006[雑木林へと向かう道すがら]
[雑木林へと向かう道すがら]
会話に入れず、疎外感を感じていたらしいシン君が雑木林の方を見て
『蛍が居る!』と、声を上げる
『幾らナマチチを揉まれたからって殴り過ぎじゃね?』と
東条に突っ込みを入れられつつ
ゴロちゃんに外され、砂々した屋上フロアに落ち、砂だらけになったコルセットを
拾って叩いていた私は
「流石に、あの汚い池に蛍はいないだろう…」と、思いつつも
顔を上げて、シン君の居る屋上の端に行ってみる
すると確かに・・・
雑木林の中にある池辺りで、無数の小さな光がゆっくりと点滅しながら舞っていた。
皆も疑い半分で見に行ったのだろう、凄く驚いている
「蛍が本当に居たとしても、この距離からは見えないんと違うか?」
私的に、色々疑問は浮かんだが
『近くに行こう!見に行ってみよう』と
頬を少し腫らしたアキが言うので、虫嫌いな私は反対できず
皆も興味を持って行きたがったので階段を下り、雑木林に向かう事になる
途中、私は有る事を思い付き
痴話喧嘩していた誰かさん達と鉢合わせになる危険を少し感じながらも
2階に有る、実験室に立ち寄らせて貰う事にした。
そこは誰かさん達が居た教室から少し離れた、廊下の十字路と階段に近い教室
私は一人、廊下側の壊れて鍵の閉まらない開いた窓から実験室に侵入し
準備室へ入って、私の所属する学科の娘等が利用している冷蔵庫から保冷剤を拝借し
入った時と同様に、窓から廊下に戻る事にする
私が窓辺まで戻ると・・・
誰かさん達が居た…もしかしたらまだ、居るかもしれない
教室の方を何故か皆さん、気にしなすっていらしゃった。
微妙に嫌な予感がする・・・
私は一応、窓から静かに廊下へと降り立つ
すると、誰かさん達がいるであろう教室の方から
何かしらの状況で発せられたであろう、喘ぎ声が微かに聞えて来る
私はその場で硬直し、眉を顰める
的中した嫌な予感から生まれる、新たな「嫌な予感」からユリちゃんを見る
目が合ったユリちゃんはニヤリと笑い
自分達も大概に現在進行形で、悪い事しちゃってる事を忘れ
棚に上げて『浮気現場、押さえに行っちゃう?』等と言いなさる
『押さえて…その後は、どうすんのさ
沙汰にしたら…今、此処にゴロちゃんが居る事とか、侵入経路とか、鍵の件で
こっちもマジで、不味い事になるんでないかい?
それに野郎の方だけがヤバい事なるだけなら許すし、率先して賛成するけど
正義の味方ではない女子供の味方としては
他の都道府県に行って、名字変えれば同じ職に戻れる男に対して
後からも女側が不利益を受けやすいから、ちょっと頂けないな…
因みにユリちゃんが、誰かさん達を脅迫するつもりで押さえに行くつもりなら…
そう言うの、自分が好きくないから
今直ぐ、火災報知機のボタンをピンポンダッシュるけどヨロ?』
私は今までのユリちゃんの傾向を考え対策を講じた。
『じゃ、覗きに行くだけ!』と、食い下がるユリちゃん
此処で気付いたのだが…残念な事に、ユリちゃんだけでなく
ゴロちゃん・サンちゃん・東条、アキにシン君…男性陣、皆が
誰かさん達の様子を覗きに行きたがっている御様子だった
私は深く溜息を吐く
「ユリちゃんが、覗きだけで納得する筈が無いんだよね」
私は打開策を考え、取敢えず
アキの頬に、凍った冷たい保冷剤を押し付ける事にする
油断していたアキが小っさな悲鳴を上げ、皆を驚かしてくれた。
体を1度ビクつかせ、皆の注目がアキと私の方に集まった
私は自分の方向に注目が集まったのを確認すると、笑顔で
『人の恋事を邪魔しちゃ駄目なんじゃない?』と意見して
『蛍、見に行くんだろ?早く行こうよ!』と
ゴロちゃんとシン君の手を取り先導して、雑木林へと歩き出す
私の思った通り・・・
ユリちゃんが残念そうに、アキが未練がましくブチブチ言いながら
皆が歩きだした。
私は、ゴロちゃんとシン君の手を離し、アキに対する頬を叩いた詫びのつもりで
『私のクラスに、結婚してくれなさそうな男と恋愛してる娘がいるから
身も心も寝捕って、公表できる恋人として付き合ってくれるなら
攻略できるであろう案を幾つか付けた上で、紹介してやるよ』
なぁ~んて事を言ってみた。
話しを聞いていたサンちゃんが溜息を吐く
『おいこら!ちょっと確認するけど
「人の恋事を邪魔しちゃ駄目なんじゃない?」って言葉は何処行った?』
『何処にも行って無いよ』と、私は笑う
『他の恋事に感けてる奴の女を取っちゃ駄目って事は無いだろ?
