14. その話はいいから!
少し短いですけど。
美爺は次話で。
「と、とにかく今はその話は置いておこう。ココは話を聞きたいのだろう? だったらジェイド、さっさと城に帰るぞ」
コホンと咳払いをして、姿勢を正したアレン。そうね、アンタが言わなければ私が言っていたわ。ずるずる呑気にお茶している場合ではない。
「そうしましょう。こんな話している場合じゃないわ。早くお城に帰りましょう。王様と大神官様がいるのでしょう?」
ソファから立ち上がってジェイドを見た。
「こんな話……?」
何か、ショックを受けてる……。そうだった。この世界では大事な事よね。いや、大事な事じゃ無い事は無いわよ!? 大切な事だけど、とっても大事な事ではあるのだけど、今の私にはソレと同じくらい位に重大な事がある。
異世界召還。何がどうして、こうなった? よ。
ブツブツと呟いているジェイドに、顔色一つ変えずにいるシヴェル様、何か面白い物でも見る様なバージル様と、イケおじの魔導士長様は……眉間に皺を寄せて物凄く悲しそうな顔をしている。
それぞれの表情が、私に対する今の感情の様に思える。
「えっとですね。私の乙女云々の話は、今はとにかく忘れて下さい。私はどうしてこうなったのか知りたいんです。それに、狙われている理由も知りたいですし、出来れば日本に戻りたんですよ? 皆さん普通に話をしていますけど、私は異世界人ですからね?」
目の前にいるイケメン達を見廻しながら、率直な気持ちを伝えるけど、響いてる? 響いていますか?
横にいるアレンに目をやると、私を見上げて口を開けて見ている。ちょっと、貴方、その顔はアウトよ。幾ら美少年でもその顔は頂けないわ。
「アレン? 判ったら口を閉じて? それからジェイド、いつまでもブツブツ言ってないで立って頂戴。お城に戻る為の準備はどのくらい必要? 何分?」
ちゃっちゃと話を進めた方が良いみたい。時は金なり。会議は短く30分が原則よ。ジェイドの顔を覗き込むように腰を落として聞いてみる。
「じ、時間は要らない。直ぐにでも行ける……」
緑の瞳が潤んだようになっている。ちょっと? もしかしてさっきの乙女の話で泣いたの?
こっちの方が泣きたい位よ。まさかの異世界にいるんだからね?
「じゃあ、魔導士長様達は如何ですか?」
「はい。こちらも直ぐにでも可能です」
レブランド様が頷いて下さる。
「そうですか。では、アレンにダーチェは?」
「僕は大丈夫ニャン。ココと一緒に行くからニャーン」
「僕も大丈夫だ。駄目だ、ダーチェは僕と一緒に行くんだ」
アレンが、にゃうにゃうと私に抱き付いているダーチェを引き剥がす。そうね、今はその方が良いわ。面倒臭い事になりそうだもの。特にジェイドとね。
「それでは行きましょうか。ジェイド? お願いできるかしら?」
ジェイドが立ち上がって、部屋の真ん中に私を誘う。毛足の長い上等な絨毯は、踏みしめるとその質の良さが良く判る。ジェイドは左手で私の手を取ると、どこから出したのか右手に持った杖で床をなぞっている。
ちらりと隣に立つジェイドを見上げる。さっきまでのイジイジどよどよした雰囲気は無くなり、キリリとした横顔に、真剣な瞳が綺麗だ。
「では、姫様、私に良く掴まって下さい」
そう言って、ぎゅっと腰を抱いて来た。
「ひえっ!?」
触られ慣れないその位置。背中に回された腕の温かさにドキリとした。
「もっと、ちゃんと掴まって下さい。腕を私の首に……そうです。それで良いです」
来るときにも言われたかもしれない。言われるままに首に手を廻す。身長差があるので結構密着するけど、振り落とされるよりは良いわ。
「おい。ジェイド、くっつき過ぎだ」
ダーチェ? ダーチェの声だったけど? 何か口調が違う。ちらりと目線を向けると、ダーチェが舌を出したのが見えた。
「くっつき過ぎだニャーン」
にゃんが付いた。もしかしたら、ダーチェは普通にしゃべれるんじゃないかしら?
「ココレット姫、それでは城に帰還します」
ジェイドの言葉と同時に、床から緑色の光が吹き上がった。まるでジェイドの瞳の色だ。明るい樹々の、雨上がりの葉っぱの、煌めく緑の光。
光は瞬く間に大きな魔法陣を描き出した。見たことも無い複雑なその模様は、強い煌めきで眩しい程になった。
「さあ、行きましょう」
ギュッと腕の力を感じたと同時に、足元が崩れる様な不思議な感覚が起こった。
この感覚って、慣れないわぁ。
ブックマーク、誤字脱字報告、感想
評価ボタンのポチもありがとうございます。
心菜さんの地が出てきました。
結構テキパキ系の合理主義?
すみません。大神官様(美爺)は次話で登場になります。
お城に戻って、王様達に会います。
詳しく話が聞けるのでしょうか?
楽しんで頂けたら嬉しいです。