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世界に広がる異空間  作者: 三日月 帆立


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10代配達員の遭遇した異空間

 携帯を見ていて、気が付いた。乗り始めに見た45分の動画が終わろうとしているし、いっこうに押した階に着く気配がしない。ふと、後ろの風景に目をやると形容しがたい空間が広がっていた。このエレベーター以外まるで部屋のように一つ一つが個室で、それが縦横無尽に広がっている。


「…ここってさぁ」

 携帯アプリの”イマココ!異空間”というアプリを開き、エレベーターの写真を一枚撮る。やけに古めかしく、スチームパンクとでも言えばよいのだろうか…そんなエレベーター。数分間アプリが”診断”を開始する。

『診断完了しました!』

 

 AIの女性ボイスが通知を送ってくる。アプリを開くと、蒸気の効果音と共に診断結果が出た。

「異空間昇降機…危険度は3か、まぁた変なところに配達しに来ちゃったなぁ」

 

 そう、この世界は至る所に異空間への入り口が勝手に出現しては消える。飲まれたら最後、帰れるかは運次第。脱出しても別次元の世界であることもあるらしい。”イマココ!異空間”というアプリは世界異空間機構の開発アプリで、一部国を除いて世界中のスマホに標準搭載されている。アプリの表示危険度は1~10で、1は現実にちょっと異空間が顔を覗かせただけ。(通っている人物がこの次元の人でなかったりなど)

10までになると完璧な異空間、異空間機構の支部から救助隊が来ても助かるか怪しい…といった手軽に自分の安否を知れるアプリである。


「3ってことは暫くすれば戻れるかなぁ?」

 落ち着いて携帯の電波を”異空間波”に切り替え、近くの交信局を探す。異空間機構のこの国の支部は異空間深度4まで調査を進めており、3程度であれば滅多に携帯電波が圏外になる事は無い。



 チーン


 異空間波を捉えたところで、エレベーターが停止した。ディスプレイの文字は異空間語で自分では読めない。

「…怖いなぁ」

 そっと頭を覗かせると、エレベーターに乗った建物の最上階。目的地ではあるようだが、太陽がてっぺんにあった乗り始めの時間とは大きく乖離し、夕方になっている。45分の動画と”イマココ!異空間”の診断3分、さらに追加で見始めた動画が10分しか経っていない。


 そういう異空間はTVで見聞きしたことがある。”時間軸歪曲系”の異空間だったのだろう。地面に置いた荷物を持ち上げ、1010号室の前に運ぶ。インターホンを押すと、ピンポーンともはやこの職に就いてから幾度と無く聞いた音が鳴る。


「はーい」

「お世話になります! トビウオ便です!」

「時間かかったね! 異空間のまれちゃったの?」

「そこのエレベーターで…」

「あらまぁ!」

 

 こんな世間話は割とある。最後に受け取りのサインと、ペットボトルのお茶をくれた。暑い季節にこの冷えているお茶は嬉しい。ロマリティア産の茶葉という好きな銘柄で尚の事テンションが上がった。よし、戻ろう。そうして立ちふさがったのは、目の前のエレベーターである。


「…階段で帰るか」

 さすがに異空間2連続はごめんこうむりたいので、安牌を取って帰社することにした。

”イマココ!異空間” 機能説明


1、空間異常の検索、診断

2、診断後レベル5以上の場合の救難信号

3、異空間で精神的な異常を起こさない安定する音源の再生


 世界異空間機構が開発した異空間対策アプリ。異空間遭遇時の遭難者発見及び救助現実世界への復帰を世界中で手助けしている。一部国では未導入、または拒否されているため使えない場所もある。また、支部によって到達深度が違うため、救助が確実かは保証しかねるところである。我が国”ニーホン”においては探査深度が4まで進んでおり、携帯端末の圏外化を防止する”異空間波”と呼ばれる特殊通信電波発生装置の設置がされている。


 余談ではあるが、深度が深いからと言って神出鬼没なわけでもない。空間が固定。異空間機構の用語で、”固定化”してしまったところはいくつかある。一般人の入れる空間もあり、決して深度10だからと言って完全に帰れない危険な空間と言うわけでもないのだ。

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