寧ろ、立場を弁えず手を出しまくる輩には制裁を与えたい御年頃なのだよ
2兎を追う者には、1兎も渡したくない
浮気する奴から隙あらば、恋人を総て奪ってしまいたい…
そう言う主義なだけなのさ』と、私が言ったらアキが立ち止まってしまう
『もしかして…俺が浮気したの知って、俺からリカを奪ったのか?』と
アキから私が、あらぬ疑いを掛けられる事になってしまった。
因みに私、アキの浮気を知ったのは・・・
アキとリカが別れた後なので、2人の事には全く手を出していません
私は『アキからはまだ、奪った事が無いよ』と伝え
幾つか、アキが考えた可能性を想像し・・・
『それと念の為、言っておくけど…私の性別、リカは最初から知ってるぞ
スキンシップ多いからって、そういう方面で奪ったなんて思うなよ?』と
可能性の高そうな勘違いを1つづつ消していく方向で話しを持って行く事にした。
の、だけれど…アキが初っ端から、反応を示し
『でも、女だからって…』と、呟く・・・
「うわぁ~私って、アキにどんな存在だと思われてんでしょ?
もしかして、リカを誘惑したとか思われてた?」
私はソレを訊くのも、勘違いを正していくのも面倒になって
『もういいだろ?「肝試し」改め「蛍観賞会」に行こうよ』と
再び歩きだした。
私達は今居た古い校舎より、更に古い校舎へと進んでいく
そこは、私以外のメンバーが所属する学科の特別科目の校舎
廊下の素材がセメントと塗料から、リノリウムに変わり足音が変化する
建物の素材が変わったからか?校舎内の温度や湿度も違うようだ
『蒸し暑い』誰ともなく、そんな言葉が零れる
私は胸元のボタンを3個外し、シャツの中へと空気を送込み追い出す
暫くソレを繰り返していると、ゴロちゃんに腕を掴まれ止められ
『見えてる見えてる…中身が見えてる!胸隠しのヤツ、開けっ放しじゃねぇ~か
シロウ!お前は、女としての自覚が低過ぎるぞ』
と、ボタンを一つ留められた。
ゴロちゃんの行動を見守っていた東条とアキが無言で
私の体のラインに目を走らせ、注目してくれる
私は溜息を吐き『何か言いたげだな』と、2人に顔を向ける
すると油断していた背後から、シン君が・・・
私のウエスト部分に両手を伸ばし、ガッと掴む様に触れて撫で上げてくる
私は『うひゃぁ~』と間抜けな悲鳴を小さく上げ、飛び上る様にして逃げ
近くに居たゴロちゃんに抱き付いてしまった。
シン君は、自分の掌を何度も握ったり開いたりして見詰め
『先輩!大変です!ちゃんと女の人の体のラインでした!
服の下に何か着てて隠れてますけど、柔らかくて括れていましたよ!』
と、アキに報告する
私は事と次第を理解し『暑いのに抱き付いてごめん』と
ゴロちゃんに謝ってから、アキに対して渾身の怒りを込めて睨み付ける
私の怒りの矛先は、触ってきた後輩のシン君の方では無く
何かしらを命じたであろう、アキの方へと向いていた。
と、言っても・・・
『あぁ~ぁ、アキなんて…
今まで付き合ってきた女の子達の憤りで、不運に恵まれれば良いのに!』と
呪を込めて口に出して、大きめに呟き願うだけである
ソレを耳にしたユリちゃんは、勝手に想像して・・・
『本気で呪いたいなら、通販で「エアーズロックの石」を購入して
御届け先をアキ君にしたらいいのに!』と、マジで「呪」な事を口走る
『いやいや、殺したい程に呪うとか無いから!』
私は苦笑いするしかなかった。




