明してくれた竜界を統べる王だったか。

 そんなお偉いさんが僕になんの用だろうか。

 というか、じゃあ此処は竜界なのか。


「龍也様、どうかなされましたか?」


「ぅへ?」


 気がつけば、僕は廊下に立ち止まっていたようだ。

 先導していたアイリスさんが心配そうな顔で振り返っていた。

 

「あ、いや。別になんでもないです。天井高いなーとか、廊下広いなーって思ってただけですから」


「そうですか」


 アイリスさんは、クスリと微笑んだ。

 20歳前半といったところか。外見年齢の話である。

 しかし、アイリスさんが竜族であれば、それは当てにならない。

 アイリスさんは再び正面を向き、先導する。

 僕はその後ろをカルガモの子よろしく付いて行く。


「言い忘れておりましたが、わたくしに敬語は不要です。それに敬称も要りません」


「は、はあ」


 確実に僕よりも彼女の方が年上なんだろうけど。

 まあ、今の僕はお客様待遇なんだろうな。


「最後にもう一つ」


「ん?」


 アイリスさんが足を止め、再び振り返る。

 その表情は微笑んでいる。

 微笑んでいるが…………。


「わたくしの年齢について思考するのはお止めください。さもなくば――」


「す、すいませんでした!」


 僕は土下座しそうな勢いで頭を下げた。

 目が笑っていない。確実に殺される。いや、殺されるどころじゃ済まないようだ。

 やっぱり女性に年齢ネタは禁句だ。それは長寿な竜族でも同じことのようだ。


「分かって頂けたのなら幸いです。時間を取らせて申し訳ありません」


「いえ、こちらこそ」


 それにしても長い廊下である。

 もしもアイリスさんもとい、アイリスが僕を置いて行くのなら確実に迷子だ。高校生にして迷子だ。

 この廊下はもはや迷宮と言っても過言ではないのかもしれない。流石王宮。

 ……さっきから、僕が思いっきり先程の話を逸らそうとして一生懸命である。

 

 その時である。廊下の横道から誰かが飛び出してきた。僕に向かって。


「龍くううううううううううううん!!」


 ここで偶然ぶつかって来るなら僕はその人を受け止めよう。

 しかし、ツッキーのような似た感じで意図的にぶつかろうとするなら僕は避けるだろう。

 だから避けた。


「へぶっ」


 的を失った真っ赤なマーメイドラインのロングドレス姿の人は、そのまま床に摩擦で火花を散らしながらスライディングする。

 ……接触事故してたら、徒では済まなかったな。


「……アイリス。床と接吻しているあの女性はどちら様?」


「……わたくしの口からはとても言い難いのですが……」


 アイリスが煮え切らない返しをされた。

 表情が凄く虚しそうだ。この人は一体何者なんだろう。


「ぐふっ、ぐふふふふっ」


 床に倒れている女性が気持ち悪く笑いだした。


「いきなり笑い出した!? しかも笑い方キモッ!」


「私のアメフト選手顔負けのタックルを避けるなんて、流石マイだーりんの龍くんだね!」


 斬新な褒め方だね。

 何事もなかったように立ち上がった女性はサムズアップした。

 なんだ、ツッキーと同じキャラか。

 これ以上変態キャラは増殖しないでもらいたい。


「何をなされているんですか」


「おー、イリスちゃん! つい待ちきれなくて来ちゃったよ! あははは、大量に残っていた書類仕事を終わらせたから、今お暇なんだよね。暇だから龍くんを呼んだんだけどね!」


 話を立ち聞きするとどうやら彼女が僕を此処に呼んだ張本人のようだ。

 それにやけにハイテンションである。ラルク先生並である。


「そんなことなさずとも、わたくしが龍也様をお連れしましたのに」


 アイリスが女性の乱れた赤いドレスを整える。

 おお、こういうの見るとやっぱりメイドさんだなあ。


「いやいや~、イリスちゃんと二人きりにしたら行き遅れのイリスちゃんが龍くんの貞操を!!」


「竜王様」


 整え終えたアイリスがゆらりと立ち上がった。

 彼女の瞳からすぅーと光が消え……いや、不気味に光った。


「……はい」


 女性はアイリスから放たれる殺気にぴーんと直立。


「シャラップ」


「すいませんでした!」


 女性は土下座しそうな勢いで頭を下げた。

 ……触れなかったけど、この女性竜王様なんだよな? さっきさり気なく言ったもんな。

 メイド長>竜王という力関係を概ね掌握。


「そ、それじゃあ、ここからは私が龍くんを自室にお連れしちゃうよ。あ、イリスちゃんはお菓子と紅茶の準備して」


「はあ。畏まりました」


「ああ、それと……」


 竜王様がアイリスに何か耳打ちする。

 アイリスの顔が一瞬露骨に嫌そうな顔をしたが、すぐに渋々何かを了承した。

 アイリスは僕に一礼すると元来た道を引き返して言った。

 一体何を言ったのだろうか。


「じゃあ、行こっか!」


「はあ」


「もー! 硬いなあ! もうちょっと柔らかくいこうよ~!」


「初対面ですし」


「イリスちゃんには敬語なしだったじゃんよ~。……もう。じゃあ、私の部屋行こう。そこで全部話すよ」


「わかりました」


 竜王様と共に僕は彼女の自室へと向かった。



   ◆



「さあ、ここが私の部屋! キングサイズのベット(天蓋付き)が一番の使いどころだよ!」


「ごめん。何の話?」


 竜王様の部屋で白色のロココ調ソファに竜王様と向かい合うように座った。

 

「う~ん。まず何から話そうかなあ」


「名前からでいいんじゃないですか。多分僕の名前は知ってると思いますけど」


「そっか! 龍くん天才だね!」


 竜王様はごほんごほんっ、と態とらしく咳払いした。


「私はセルザハート・リンドヴルム・スピンドルストン。第百十六代目にして現竜王なのだっ! あ、ついでに教えておくと、私は龍くんの従姉だからね!」


「……え? ええええええええっ!?」


「あっはー。ナイスリアクション!」


 何をツッコんだらいいのだろうか。

 名前だろうか。百十六代目という微妙な数字だろうか。僕とこの竜王様との意外な関係だろうか!?


