012[ちょっと怖い事]
[ちょっと怖い事]
起きられる様になったのは夕方だった
私の効き手には、プラスチック製の水色な手錠が掛けられ
ソチラの腕には点滴のチューブも繋がっている
そしてシン君が何故かまだ、私のその手を握り付き添ってくれていた
私は不思議に思い、声を掛けようと声を出そうとしたのだが
咳き込んでしまい、話す事が出来なかった。
私が咳き込み、私が意識を取り戻したのに気が付いたシン君は
『おはようございます、先輩…今、御茶を準備しますね』
目の下に隈を作った御疲れな様子で微笑んでいる
私は声にならない声で『ありがとう』と返した
の、だが…しかし、私はシン君に対して違和感を禁じ得ない
ソレは私の気の所為であろうか?
私の不安を知ってか?知らずか?
シン君は『リクライニングしますね』とスイッチを押し
ベットを斜めにしてくれ
私に負担が無い様に手を貸して、座らせてくれた。
御蔭で、部屋の中の様子が全体的に見て取れる様になった
此処はちょっと高そうな個室で・・・
「うっわぁ~怖いなぁ~…
入院費用がヤバイ事になってるかもしれないぞ」と
新たなる不安を私に齎してくれる
シン君が電気ポットの御湯で緑茶を入れてくれる
受け取って一口飲んで・・・
高そうな御茶の美味しさに、更に金銭的に気が重くなった。
シン君は私の気持ちも知らないで
私の居る方向を見て、ニコニコ笑い嬉しそうにしている
でも、シン君が見ているのは・・・
私ではなく私の肩の後ろ辺りでは、なかろうか?
そう、シン君が私の後ろをじぃ~っと見ている気がするのは
本当に気の所為か?
私は妙な不安を抱えながら、シン君に掛ける言葉を見付けられず
咽喉も痛いので黙って、シン君を見詰め・・・
視界に入ったシン君の後ろに見える鏡を見て
度肝を抜かれる事となるのであった。
病室であろう真っ白な個室に設置された白木フレームの姿見
その鏡に映る私の首には・・・
後ろから腕を回す様にして、誰かの両手が絡みついていたのである
私は一度、目を閉じ…ゆっくり開き直して、もう一度「鏡」を見る
今度は、さっきよりずっとはっきりと見えてしまった。
「もしもし…シン君?君は誰と一緒に居るつもりなのかな?」
なぁ~んて、訊きたい言葉を飲み込んで
私は少しだけ気分が悪くなって、私は此処から逃げ出したくて
『御手洗いに行きたいのだけど…』と告げ
シン君に玩具の手錠を外して貰い
点滴を付けたまま、個室に標準装備のトイレに案内される
「マジでかぁ~…
掛けてる保険で、どれくらい費用を補填出来るだろう?
不足分で、嫌な思いをしそうだなぁ~おい」何て・・・
更なる嫌な事を考えさせられ、辛くて心で泣いた。
トイレを出る時・・・
私が洗面台で手を洗っていると
水に黒くて長い髪の毛が混じっている様に見え
驚きの余り、後ろに下がって壁に激突してしまう
それから、洗面台の正面の鏡に映った余計なモノ
長い綺麗なストレートヘアを見てしまって
本当に冗談抜きで、無駄に心臓に悪い思いをした。
本当に凄く、心臓に悪い思いをさせられたのだが・・・
鏡の中の「手の雰囲気」にも
その「髪の雰囲気」にも、心当たりがあるのだけれども
「さて、どうしたものか?」
私は彼女に対して「伝えた思い」を思い出し
「いやいやいやいや…
私はそう言うのを見たかった訳じゃないんですけど?」と
私の今の思いとは裏腹に
私の後ろの彼女が微笑を浮かべてくれている様子に対して
異見を唱えたいと思った。
余談だが・・・
鏡の中の状態は、対面する私の状態とは異なっている
私の首には手が絡み付いているなんて事は無く
後ろに彼女がいる訳でもない
私は色々な事を踏まえ、考えては見たモノの…
今の所は大きな不都合は無いので、取敢えずは放置する事に決めた。
トイレから出ると・・・
シン君に半ば強引にベットに連れ戻らされ
何故だか『先輩、勝手に帰っちゃ駄目だから繋ぐねと』
玩具の手錠で繋がれてしまう
「何のお遊びですか?」もしくは「監禁ですか?」と
言ってみたくもなったが
ベットに戻らされて、夕食を出されてソレが美味しかったので
一旦、利き手を繋がれつつも忘れて…後々ゲンナリする
「入院費って幾ら位になるのだろうか?
