表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

1. 人生最後のはずだった日


中学からだった。人と話せなくなったのは。


 僕はそこそこ上手くやってた。誰とだって仲良く


 なれたし、友達と喧嘩したこともなかった。


 だけどあの日だ。中学3年のある日



『気持ち悪いんだよ。いつも人の顔うかがいやがって』



 そう言われた。それからというもの、僕は人とは


 なすのはおろか、目すら見れなくなった。


 大袈裟かと思うかもしれないが、僕は


 [上手くやってた]んじゃなく


 [人の顔をうかがっていた]のかもしれないと思う


 と、自分と人とのつきあい方が分からなくなった。


 またあんなことを言われるのが怖い。だから僕は

 

孤立することを決意した。


 それから2年。僕は高校2年生になった。


 あれからの日々というもの、退屈で退屈で仕方な


 かったし、このまま生きていても仕方ないんじゃ


 ないかと思うようになった。


 だから今日、僕はケジメをつける。

   ーーーーーーーーーーーーーーーー

 『サッカー日本代表、ついに決勝進出を決めました!』

 

 「おおー、ブラジルに勝ったか」


 今日は平日の月曜日。


 いつも通り僕はソファに座り、


 牛乳を片手にテレビをボーッとながめていた。


 「千秋、時間大丈夫なの?」


 母さんが大して心配なんてしてなさそうな声で言ってきた。


 時計を見ると、針は8時ぴったりをさしている。


 「もうこんな時間か。行ってきまーす」

 

 いってらっしゃいの返事はなかった。


 ぼくはいつも通り鞄を持ちバス停まで歩いた。


 バス停についたのは8時15分。僕の高校までのバ


 スがもう着いていた。けど僕はそのバスにはのら


 ず、8時半にくる海まで行くバスを待った。



 

   僕は今日海に飛び下りて死ぬつもりだ。



 怖くはなかった。僕が死んだって悲しむ人はだれ


 もいないし。読みたかった漫画も休日に全て読み


 終えたし。強いて言えばサッカーの決勝が見れな


 いのが心残りだが。


 バスの窓を眺めていたら、いつの間にか海に着い


 ていた。まだ春なため、風が吹くと肌寒い。


 僕は飛び下りる予定の場所に向かった。


 いざ死ぬとなると、死んだあとどんな風になるの


 かなどが気になった。


 天国ってどんな場所だろう。


 ご飯は食べられるのだろうか。漫画は読めるのだ


 ろうか。


 でも、親より先に死ぬと地獄に行くときいたこと


 がある。それが本当なら僕は地獄行きだろうな


 あっという間に着いてしまった。


 崖の縁に立ってみた。


 この高さから海に飛び下りれば確実に死ぬ。


 高いところは昔から苦手だ。足が震えてる。


 目を閉じ深呼吸をした。落ち着いてきた。



 「今から死ぬのに、高いところは怖いのかよ。ハハハ」

 

 覚悟は決まった。




 さようなら─────





 飛び下りようとしたとき、誰かが腰にしがみついた。

 「うわっ─────」


 僕はバランスを崩し後ろに倒れた。


 振り向くと、中学生くらいの背丈の、茶髪で綺麗


な、見知らぬ女の子が、目から涙を流し座り込んで


いた。


 「…どうして、死んじゃうの?」


 女の子が僕を見つめ、口を開く。


 さっきの独り言がきかれたようだ。


 どうして泣いてんだ?自分が死ぬわけでもないの


 「何で泣いてるの?」


 「そんなの、君が自殺しようとしてるからでし

ょ!自殺なんてだめだよ…悲しいよ!生きようよ…」


 なんだか怖くなって、僕は逃げるようにその場から去った。


 気づいたら僕は歩いて家まで帰ろうとしていた。


 家に着いたのは夕方の6時だった。


 リビングには母がいた。


 「学校かられんらくあったよ。行かなかったの?」


 母さんがイラついたような声で僕に聞いた。


 「なんか今日は行くのめんどくさくなって。ごめん」


 「ご飯できてるからさっさと食べなよ。」


 食卓にはご飯が置かれていた。


 椅子に腰を掛けた。はしを持とうとした手は震え


ていた。やっぱり怖かったのかもしれない。


 ご飯を食べ終えて風呂には行ったあと、僕はベッ


ドに横になった。目をつむると、海での少女の泣き


顔がアタマに浮かんできた。


 気づいたら僕は目から涙を流していた。


 あの子は僕を思って泣いてくれた。


 僕はこの世界に僕が死ぬのを悲しみ、泣いてくれ


る人がいたのが嬉しかったのだ。


 僕は死ぬのをやめた。


 まだ、生きていようと思った。


 また人と上手く付き合えるとは思わない。


 それでも、生きてはみようと、そう思った。






 「日本代表、ワールドカップ優勝!!!」


 

 

 

 

 




 

 



 


 


 

 


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