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三宮駅で待ち合わせ 2

数日残業が続き、ようやく迎えた金曜日。

明日は、真理がやってくる。

とりあえず、帰宅して部屋の片づけを・・・と思っていた矢先、山口課長に掴まった。

「吉野、帰りに行くか?ここの所、残業続いていただろう?頑張ってたからな、上手い焼き鳥ご馳走するよ」

深夜までの残業が続いてた俺の事を気にかけてくれたと分かれば、無下に断れる事も出来ない。

「はい、お供します」


ここ数日一つ上の先輩が、用事があるからと理由を付けては、定時前に自分の仕事を俺に押し付けてきていた。

周りは「最近彼女ができたから」とため息と噂をしていた。

遠距離恋愛をしている俺は、平日とても暇に見え、残業を押し付けてもいい存在なんだろう。

おかげで俺は仕事に追われ、真理からの連絡に返事を返してなかった。

きっと、怒ってるだろうと思っても、上司の前でスマホを弄れるわけがない。

その上、今、真理のご機嫌をとる余力も残っていない。


出来れば、早く家に帰って眠りにつきたい。

ポケットのスマホが、数回震えるのに気づかないふりをして、俺は山口課長の後に続いた。


会社から三宮駅に向かう途中の脇道に入った、カウンター席のみの小さな焼き鳥屋。

店内は、焼き鳥のたれの焼ける香ばしい臭いと煙が充満し、仕事帰りのサラリーマンが肩を寄せて並んでいた。

「おやじ!生2つ」


「はいよ」という、元気な返事を聞きながら席につく。

学生時代、飲み屋でバイトをしていたから、仕事の愚痴をいいながら”お酒を飲む社会人にだけはならない”と心に決めていたが、決まって話題は仕事の話になる。

この数日で、溜め込んでいた鬱憤を吐き出すように俺はビールを煽った。


**


「・・・・・っ」


目覚ましとは違う、バイブ音がどこかで響いている。

二日酔いで、重たい頭を起こし辺りを見回すと机の上でスマホの液晶が光っていた。

【真理】と書かれた液晶をみて、俺は慌てて電話をとる。


「ちょっと、真也。今どこ!?」

二日酔いには響く少し大きめの声が、待ち合わせ時間を過ぎている事を物語っていた。

カーテンから入り込む灯りが、日が高くなっていることが分かるほど眩しい。

「悪い、真理。今から行く」

「え!今からってどういう・・・」



阪神電車をつかって、最寄駅から三宮まで約6分。

出入り口付近に、陣取り車窓を眺める。

代わり映えのない景色を眺めながら、酷く怒っているであろう真理への謝罪の言葉を考えていた。

遠距離恋愛で、久しぶりに会いに来てくれる彼女を待ちぼうけさすだなんて、不甲斐無い彼氏だ。

ましてや、婚約指輪を選びに行く日に。

真理はきっと、昨日から楽しみにしていただろう。

俺は・・・?

(男でも、マリッジブルーってあるのかな?)

嫌いなわけじゃない。でも、なんだろう。

どこか、真理との結婚を他人事の様に見ている自分に気づいた。


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