「ああ、敬語とか別にいいよ~。従姉弟同士だし、“セルザ姉”って呼んでね」


「あ、うん。わかった。……って、そうじゃなあああああああい!!」


「ちょっとちょっと龍くん、落ち着いてよ。深呼吸しよう? はい、ヒーヒーフー」


「それラマーズ法だ! 出産する時にするやつ!」


「ヒーヒーヒーヒーヒー」


「某指輪の魔法使いじゃないか! 語呂が似てるだけだ!」


 はあ、とため息を吐いて目頭を押さえる。

 

「なんかいつもと変わらないな、このノリ……」


「でも、落ち着いたでしょ? 龍くん」


「……まあ。でも、他にもっと良い方法があったと思うけど……」


 目頭を押さえる僕にセルザ姉がふふん、と得意げな笑みを浮かべた。

 これが彼女なりの気遣いなのだろう。多分。


「でも、どういうことなの? 父方の従姉弟はいるけど、母方に従姉―――セルザ姉がいるなんて話初耳なんだけど」


「まあ、夏海様(叔母様)のことだから『面白そうだから』っていう感じだけど」


「そうか。あの母親とは一度腹を割って話さなければいけないみたいだな」


 というか、王族と血が繋がっているのか。

 こんな家族会議ものの秘密を隠してたなんて、後でお尻ペンペンだぞ。


「叔母様はね――まあ、それも理由ではあるだろけど――子供想いのいい母親だと思うよ」


「どういうこと?」


「龍くんは最近こっち側(・・・・)に入って来たよね。怖くなかった?」


「そりゃあ怖いよ。魔物とかここ最近危険な目にもあってきたしさ。でも、それがどんな関係があるの?」


「叔母様はおそらく龍くんにそんな危険な目に合って欲しくなかったんだと思うんだ。少しでも我が子が安全でいてほしいってね」


「母さんが……」


 そんなこと考えていたのか。

 僕は母さんの親の愛に感動した。


「まあ、さっきのは私の想像だし。どちらかといえば『面白そうだから』って方がねえ」


 そう言われると、そっちがメインな気がしてしたぞ…………訊くのがちょっと怖いなー。


「だから叔母様は私に竜王の座を継がせたんだろうね」


「はあ!? えっ! ちょ、ちょっと待って。それじゃあ、母さんって元竜王だったの!?」


「うん。先代だよ?」


 マジか? マジで?

 母さん、百十五代目竜王だったのか。

 ……え? それ大丈夫だったの?


「で、ここからが本題。私が龍くんを此処に呼んだ理由」


 さっきまで子供っぽい表情がキリと引き締まった。

 そうしてると凄く竜王っぽいぞ。って、竜王だったっけ。

 でも、その表情の方が緊張するんだが。


「実は、龍くんに次代の竜王――第百十七代目竜王になってもらいたいんだ」



 ~おまけ~


 ティアラにユリィの魅力を訊いてみた。


ティアラ「ああ、ユリーシャ様! ユーシャ様! ユリーシャ様! ユリーシャ様ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー! あぁああああああ!!! ユリーシャ様ユリーシャ様ユリーシャ様ぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ…くんくん、んはぁっ! ユリーシャ・ロスカ・デ・レジェスたんの猫耳付き金色の髪をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた! モフモフしたいお! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!! 第15話のユリーシャ様かわいかったよぅ!! あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!! ふぁぁあああんんっ!! あぁあああああかわいい! ユリーシャ様! かわいい! あっああぁああ! アクセス数も増えて嬉し…いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!! 小説なんて現実じゃない!!!! あ…よく考えたら… ユ リ ー シ ャ 様 は 現実 じ ゃ な い? にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!! はぁああああああん!! この! ちきしょー! やめてやる!! 現実なんかやめ…て…え!? 見…てる? 脳内のユリーシャ様が私を見てる? 画面の中のユリーシャ様が私を見てるぞ! 妄想のユリーシャ様が私を見てるぞ! 二次元のユリーシャ様が私を見てるぞ!! ユリーシゃ様が私に話しかけてるぞ!!! よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!! 私にはユリーシャ様がいる!! やったよ龍也様!! ひとりでできるもん!!! 二次元のユリーシャ様ああああああああああああああん!! いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあぁあ!! ううっうぅうう!! 私の想いよユリーシャ様へ届け!! 魔法界のユリーシャ様へ届け!」


龍也「前回と同じじゃねえか!」


ユリィ「…………(ブクブク)」


龍也「ユリィちゃんがコピペの名前を自分の名前に置換されてることのあまりの気持ち悪さに泡を吹いて失神した! しっかりユリィちゃん!」


ツッキー「むう。やるなあ! 私も負けてられないね! 次回『ツッキーが語る龍ちゃんの魅力 ~性的編~』お楽しみに!」


龍也「ないよ!」


 ※疲れたからもう作らない。

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