祭祀場にて
百合はいいですよね。主従百合はいいと思います。こういうのはお嬢様とメイドが多いような、もしくは護衛的な女の子と跡継ぎの娘とか。
暗殺者と姫君の心が通じ合う百合はほとんどなくて、こういうのはいいと思います。
しかし、この話はずっとシリアスですねWWW
もう少し明るくなってもいいような気がします。
10
朱の神殿で祭祀が行われる。
香が鼻につく……
儀式は歴代王の鎮魂と、祖霊神の翠への宝物をささげ、王家が万年続く。
みるだけで、金色のケバケバしい方鼎、鼎が所狭しとおかれていた。
なんども鐘がならされたこの空間は特別な世界だった。
きることのない紺色の漢服をまとい私はその時を待つ。
剣は箱に隠されている。
私は祭祀を補佐する女官としてそばにいる。
「万来、翠より、反万年の帝国。今これにより祖霊にささげん」
煮られた鼎に、岩を落とす。
「要有光散蕃香広」
祭祀官が呪をとなえる。にえたぎった方鼎かに湯気と香が神殿に充満する。
方鼎の前にいるのが、標的。
あれが私たちの敵だ。
真ん中にたち儀式を行っているのがこの国の王・炎昼王だ。
金塊の力で国を盛りあげ、その力と権威で酒池肉林を行った暴君。
力の為に国から色をうばった男。
かがやかしい鮮やかな緋色の漢服をまとい、金の冠と薄絹で顔は隠されている。
ヤツを殺せば。終わる。
ドーン!! ドーン!!
皆が入口に目を向けた。
ついに始まったんだ。
「な、なんだ?」
うろたえる神官たち、守るべき護衛はいない。
扉が砕かれ、入り込むのはぼろ布だらけの男達。
「いまは儀式であるぞ!」
衛士のとがめる声より先に刃が襲う。
薄暗い、祭祀場に悲鳴があがり、香のなかに血の匂いがまじる。
「きゃぁぁぁ!」
次付と侵入する男たちに衛士はとまどい殺されていく。
逃げようにも、脱出口は暴徒にふさいだ。
「出会え! 出会え!」
命が発せられる侵入者を殺せと。
そう、血の匂い……沈香のかおりより、血の匂いに安堵を覚えてしまう。
どこまで殺人鬼である自分……でも、ここで解放される。
長い階段の果ての祭壇に奴がいる。
走り抜け、私に気づかれるまえに、今なら足に届く!
横一文字でヤツの腿をさく。
崩れる一瞬に間合いをつめ、背中を袈裟斬り(けさぎり)に斬りつけた。
暗い室内に血が散った。
さいごにふりむかせ、腹を突きさす。
けど、おかしい、手応えが柔らかい。
そもそも、男の背丈はこんなに低いの?
肩幅はこんなに狭いの?
薄絹がゆれて顔が見え……えっ……!
白雪君……様?
青白くなっていく彼女からあきらめがみえた。
「そう……あなたが……私の」
「は、白雪君様!!」
驚愕する私は白雪君様は手をのばす。
私も彼女の手を握る。
「まだ、大丈夫! 手当をすれば、命も助かる」
私の言葉に白雪君様は首をふる。
もう、致命傷だ。これじゃあ、これじゃあ。
どうすれば、どうすれば!
「お、おい、いたぞ! 白雪君だ! 殺せ!」
集まる男たちは剣をふりまわし襲いかかる。
このままじゃあ、死んでしまう!
私は男を斬り殺した。
まだ。止まらない白雪君様を狙う男を斬った。
「早く、逃げて」
白雪君様手をつかみ、立ち上がらせようとするが、力が入ってない。
そうだ、彼女の足も斬ってしまった。
はやく、はやく、逃さないと!
この国の王、炎昼王が出てきませんね。中華風、明代といいながら、トップですら「王」で「皇帝」ではないのです。王を束ねるものが皇帝ですから、この国は皇帝の属国かトップの国がない世界なのかもしれません。
一番上が王で王位継承権がある人物が「君」と呼ばれます。
ちなみに炎昼王のモデルは夏の桀王 殷の紂王です。儀礼で国を統治していた殷らしい描写はそこから持ってきました。白雪君=冬 紅葉君=秋 なので炎昼王は夏といえば桀王だとなってます。
あと見てくれるだけでもとてもうれしいですので、琴線にふれたらナイスやコメント、ブックマークよろしくお願いします!!