つぅ~か、もう退院できるなら御家に帰りたいです」
ってのも、あるのだが
それより何よりも「何がどうなって私が此処に居るのだろう?」
私の所持品が此処には何も無い
身に付けている服も下着も総て、私の物ではなかった
「誰が私を着替えさせたんだ?」って、疑問もあるし
今の私の周りは分からないモノばかりだった。
「シン君にその答えを求めようか?」とも、思ったのだが・・・
私が何か言う度に・・・
『大丈夫です』『安心して休んで行って下さい』と言って
はぐらかされてしまう
私はちょっと困ってしまって
「病室から脱走してやろうか?」と考え始めた頃
ゴロちゃんとアキが御見舞に来てくれた。
ゴロちゃんを見て私から、安堵の溜息が零れる
アキの暗い表情を見て、私は息を飲んだ
私は意を決して、近付いてきたゴロちゃんの腕を掴み
『あのさ…今の状況、説明して貰っても良いかな?』と
少しかすれ気味になってしまっている声で質問をした。
『その説明は私の役目なので、私からで構わないかね?』
部屋の出入り口付近で立ち止まっていたアキの後ろから
学校の偉い人が病室入って来て、ゴロちゃんの横に立つ
偉い人は私が了承する前に話しだした
『君は、死んでも知られたくない
墓場まで持って行きたい秘密と言うモノを持っているだろうか?』
私はそう言われて、隠されていたファイルの中身と
姫とリカとユリちゃん…そして、岡田さんの秘密を思い出す。
『君自身、持っていようが持っていまいが
君の友人達は所持し、君に黙っていて欲しいと思っているだろう
君はその願いを叶えてあげられるだろうか?』
つまり偉い人は口止めに来たらしい
私は私の都合により、偉い人が続けようとした言葉を制止し
『私は秘密主義な生き物です、
他人様の秘密を暴いてしまっても、他言しませんよ』と伝えた。
背後から姫に『秘密、守ってくれるよね?』と言われたからだ
私は偉い人に・・・
あの夜、追掛けられた理由についての秘匿を約束させられた
私はコノ秘密をきっと、誰にも話さないし
そもそも、誰にでもどんな理由があろうと話す事はできないであろう
だって、姫が後ろで見てるから
『私を幸せにしてくれるんでしょ?約束だよ?』
姫が私に囁いていた。
月曜日の登校途中、岡田さんに会った
『金曜日に私と同じ秘密を抱えた人を向かわせてくれてありがとう』
彼女は私の預かり知らぬ御礼を伝えてきた
後ろから、走る靴音が近付いてきた
後輩のシン君が私の背後の姫を目当てに寄ってきたのだろう
私は面倒に思い・・・
岡田さんには嘘を吐かずに、曖昧な微笑みで答え
岡田さんは、私の腕に飛びついて来たシン君を見て1歩引き
『じゃ、また…教室で』と立ち去ってくれた。
岡田さんの御蔭で「あの日のアレは・・・だったんだ…」と
アキが抱えた秘密と、アノ暗い表情の訳を知る事が出来た
秘め事が増えた・・・
でも私はきっと、その事を誰に訊かれても
誰にも話す事はできないだろう
…だって、姫が
何時でも何時までも私を見守ってくれているから…
エピソードの殆どが実話なのですが
実話部分に事件性のある物はほぼ含まれていない筈なので、安心して下さい。




