三宮駅で待ち合わせ
初めての BLオリジナルです。
まだ、恋愛に発展していませんが、BL作品が苦手な方は
ここで引き返してください。
「ねー。ちゃんと話聞いてる?」
「聞いてるよ」
仕事が終わり、俺がスマホをみると未読のラインが溜まっていた。
友達と彼女からだが、その大半が彼女 岡田 真理からのものだった。
「ライン送ったのに、いつまでたっても既読にならないし」
「仕事中はみれないよ」
そう言って見たものの 「私は、みえるのに」と口を尖らす姿が容易に想像できる返事が返ってきた。
俺は、電話越しに真理に気づかれない程のため息を漏らし、点滅する信号を横目に小走りで横断歩道を渡った。
「今週、エンゲージリング選びに行くでしょ。私、他の人が持ってるものって、嫌なんだよね・・・。
雑誌で、オリジナルで作ってくれるお店見つけたの。丁度、真也の仕事場の近くだから、行ってみようよ」
「・・・分かったよ」
同じものが嫌だと言う真理は、雑誌から抜け出してきたような、淡いピンクの服を好み。
セミロングの髪を、いつもアイロンで縦に巻いている。
とても、他人と同じものが嫌だというセンスではない。
「じゃあ、土曜日、11時に三宮の駅に着くから、ちゃんと待っててね」
「分かった、ちゃんと待ってるよ」
スマホをポケットに入れ、俺は深く息を吐く。
付き合って2年。彼女の結婚アピールに負け、「指輪見に行ってみるか?」と口にしてしまった事が、今の現状を招いていた。
正直、「指輪を見に行くか?」と言ったのは、軽い気持ちだった。でも、彼女はそうとっていなかった。
結婚へ油を注ぐ形になってしまい、エンゲージリングを買うことになってしまった。
地元の大学を卒業後、神戸で就職して3年。
仕事を覚え、大変だが遣り甲斐も感じ始めた頃だった。
職場の先輩に相談すると、「一人暮らしより、嫁を貰った方が仕事はいい結果を残せるぞ」と俺の肩を叩きながら、笑う始末。
別に、真理に不満がある訳ではない。
出会ったのは、正月休みに地元に帰った時に、親友に誘われた飲み会だった。
神戸で働いている。その言葉は、決して都会と言えないこの街で過ごしていると、眩しく華やかに思えたんだと思う。
帰り際、「よかったら」と真理が恥ずかしそうに、俺にメールアドレスを渡してきた。
当時の俺は、大学をでて1年たたない若造で、神戸に就職が決まった時、彼女にフラれていた。
見知らぬ土地の初めての一人暮らし、楽しい事も多かったが、一人部屋に帰ると空虚な気持ちに襲われる。
そんな、寂しかった俺は、正月休みの間、真理とデートを2回して、付き合うことになった。
遠距離で、月に1度会えるか会えないかの中、この2年大きな喧嘩もなく上手く付き合っていた。
真理の我儘だけど、明るい性格が俺には丁度良かったのかもしれない。
「結婚か・・・」
ビルの隙間から、ポートタワーが見え、風が潮の香りを運ぶ。
週末になれば、観光客でごった返す南京町の傍を抜け、現実味が湧かない言葉を溢しながら、俺は駅へと急いだ。
不定期更新になりますが、よろしくお願いします。